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エロの観点から関係性を深めてハッピーにする「面白い性愛」の話 石井リナ×佐伯ポインティ

社会問題からセックスまで。現代を生きる女性に様々な選択肢を提案するエンパワーメントメディア「BLAST」。その運営会社であるBLAST Inc.のCEOを務めながら、SNSコンサルタントとしても活躍する石井リナが、ミレニアル世代にフォーカス。

特に1990年前後に生まれた人は、インターネットネイティブな環境で培った柔軟な感覚で、様々な新しい働き方に取り組んでいる。学生時代にガラケーを持ち、インターネットの普及とともに育ってきた人々は、どんな価値観を持ち、何を思考しているのだろうか。世代の狭間に生まれ、時にハブになり得る「ミレニアル世代」を深掘りする。

今回は、株式会社ポインティのCEO(チーフ・エロデュース・オフィサー)として、「猥談(わいだん)バー」の運営や「なりきりデート」、「エロ特許許可局」というイベントなど、“性愛”に関わる面白い事業を追求している佐伯ポインティとの対談。欲望を満たすためだけのものではなく、人と人との関係性を深め豊かに広げていく上での「面白い性愛」について、軽やかに語った。

面白いエロの会社を始めたきっかけ

石井 そもそも、ポイちゃんはどうしてエロにフォーカスしようと思ったの?

佐伯 きっかけは、新卒で入社したコルクという会社の社長、佐渡島庸平さんとの雑談だった。佐渡島さんは、1日に10人以上の人に会うんだけど、それぐらい色々な人に会ってきた佐渡島さんから、「お前めっちゃエロ好きだな〜!」って言われたことがあって、それまで自覚してなかったけど、「もしかして俺、人よりもエロが好きなのかも!?」って。

石井 身近な人の言葉がきっかけで、自分が好きなことに気づいたんだ。

佐伯 基本的に、みんなエロが大好きだと思ってたからね! 漫画の編集者という仕事を選んだ時は「自分はエンタメの企画が好き!」って思い込んでたけど、本当に興味あるのは「エンタメの中のエロ」だったんだと気がついた。現状のエロにまつわる事業とかコンテンツに対して、こうしたらいいのにって思ったことを書いたら、やりたいことがたくさん出てきたから、社員合宿で辞めます!って言っちゃった。

石井 いきなり社員合宿で!?

佐伯 社員が全員いるからちょうどいいじゃん!と思って……今思うとヤバみ(笑)。好きなこと、得意なことがハッキリしたし、ポジティブな独立だしいいかなーって思ったんだけど、でもめっちゃ心配されて。「ぜんぜん仕事できないのに独立って、大丈夫!?」って。周囲は生活できなくて死ぬと思ったんだと思う(笑)。

石井 事業内容はどうやって決めていったの?

石井リナさん

佐伯 「面白いエロ」のエンタメ企業をやりたいということは最初から決めてた! アダルトビデオやエロ漫画は、性欲の解消を目的に作られているからコンテンツに偏りが出ちゃって面白くなりづらい。株式会社ポインティが手がけるのは、性欲の処理的なエロじゃなくて、人間同士の関係性にフォーカスしたコンテンツだけにした。今ある“関係性のエロ”の代表的なコンテンツが「BL(ボーイズラブ)」で、BL市場っていうのは性欲処理のためじゃなくて、関係性の尊さやストーリーの面白さを売りにしているところが最高で。20代から60~70代までファンがいるの! すごいよね!

石井 すごい。そうなんだ。

ハッピーにならないエロは絶対にやらない

石井 関係性のコンテンツといえば、デート用の役割と台本が用意された「なりきりデート」という事業をやるって言ってたよね。設定のなかに「秘密」がないと盛り上がらないと言ってたことがすごく印象に残ってるから、詳しく聞きたいな。

佐伯 エロに限らず、面白さって基本的に「新情報」だと思ってる。その「新情報」をどう伝えるかで人の感情は動く。だから、相手が知らない情報をこっちが持っていて、自分が知らない情報を相手が持っている設定を脚本にいれてデートすると、お互いに予期できない行動をすることで盛り上がってくんだよね。

石井 まさに関係性のおもしろさだね。例えばどんな設定があるの?

佐伯 10年後にタイムリープして、彼女が10歳年上になっちゃった、とか、自分が人型Wi-Fiで相手がAIアシスタントとか。

石井 人型Wi-Fiって何?(笑)

石井リナ

佐伯 ロボット同士の恋愛みたいな近未来の話(笑)。後ろめたい「秘密」にすると、なんだかどろっとしちゃうから、そうならないバランスを大事にしてて、ファンタジーとかSFに振り切るといいあんばいになる!

エロの観点から関係性を深めてハッピーにする「面白い性愛」の話 石井リナ×佐伯ポインティ

石井 エロってかなり繊細に線引きしていかないと、意図せぬ解釈をされることもあるよね。それに対してポップさのあるエロってユニークだし面白いね。

佐伯 最近、株式会社ポインティにとっての「エロとは?」を言葉にしようと思って会社のメンバーと話し合いながら、「親しい関係性の中での楽しい性愛」という言葉にたどり着いたんだよね。ハッピーにならないエロは絶対にやりたくない。最終的には、雑誌の『POPEYE』っぽさみたいな感じで、エロはエロでも株式会社ポインティの「ぽさ」をつくれたらうれしいなと思って。

石井 私、ポイちゃんの活動で特に印象に残っているのが、「エロ特許許可局」。「心身ともに安全である」っていう採点の方針がすごくいいなとおもった。

石井リナさん

佐伯 「エロ特許許可局」は、エロにまつわるアイデアやノウハウをみんなから募って、3人の審査員、エロ特許許可局員がそれを判断するというイベントで……、やってみたらかなり面白かった(笑)。

エロの観点から関係性を深めてハッピーにする「面白い性愛」の話 石井リナ×佐伯ポインティ

「エロ特許許可局」のイベントで使用した審査基準

石井 企画屋だよね。見せ方が上手だし、わかりやすい形をつくってる。参加したくなる仕組みを作るのがすごい上手だと思う。

佐伯 コルク時代の自分が行くか否か、で考えてるんだよね。「この内容でこの金額は高いなー」とか「こんな感じだったら行きたい!」という感じでイベントや企画を考える。

「男女の違い」の向こう側にある、個人の性愛

石井 「男女の違い」みたいな話の向こうにある、「みんなで楽しくエロについて話そう」っていうことができていて、それってすごいなって。

佐伯 色んな人と性癖の話をしたり、取材して聞いたりするんだけど、性癖の部分には全然男女差がないな、って思う。いろんなエロいことを、いろんな「個人」がしてる感じ。ただ、社会について目を向けるとまた別で、性差別は起きまくっているし、そこに対してはエロデューサーとしてというより個人として、おかしい慣習は早く滅びるといいな、とかよく思ってる。

石井 BLASTも性にまつわるコンテンツを発信しているけど、今まで隠されてきたものを、ヘルシーに公開していくことを意識していて、いい反響が届いているよ。健康的に性やセックスの話をすると女の子の読者からの反響もめちゃくちゃあるし、彼氏から「これ見た方がいいんじゃない?」って紹介されたっていう女の子もいて、すごくうれしい。カップルという関係性をもっと健康的で楽しくするきっかけになるといいなって。

石井リナさん

佐伯 こんなに人類が発達したのに、エロを起点にした人間の関係性について、まだまだ事業もサービスも全然ないよね。性愛をいろんな角度からバイブス上げてこうと思ってる!

石井 話が少し変わるけど、セックストイを欲しいと彼氏やパートナーに言うと「ちょっと待ってくれ」って言われる現象があるんだよね。

佐伯 AIに仕事奪われる、みたいな話と近いよね(笑)。

石井 そうそう。役割分担だって話すと、一応理解してもらえるんだけど、どこかひっかかっちゃう。だから、お互いに買い合うっていうのがベストなんじゃないかなって結論になった。2人で使う、みたいな。ブランド的にはセット売りできるし(笑)。

佐伯 多分、相手のセックストイと自分がチームになれるといい感じになると思う。ピカチュウとサトシみたいなバディ感というか(笑)。こういう話もしてるから、リナちゃんも今度猥談バーに遊びにきて!

エロの観点から関係性を深めてハッピーにする「面白い性愛」の話 石井リナ×佐伯ポインティ

編集後記:

性にまつわるトピックは、いまの社会ではタブーとされることも多い。しかし、それは人と人との関係性において重要かつ特別な役目を担っており、人間のレゾンデートル(存在理由)に深く関わっているとさえ言える。時代の変遷の中で、性にまつわるコンテンツの捉えられ方は変化しつつあり、芸術と性の関わりを問うニュースが話題を集めたり、性教育について見直す動きが生まれたり、タブーとされてきたからこそ常に新陳代謝が起きる領域でもある。佐伯ポインティが掲げる「面白い性愛」は、性を扱いながらポップカルチャー然とした姿勢を貫き、個人が個人を尊重し、理解しあうという次の時代を生きる上での人のありようを教えてくれる。心のうちに秘めていた気持ちを、素直に楽しく伝え合える空間「猥談バー」は、現代の駆け込み寺のような場所なのかもしれない。

(文/長嶋太陽、撮影/なかむらしんたろう)

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