小川フミオのモーターカー

初代よりパワフルだが快適で、洗練されていた パジェロ2代目を懐かしむ

時代は変わるなあと思わされたのが、2019年8月をもって三菱「パジェロ」の国内向け生産が終了するというニュースだ。最後のモデルは2006年に登場した4代目だが、パジェロといえば、1982年の初代と、大ヒットした91年の2代目が日本の自動車史に残るだろう。

(TOP画像:もっともパジェロらしいといえるルックスの「メタルトップワイドXR-Ⅱ」)

そもそもパジェロの前身は、ジープである。ジープは米国のライセンスを得て生産されていたが、快適性とは無縁だったため一般の購買者は少なく、主たる納品先は防衛庁(当時)。いっぽう、ライセンス契約の関係で、最も大きな市場である米国には輸出できなかったこともあり、三菱にとって悩み多きクルマだった。

狙いどおり米国でも大ヒットした

狙いどおり米国でも大ヒットした

米国では1960年代からフォード・ブロンコやシボレー・ブレイザーといった今の言葉でいう“SUV”が登場して、若い世代を中心に人気を集めていた。三菱の開発者がジープに代わる四輪駆動モデルの市場として目をつけたのは、そのマーケットである。

市場の反応を探るべく作られたのが「パジェロⅡ」だ。1979年の東京モーターショーで発表されたコンセプトモデルで、のちに「キャンバストップ」あるいは二代目では「Jトップ」と呼ばれることになるロールオーバーバーを残したキャンバストップのスタイルは、82年の初代とかなり近いものである。

ショートボディの「Jトップ」は、今なら歩行者保護の観点から許されないフロントガードバーに時代を感じるが、全体にはまとまりがいい

ショートボディの「Jトップ」は、今なら歩行者保護の観点から許されないフロントガードバーに時代を感じるが、全体にはまとまりがいい

初代パジェロは大成功し、9年間で62万台を生産した。ジープは最高でも年間9245台(79年)だったので、まさに飛躍だ。62万台のうち輸出が46万台だから、三菱の狙いは正鵠(せいこく)を射ていたことになる。いまでも米国などでは見かける。

2代目パジェロは、初代よりボディーを大型化したが、スタイリングは四輪駆動車のイメージを守りつつも乗用車的なディテールを各所に採用。新時代の乗り物として受け入れた層への気配りが目立った。初代との違いは、パワフルではあるが、快適で、ほどよくシンプルなスタイルであること。まとめて言うと洗練されていたのだ。

写真の「XP」はキックアップルーフという後席から後ろのルーフ髙が高いボディを特徴とする

写真の「XP」はキックアップルーフという後席から後ろのルーフ髙が高いボディを特徴とする

ヒットの理由は、ボディーバリエーションと、パワートレインの多様性にある。ホイールベースにはロング(2725mm)とショート(2420mm)があり、ボディーには通常の5ナンバー仕様と、ワイドな車幅の3ナンバーとが用意された。

ボディーは高いルーフと通常のルーフとさらに中間の高さのルーフまで設定され、7人乗りの4ドア、スポーティーな2ドア、さらにフルオープンに近い気分が味わえる幌(ほろ)を備えたJトップ仕様までと、かなり気合の入った布陣である。

「XR-Ⅱ」のダッシュボードには初代から三菱の自慢だった水平計などが備わる

「XR-Ⅱ」のダッシュボードには初代から三菱の自慢だった水平計などが備わる

もうひとつ、パジェロが売れた理由は、購買層が何を求めているか的確につかんでいたマーケティング手法だ。83年の第5回パリダカールラリーに初出走し、このときはいきなりクラス優勝。結局、12回もの総合優勝を手にしている。同時にテレビ番組の景品として提供したり、ユーミンの苗場コンサートの冠スポンサーになるなど、多方面での販売戦略でイメージを浸透させたのだった。

パジェロは、上記のような理由で、82年の初代と91年から99年まで作られた2代目が切れ目なくつながって、大きな存在となっている。

欧州テイストを感じさせる「XR-Ⅱ」のインテリア

欧州テイストを感じさせる「XR-Ⅱ」のインテリア

今回、4代目パジェロが日本向けの生産中止の背景はいろいろ考えられる。クリーンディーゼルとはいえ3.2リッター4気筒で燃費効率がいまひとつだったり、これからのハイブリッドや電気自動車化を視野に入れた戦略のなかでは将来性がない、などだ。

ただファイナルエディションとして2019年4月に発売されたモデルは完売したそうである。古くさいところも多いが、乗ると悪いクルマではない。とはいえ、なにより大きな理由は、それが「パジェロ」だからではないだろうか。

もし自分が、4世代のうちからファイナルエディションとして発売するモデルを選べるとしたら、と夢想してみた。私が選ぶのは脂が乗りきっていた時期の三菱が手がけた2代目である。

(写真=三菱自動車提供)

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

生涯気になるブランド“アルファロメオ”の「アルフェッタGT」

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米国でも日本でも愛された、完成度の高い4駆 2代目ジープ「チェロキー」

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