マッキー牧元 うまいはエロい

<82>札幌で必ず食べたいスープカレー 危険なうまさの「ソウルストア」と「カリーヤ!コング」

札幌はラーメンの町であるとともに「スープカレー」の町でもある。一説によると、1970年代に「アジャンタ」という喫茶店が出した「薬膳カリィ」が元祖であり、そのあとかなりの年数が経ってカレー店「マジックスパイス」が初めて「スープカレー」という名称でカレーを出したのだという。

2000年初頭、札幌で話題となっていた「マジックスパイス」で食べたことがある。何しろカレーのルーがスープ状で、具がこれでもかと入っている姿に驚かされた。インド料理店で、同様のサラサラとしてスープ状のカレーは食べたことがある。しかしこの液体の量は見たことがなかった。

これはご飯にかけるのか、はたまたスープを飲んでご飯をかき込むのか。あるいは、ご飯をスープにぶち込むのか。勝手がわからなくて、周囲の客をまねながら、恐る恐る食べた記憶がある。

しかも辛さの度合いを表す名前がユニークだった。入門編の「覚醒」に始まり、「瞑想(めいそう)」→「悶絶(もんぜつ)」→「涅槃(ねはん)」→「極楽」→「天空」→「虚空」へと辛さが増していく。辛さの耐性には自信があったので、虚空を頼んだのだが、運んできた店員がカレーを置くなり、「いってらっしゃい」と変なことを言う。

食べればとてつもなく辛い。粘度の高いルーと違ってスープ状ゆえに、同じ辛さでも口腔(こうくう)内の細胞への浸透度が違うらしい。汗、涙、鼻水と様々な水分が噴き出し、目はうつろで頭はもうろうとなり、店員がかけた言葉通りに、虚空へと旅立ったのであった。

豊富なメニューとトッピングが光る「ソウルストア」

「チキンと野菜のカリー」(1100円)

「チキンと野菜のカリー」(1100円)

あれから20年、スープカレーは様々に変化を遂げてきたようである。その急先鋒(せんぽう)とされる「ソウルストア」に出かけると、ここはスープカレー屋なのかと思う、品書きが並んでいる。

「のりたまチキン(チキンと磯のりと温泉卵と野菜のカレー)」「紅茶豚と大きいなめこのカリー」「道産牛のネギ塩煮込みとまいたけ天のカリー」「熱烈!!真っ赤な豆富カリー」……といった具合である。トッピングも、寄せ豆腐、エビ香り粉、ブーラージャン(粗ひき肉とスパイス香味野菜による調味料)、ゴボウバー、よだれ鶏、紅奴(梅風味の豆腐)、紅茶豚(紅茶がほのかに香る豚の角煮)、ソーキと、他にない個性に富んでいる。こりゃあ、選ぶ喜びがあり、挑戦欲が湧くメニューである。

カレールーは、クラシック、濃厚で甘みのあるボッサ、ココナツと柑橘(かんきつ)が混ざるサイケ、自家製麻辣醤の4種類がそろう。初めてならクラシックをベースに、不動の人気ナンバーワンだというチキンと野菜のカレーもいいが、「超粗挽きラムと青山さんちのよせ豆腐のカレー」もおすすめである。ここに、香菜をトッピングし、キャベツとグレープフルーツのアチャールをトッピングするのはどうだろう。

ラムひき肉をかみ締めれば、ラムの香りと様々なスパイスの香りが、勇壮に響きあう。さらに辛さの中で優しい豆腐の甘みが舌に流れる。その辛さと優しさのせめぎ合いが、頰を殴られた瞬間、なでられるようでたまりません。

店の名は「ソウルストア」と、韓国料理風だが、いやそうじゃない。スープカレーの可能性を探るべく、日夜魂をこがしています、という心意気なのかもしれない。

待つだけの価値はある! 「カリーヤ!コング」の極上カレー

もう一軒は、「カリーヤ!コング」をオススメしたい。9人で満席となるは小体な店をご主人一人が切り盛りしている。具は、野菜と鶏肉、豚肉、ラム、エビ、ハンバーグで、辛さを14段階から選ぶ。注文すると、ご主人がその度に肉を焼き、スープと野菜を温めて完成させる。それゆえに、満席の場合は、一時間弱待たねばならない。だが待つだけの価値はあるスープカレーである。

「チキン野菜」(1700円)

「チキン野菜」(1700円)

メニューの一つ「チキン野菜」は知床産もも塊肉のソテーがごろりと入る。口に運べば、次第に積もっていくうまみが、たまらない。最初はさりげなく、食べていけばいくほどに、うまみが膨らんで、後戻りができなくなる。そして店を出て数日経つと、無性に恋しくなる。そんな危険なうまみを持つカレーなのである。

その上、ご飯も光り輝き、それだけでもおいしい。野菜とチキンをいったんご飯の上に乗せ、スープを飲む。スープをかけたご飯をスプーンですくい、スープに浸して食べる。という風に食べ進むと楽しい。辛さの度合いは、自信のある人なら、辛さ「40」(14段階中12番目の辛さ)くらいから試すのがいいだろう。

店舗情報

ソウルストア

北海道札幌市中央区北1条西18丁目 市田ビル1階
札幌市営地下鉄「西18丁目」駅より徒歩4分
011-616-8775
11:30~15:00/17:00~21:00(L.O.20:30)*17:30スタートの場合もあり
定休日:不定休
公式サイト:http://soulstore.web.fc2.com/

▼マッキーさんから一言
中心街の便利な場所にある。メニューやトッピングが豊富なので、軽く飲んでからスープカレーを楽しむのもいいだろう。

 

カリーヤ!コング

北海道札幌市中央区南16条西6丁目2-10 I.R山鼻1階
札幌市電山鼻線「静修学園前」駅より徒歩1分、地下鉄南北線「幌平橋」駅より徒歩3分
011-211-0019
11:30~15:00 *素材がなくなり次第終了
定休日:水曜 
公式サイト:http://www.curry-ya-cong.com/

▼マッキーさんから一言
中心街から外れた場所にある。行くなら11時30分の開店と同時に入るか時間に余裕を見て行くほうがいい

PROFILE

マッキー牧元

1955年東京生まれ。立教大学卒。年間幅広く、全国および世界中で600食近くを食べ歩き、数多くの雑誌、ウェブに連載、テレビ、ラジオに出演。日々食の向こう側にいる職人と生産者を見据える。著書に『東京・食のお作法』(文藝春秋)『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)。市民講座も多数。鍋奉行協会顧問でもある。

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