小川フミオのモーターカー

威風堂々ぶりが懐かしい 初代日産プレジデント

当時はうすらデカくてやぼったいなあと思ったが、いまみると、ボディーのプロポーションはよく、随所で品質の高さを感じられた1台が日産の「プレジデント」だ。1965年に発売されて、90年まで作り続けられた長寿モデルである。

(TOP画像:73年8月のマイナーチェンジでフロントマスクなどが大きく変わった)

3ナンバー専用車として開発され65年に発売された初期型

3ナンバー専用車として開発され65年に発売された初期型

73年型のリアビュー

73年型のリアビュー

全長5045mmのボディに、4リッターV型8気筒エンジンを搭載した日産車の頂点に立つセダン。2850mmのホイールベースは当時はとても長かった。今のクルマだとトヨタ・カムリがほぼ同寸になる。

ノーズはやや短めにする一方で、リアのオーバーハング(後輪から後ろの部分)は長めにという、英国車的なプロポーションを採用し、あえて「4ライト」、つまりサイドの“窓”が左右二つずつある形式を採用していたのが特徴だ。

リアクォーターピラーは太くて、スポーティな印象すらある。そのリアクォーターピラーの付け根は後輪の上に位置するというデザインの定石が守られており、そのことで均整がとれて見える。

4ライトは基本的にドライバーズカーのためのデザインと言われている。だがプレジデントは、その車名が表すとおり、運転手を頼んで後席に乗ることを前提と開発されていたはずだ。後席はもちろん広々としていた。それに加えて、フロントシートの仕様にバリエーションがあったのも個人的には好きな点である。

73年型のセミセパレートシート(米国車っぽい)

73年型のセミセパレートシート(米国車っぽい)

ファブリック張りシートが高級車にはふさわしい

ファブリック張りシートが高級車にはふさわしい

運転席と助手席が独立した一般的なセパレートシートをはじめ、中央のアームレストを畳むと3人並んで座れるセミセパレートシート、それに最初から3人がけのベンチシート、といった具合だ。少し前までのタクシー車両には、同様のベンチシートを採用したものも多かった。

ベンチシートはビニールとか革が張ってあると、つるつる滑って走行中に落ち着かないのだが、ファブリック(織物)だとなかなかよいものだ。クルマの中央に座るのもアリだし、昔の米国映画のように、カップルが肩に腕を回して運転する、なんてロマンチックな空想も楽しめる。でも現在は安全基準があるため、新車でベンチシートが採用されることは当分なさそうだ。

プレジデントが発表された当時は、こういう米国車的なところが魅力的に見えた。それはそれでよかったものの、70年代なかばをすぎると日本でも欧州車の上級モデルが増えてきた。たとえばメルセデス・ベンツSクラスと比較して、時代おくれ感が目立つようになったのは事実だ。

75年にダッシュボードも少し新しくなったが橫バーの速度計が時代を感じさせる

75年にダッシュボードも少し新しくなったが橫バーの速度計が時代を感じさせる

四角いヘッドランプなど優美さが薄れた85年のマイナーチェンジ版

四角いヘッドランプなど優美さが薄れた85年のマイナーチェンジ版

ふわふわとした足まわり、平板な造型のシート、ビニールとプラスチックが目立つ内装などが、プレジデントの弱点に見えた。73年8月のマイナーチェンジでフロントマスクや内装のアップデートがはかられたが、顔つきはブルーバード810型(76年)にも近いし、インテリアはセドリック/グロリア(75年)とあまり変わらない印象になってしまい、「これでは改良でなく改悪ではないか(涙)」と思ったほどだ。

トヨタ自動車が2018年にセンチュリーのフルモデルチェンジを行った。センチュリーのデザインテーマはいまも守られている。プレジデントは90年にインフィニティQ45を基本として2代目が開発され、2003年にはシーマをベースに3代目が開発された。デザインテーマは行き当たりばったりの感が強く、残念ながら迷走してきた感がある。

昨今、先進的な運転支援技術に力を入れている日産自動車だけに、このあたりで持てる技術を結集して“これこそ日産の頂点”という新世代のプレジデントを出してくれないだろうか。

写真=日産自動車提供

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

ラグジュアリーなパーソナルカーという分野を開拓した初代サンダーバード

トップへ戻る

生涯気になるブランド“アルファロメオ”の「アルフェッタGT」

RECOMMENDおすすめの記事