キャンピングカーで行こう!

狭いなら広げちゃおう! キャンピングカーのスライドアウトって何?

行中や駐車中は小さくて、暮らすときは広がる。そんな夢のような機能がついたキャンピングカーがあったら……。まるで『ドラえもん』の世界ですが、それがかなう機構があるんです。ひとつは以前紹介した、天井が高くなって居住空間の体積が広がるポップアップルーフ。(参考記事はこちら

そしてもうひとつ、今回取り上げるのが、車体を横に広げるスライドアウトです。

アメリカ車に多いスライドアウト

スライドアウトは、ボタン操作ひとつで車体を30~50cmほど外にせり出して、車内に広々とした空間を作れる機構です。冒頭の写真のように、主にアメリカ製キャンピングカーに装備されています。スライドアウト搭載車が登場し始めたのは1990年代後半から。初期には「隙間が多くて雨漏りする」「壊れやすい」といったトラブルもあったようですが、各社とも改良を重ね、いまや米国では信頼できる装備として普及しています。

特に自走式のクラスCやクラスA、トレーラーにも普及し、大型の車両では左右後部合わせて4カ所もスライドアウトする例もあります。もともと、日本では登録できないほど大きなアメリカ製キャンピングカー。幅2.5mを超える車体が、さらに左右に50cmずつ広がるのですから、室内の広さは住宅並みです。「自宅と変わらない空間を持ち運ぼう」というアメリカらしいコンセプトといえるでしょう。

狭いなら広げちゃおう! キャンピングカーのスライドアウトって何?

アメリカン・クラスAの車内。ダブルスライドアウトを広げると、住宅写真にしか見えないほどの広さになる

ヨーロッパ車では少数派

ヨーロッパ製キャンピングカーではどうでしょうか。ドイツのキャラバンサロン(世界最大のキャンピングカーショー)を取材していると、一部の大型車・大型トレーラーには見られますが、日本に入って来るような中・小型の車両には、あまり採用されていません。

その理由は、どうやらキャンピングカーの使い方の違いにありそうです。ヨーロッパでのキャンピングカーは、旅の道具であるとともに、やはりアウトドアを楽しむためのもの。昼間は車外で過ごすことが多く、室内の広さにはさほどこだわらないようです。室内の滞在時間が短いならば、わざわざ広げることはありません。結果、スライドアウトはあまり人気が無いようです。

日本に輸入されている数少ないヨーロッパ製のスライドアウト装備車としては、アドリア社の「コンパクト・スライドアウト」という車両があります。この車は、横ではなく縦に伸びるタイプで「走行中の車体を可能な限り小さくしたい」というニーズに応えて作られたもの。スライドアウト部分はベッドスペースのごく限られた大きさにすぎないため、居室空間が広がる、といえるほどの効果はありません。

狭いなら広げちゃおう! キャンピングカーのスライドアウトって何?

日本でも現在販売されている、アドリア・コンパクト・スライドアウト。リアのベッドの部分だけが後ろに伸びる仕様だ。ちなみに、広げないとベッドは使用できない

国産車にスライドアウトがないのはなぜか

では日本ではどうでしょうか。ポップアップルーフなら、軽キャンピングカーやバンコン、トレーラーに至るまで、多くの採用例があります。しかし、スライドアウト搭載の車両は見られません。過去には、数は少ないものの装備した例もありましたが、現行車種では残念ながらありません。それにはいくつかの理由が考えられます。

・車体が重くなる&価格が高くなる

当たり前ですが、スライドアウト機構を取り付けると重量が増します。さらに、開口部が増えるためシェルの補強も必要になってきます。そうなると、耐荷重に余裕が少ないベース車両では、その重量増に耐えることができません。また、当然ながらコストも上昇し、それは販売価格にも影響します。

・日本人の使い方に合うかどうか……。

もうひとつは、使い方の問題です。キャンプ場やRVパークでの使用が前提の欧米と異なり、日本では現在、多くのユーザーが道の駅やパーキングエリア/サービスエリアでの仮眠に利用しています。こういった場所では、当然スライドアウトを展開することは出来ません(オーニングを出すのも、マナー違反です)。キャンプ場でアウトドアレジャーを楽しむ人はともかく、温泉巡りや観光地巡りなど、全国各地を身軽に旅して回りたい人にとっては、使える場所の少ない機能といえそうです。

さらにスライドアウトを搭載すると、収納時(伸ばさない状態)には、どうしても使いづらい室内レイアウトになる、というのもポイントでしょう。スライドアウトを広げていない間は、左右の家具類が接近することになります。レイアウトにもよりますが、ダイネットやソファがくっついて、家具の上を乗り越えないと後ろまで行けないことも。よほどの大型車でない限り、スライドアウトをたたんだ状態では、むしろ室内は狭く感じられることでしょう。毎回必ずキャンプ場やRVパークを利用する人でなければ、敬遠されても仕方がありません。

とはいえ、これは現時点での話です。道路事情や駐車場事情が厳しい日本でこそ、スライドアウトのメリットは大きいはず。今後、レイアウトの工夫や、RVパークの増加など受け入れ場所の環境整備が進めば、日本でも当たり前の機能になる日が来るかもしれません。

PROFILE

渡部竜生

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)がある。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫6匹とヨメさんひとり。

絶対必要? それとも不要? キャンピングカーの「トイレ」を解説

トップへ戻る

子どもの安全を考えて選びたい、キャンピングカーのチャイルドシート

RECOMMENDおすすめの記事