マッキー牧元 うまいはエロい

<81>酸味と辛みで食欲増進 インドのカレー料理「ポークビンダルー」がうまい!(渋谷「ポークビンダルー食べる副大統領」)

インド人の多くは、牛を食べない。インドの主要宗教であるヒンドゥー教は、牛を神聖な動物と定めているからである。

同時に豚も食べない。カレーといえば、鶏肉か羊肉である。豚肉は、不衛生と思われているらしい。しかし例外はある。それが「ポークビンダルー」と呼ばれるカレーである。

「ポークビンダルー」は、約400年間ポルトガル領であったゴア地方(西海岸中部)で生まれた。豚肉とあさりの炒めものや、豚肉と野菜の煮込み料理など、豚肉をよく食べるポルトガル人の嗜好(しこう)に、インド人のカレー料理が加わったのだろう。

一説によると、マデイラ島の「カルネ・デ・ヴィーニャ・ダリョス」という、ワイン酢やニンニク、白ワインに漬け込んだ豚肉の煮込み料理が、カレー料理へと変化していったらしい。

その特徴は、ワインヴィネガーを使った酸っぱさと辛みにある。人はどうも酸っぱい料理に弱い。

そんな「ポークビンダルー」の専門店が、渋谷にできた。経営するのは、代々木八幡のポルトガル料理店「クリスチアノ」だから、これは当然の成り行きというか、至極真っ当な筋である。

メニューは、「ポークビンダルー」しかない。座れば、しばらくして、「ポークビンダルー」が運ばれる。ご飯にポークビンダルーが流され、アチャール(インドの漬物)と根菜と赤キャベツのチョップサラダ、クスクス入りのトマトメティ(フェネグリークというスパイスとトマトを合わせたもの)が添えられる。

<81>酸味と辛みで食欲増進 インドのカレー料理「ポークビンダルー」がうまい!(渋谷「ポークビンダルー食べる副大統領」)

口に運べば、ああ、酸っぱく辛い。しかし相当酸味があるものの、酢の使い方がうまいのだろう、酸味がまろやかである。それがご飯の甘みになじんで、ポルトガル人でもインド人でもないのに、なにか懐かしいような気分を呼ぶ。小さなころには食べていないのに、ほっとする温かさが味の中にあって、スプーンを運ぶ手がぐんと加速する。

さらにこの店には、こんな仕掛けがある。卓上に四つの調味料が置かれていて、これを適時混ぜたりかけたりしながら食べ進むと、味の変化があって、実に楽しいのだな。

ローリングハリケーンチリペッパー(豆板醤〈とうばんじゃん〉ときび糖入りチリソース)にソルティヨーグル(ニンニクを効かせたヨーグルトソース)、ファンタスティックジンジャー(スパイスの効いたおろしショウガ)、フィッシャーマンズヴィネガー(ナンプラー入り酢)である。

<81>酸味と辛みで食欲増進 インドのカレー料理「ポークビンダルー」がうまい!(渋谷「ポークビンダルー食べる副大統領」)

<81>酸味と辛みで食欲増進 インドのカレー料理「ポークビンダルー」がうまい!(渋谷「ポークビンダルー食べる副大統領」)

僕の好みの食べ方は次の通り。

1. サラダを食べる
2. アチャールとトマトメティを脇に避難させる
3. ポークビンダルーとご飯を入念に混ぜる
4. 混ぜたご飯の一部にフィッシャーマンズヴィネガーをかけた箇所を作る
5. 上からパパド(インドのせんべい)をちぎってかける
6. 混ぜたご飯を食べる
7. ソルティヨーグルとファンタスティックジンジャーをかけて食べる
8. ゆで卵を混ぜ込んで食べる
9. 時折フィッシャーマンズヴィネガーをかけて食べる
10. 時折ローリングハリケーンチリペッパーをかけて食べる
11. ソルティヨーグルとファンタスティックジンジャーをさらにたっぷりかける
12. アチャールとトマトメティは、合いの手の箸休めとして、時折食べる
13. サラダのお代わりをもらう
14. サラダも混ぜ込む
15. さらにパパドをちぎってかけ、あとは終盤に向けて一気呵成(かせい)に食べ進める

このカレーは困ったことに、食べて数日経つと、無性にまた食べたくなるのです。

ポークビンダルー食べる副大統領

食べる副大統領とは、ゴア地方とゴア元米副大統領との掛け合わせのダジャレ。メニューは「ポークビンダルー」(1000円)のみ。卓上のゆで卵は、一個まで無料。ご飯、サラダはおかわり自由。冷凍、粉砕して米粒状にしたカリフラワーを混ぜたライスも選択できる。

【店舗情報】
東京都渋谷区宇田川町41-26  パピエビル2F
JR「渋谷」駅より 徒歩7分、京王井の頭線「神泉」駅より徒歩8分、東京メトロ千代田線「代々木公園」駅より徒歩11分
営業時間:ランチ11:00 ~  *材料がなくなり次第終了
定休日:土・日・祝日

「副大統領」店舗画像

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PROFILE

マッキー牧元

1955年東京生まれ。立教大学卒。年間幅広く、全国および世界中で600食近くを食べ歩き、数多くの雑誌、ウェブに連載、テレビ、ラジオに出演。日々食の向こう側にいる職人と生産者を見据える。著書に『東京・食のお作法』(文藝春秋)『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)。市民講座も多数。鍋奉行協会顧問でもある。

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