小川フミオのモーターカー

レクサス30年の歩みを振り返る 初代から変わらない「核」とは

クサスにとって第一号車である「LS」のお披露目は、1989年1月に米デトロイトで開かれた自動車ショーである。このショーの取材に出かけていた私は、日本からの電話で昭和天皇崩御のニュースを聞いた。レクサスのデビューとほぼ同時に、「昭和」は終わったのだった。

それから30年(と約半年)を経た2019年7月、レクサスはコスタリカのリゾート地リベリアで、「Lexus Milestones レクサス・マイルストーンズ」と題してメディア向けの30周年記念イベントを開いた。30年の間に平成というひとつの時代が終わり、元号は令和に変わっていた。

このイベントは、かなりおもしろい内容だった。とくに古いクルマ好きには「自分だけずるい」と怒られそうなので、内緒にしておきたいぐらいだ(笑)。なぜなら、会場には新旧のレクサス車が試乗のために用意されていたからである。2019年5月にマイナーチェンジを受けたばかりのRXやGX(日本名LX)をはじめとする現行ラインナップとともに、初代LS(1989年)、初代SC(91年)、初代RX(98年)などが並べられていた。

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4リッターV8によるトルク感と、驚くほど高い静粛性はいまも高い水準にある初代LS

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コスタリカは本国の運転免許証とその翻訳証明を提出しない限り外国人旅行客に運転を許していない。今回は地元のレクサスディーラーが熱心に当局に働きかけてくれたおかげで、地域限定で運転が許されたそうだ。ただ、「首都のサンホセとかまでドライブすることは出来ませんよ」と言われた。

私がまず乗ったのは、最新のRX450hだ。ボディーの作りから足回りにいたるまで見直されたというモデル。実際、カーブを曲がるときに路面に張り付くような動きと、電気モーターとエンジンの上手な連係を使って力強い加速を感じさせてくれたのが印象に残った。

最近レクサスはクーペのRCなどでもマイナーチェンジで、操縦性をうんと向上させている。全長4890ミリの余裕あるサイズのSUVであるRXでも、運転の楽しさで”レクサスは他とは違う”と消費者に思ってもらおうとしているのだろう。いいかんじの仕上がりだ。

いっぽうで、RXにとって初のハイブリッド車となった2代目のRX400h(北米で2005年)にも乗ってみた。これがじつに気持ちよい走りでびっくりした。モーターの作動範囲こそ最新モデルより狭いものの、エンジンの作動が分からないほどパワートレインの切り替わりはスムーズだし、パワフルで、車体の反応がいいステアリングなど操縦性はよく、さらに静かで、乗り心地は快適なのだ。この時点でほとんど完成されている。

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驚くほど乗り心地がよく走りも印象的だった2代目RX400h

ではなぜ、そのまま作り続けられないかというと、衝突安全性や燃費の向上など、外部からの制約が年々増えるのがクルマの世界だからだ。それに対応すると車両は往々にして大型化し、重量もかさんでいく。もちろん、モデルチェンジをしないと消費者に飽きられてしまうということもある。

初代LSも、静かでパワフルで、広々とした車内でステアリングホイールを握った私には期待以上の内容だった。当時新車のトヨタ・セルシオ(日本でレクサスがデビューしたのは2005年で、初代と2代目のLSは日本では“セルシオ”だった)に乗った当時より、いまのほうが感銘を受けたほどだ。

「レクサスがモデルチェンジのたびに異なるキャラクターを追究していたらそうは思わなかったかもしれませんよ」。レクサス・インターナショナルで車両開発を統括する佐藤恒治エグゼクティブバイスプレジデントは、私にそう指摘してくれた。

「圧倒的な静粛性、乗り心地、つくりのよさ、というのがレクサス車の核にずっとあるものです。それはいまも変わらなくて、その上にモデルごとに味つけの違うキャラクターを加えていくのがレクサスのクルマづくりの考えなのです」(佐藤氏)

一本の線のように、レクサスがクルマづくりで守ってきたものが変わっていないため、30年間に発表されたさまざまなレクサス車を一気通貫で体験してみると、共通項になる特徴がはっきり見えた、ということなのだろう。唯一続いていないものがあるとしたら、スタイリングだ。初期のレクサスは全体としておとなしく、印象に残りにくい。そのため考えられたのが2012年のGSあたりから導入された「スピンドルグリル」だ。加えてボディー全体にキャラクターラインを強く入れる、グラフィカルな手法が採用されたことで、諸外国でも路上ですぐレクサス車とわかるようになった。

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新しくなったRXは日本では2019年8月下旬に発売予定だそう

ある英国の伝統的なSUVブランドのデザイン部長などは、昨今のレクサス車が好きでないのか、それともライバルを蹴落とすのが使命と思っているのか、レクサスの現在のデザインを「アクが強すぎる」と評していた。実際に米国でも初期からのレクサスユーザーのなかには、最近の変化を好まないひともいるというから、難しいものだ。

佐藤氏によると、これまでの30年のレクサスの歴史は、3つの期間に分けられ、それぞれの期間の定義は「第1期はブランド確立、第2期で個性を際立たせ、第3期は挑戦」と説明した。そして、2017年発表のLC以降、レクサスは第4期に入っているそうだ。佐藤氏から現在の第4期を定義する言葉は聞けなかったが、レクサス史上、もっとも大きな変化を目指しているだろうことは想像に難くない。なぜなら、EV(電気自動車)化が控えているからだ。

EV化は、車両開発を担当する佐藤氏にとってやりがいのある仕事であるようで、「四輪の駆動を担当するモーターの制御技術などで十分におもしろいクルマは出来ると思います」と語った。それは大きな変化だが、「変化ではなく継続」だと考えているそうだ。そういえば、フォルクスワーゲンのヘルベルト・ディースCEOも同様のことを言っていたことを思い出す。「EV化でつまらなくなるんじゃないかと言われるけれど、クルマの楽しさはハンドリングにある」。だから心配することはないのだろう。

「テスラのように圧倒的な加速性能で、(2008年に第1号を発売して)すぐにブランドイメージを確立したケースもあります。ユーザーの心を揺さぶるような製品を提供するのが、新しい時代に(高級)ブランドを確立していくことになると思っています」(佐藤氏)

さきに触れたように、レクサスが短い時間で高級車として認められたのは、つくりの良さや静粛性といった、既存のブランドに不足していた価値を押し出せたことが大きい。コスタリカで30周年を祝ったレクサスは、31年目からどのように新しい時代を切り開いていくだろうか。

(写真=レクサスインターナショナル提供)

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PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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