私の一枚

宮沢氷魚が舞台『BOAT』で磨いた“適応力” 『偽装不倫』で恋愛ドラマ初挑戦

2018年7月に舞台『BOAT』に出演しました。その千秋楽の公演前に、一緒に舞台を作った仲間たちと撮った一枚です。

モデルとしてデビューしましたが、もともとは役者になりたくてこの世界に入りました。2017年に『コウノドリ』というドラマの第2シリーズで念願の役者デビューをして、その後いくつかのドラマを経験しましたが、舞台はこの時が初めてで、しかも主演。あらためて芝居の難しさを実感する場になりました。

でも、『BOAT』以降、役者としてはもちろん、モデルの仕事の時も、カメラの前に立った時の雰囲気が良くなったと言っていただけるようになりました。自分ではその変化をうまく言葉で表現できませんが、『BOAT』を経験したことで、「見せる」という部分で一回り大きく成長できたのではないかと思っています。

みんなの力で乗り切ることができた初舞台

『BOAT』で何より驚いたのは、台本がなかったこと。稽古のたびに演出の藤田貴大さんがテキストを書いた紙を配ってくれますが、それがセリフなのかト書きなのかもよくわかりませんでした。しかも、それぞれの役の設定が稽古のたびに変化するんです。どう役作りをすればいいのかすごく迷いました。また、役者自身が舞台の転換をしたり、ステージを走り回ったりするシーンも多くて、体力面でもまったく自信を持てないまま初日を迎えることになりました。

会場の東京芸術劇場プレイハウスは座席が800以上。それほどたくさんのお客さんの前で芝居をするのは初めてで、しかも主演ということで緊張して臨みました。いざ公演が始まってからも、稽古の時と同様に内容がいろいろ変化していったので、“適応力”が求められる舞台でした。

それでも、変化があるたびに、仲間の助けを借りながら乗り越え、みんなで走り切ることができた。この「みんなで」という感覚が、とても大きな思い出として残る仕事になりました。だからこの写真には、「とにかく大変だった、でもみんな頑張ったよね」という安心感がにじみ出ているように感じます。今年も5月から6月にかけて、この時とほぼ同じメンバーで『CITY』という舞台をやりましたが、チームワークは抜群でした。

役に特別な愛着を感じた『コウノドリ』

舞台とTVドラマには、それぞれの魅力や難しさを感じます。舞台はドラマよりも動きを大きく見せる必要があるし、生の声で伝える意識を強く持たないといけないので、エネルギーの注ぎ方が違いますね。逆に舞台の感覚のまま、ドラマの撮影でエネルギーを出してしまうとシーンの邪魔になってしまうこともあるので、そのさじ加減は難しいです。

ドラマの仕事は、稽古を重ねて作り上げる舞台とは違い、一瞬一瞬の感覚をお芝居で表現していく作り方をするので、瞬発力が求められます。あまり深く考え過ぎてしまうと、その一瞬に対応できなくなる怖さがあります。僕の場合、入り込み過ぎて前の作品を引きずってしまうこともあったので、ドラマの場合はあまり役を作り過ぎないぐらいのほうがいいと思っています。

『コウノドリ』の時は、初めてドラマに出演したこともあり、自分なりにかなり研究して役の人物像を作ったので、終わってからも役がなかなか抜けませんでした。台本もボロボロになるぐらいまで読み込んでいたので、みんなに「台本を置いて、一回外の空気を吸ってきたら?」と言われてしまうほど。これまで演じたすべての役に愛着がありますけど、あの役は特別でしたね。

宮沢氷魚

「役者もモデルの仕事も両方大切にしたい」と語る宮沢氷魚さん

杏の相手役で本格的な恋愛ドラマに初挑戦

間もなく放送が始まるドラマ『偽装不倫』では、杏さんの相手役を務めさせていただきます。本格的な恋愛ドラマは初めてですし、相手役は大先輩ということで、撮影が始まる前はいろいろと緊張していました。

でも、杏さんが相手だからとプレッシャーを感じていると、画面上でも僕が恐縮しているように見えてしまう。だから、カメラが回ったら思いきりスイッチを入れて、僕がリードするぐらいの強い気持ちで演じています。杏さんは、撮影現場でいつもとてもフランクに声をかけて下さるので、もう緊張しなくなりました。

タイトルだけを見るとドロドロした話だと思われてしまいそうですが、純愛ドラマですし、コメディの要素もあるので、幅広い世代のみなさんが楽しめると思います。僕自身も、大人の女性はこういうことを考えながら恋愛しているんだ、こんなふうに生活しているのか、とドラマを通して知ることができて、新鮮な気持ちで、楽しみながら演じています。

ドラマ『偽装不倫』

ドラマ『偽装不倫』では世界を飛び回るフリー写真家・伴野丈を演じる

役者もモデルも大切にしながら自分を磨きたい

この世界に入って最初の1~2年はまだ仕事が少なかったこともあり、「うまくいかなくてもまあいいか」と思うことも正直ありました。今思えば、「必ずこの仕事で生きていくんだ」と心から思えたのは、役者の仕事を始めてからかもしれません。

役者になりたいという夢がかなったことで責任感が芽生え、「かなったからには活躍しなければ」と思うようになりました。こうしてドラマや舞台のお仕事をいただけるのは、本当にありがたいことだと思います。

今後、演じてみたい役を一つ挙げるとすれば、「サイコパス」の役。僕は普段から落ち着いたタイプで、内心では怒っていたとしても、それを表に出すことはめったにありません。そういう僕がサイコパスな役をやったら、みんなどう思うのだろうか。そこは興味がありますね。

一方で、デビューした仕事はモデルだったこともあり、いまもモデルの現場に行くと落ち着くというか、「帰ってきた」と感じる自分もいます。モデルの経験が役者の仕事に生きることも、またその逆の場合もあると思うので、これからも両方を大切にしながら、自分を磨いていきたいです。

           ◇

みやざわ・ひお 1994年、アメリカ・サンフランシスコ生まれ、東京育ち。2015年、『MEN’S NON-NO』専属モデルオーディションでグランプリを獲得しデビュー。2017年、ドラマ『コウノドリ』(TBS)で俳優デビュー後は、モデル活動と並行してドラマ『トドメの接吻』(日本テレビ)、『映画 賭ケグルイ』などの映像作品や舞台で活躍中。ドラマ『偽装不倫』は日本テレビ系にて7月10日午後10時よりスタート。

■ドラマ『偽装不倫』公式サイト
https://www.ntv.co.jp/gisouhurin/

PROFILE

髙橋晃浩

福島県郡山市生まれ。ライター/グラフィックデザイナー。ライターとして有名無名問わず1,000人超にインタビューし雑誌、新聞、WEBメディア等に寄稿。CDライナーノーツ執筆は200枚以上。グラフィックデザイナーとしてはCDジャケット、ロゴ、企業パンフなどを手がける。マデニヤル株式会社代表取締役。

大人になるほど沖縄への思いが強まる玉城ティナと、大切な「ひいおばあちゃん」

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何度も仕事をやめようと思った山本舞香を支えてくれたもの 映画『東京喰種【S】』に出演

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