小川フミオのモーターカー

見本のようなハッチバック メルセデス・ベンツ新型Bクラス試乗レポート

型セダンはメルセデス・ベンツ、スポーティーなクーペはBMW、機能主義的なハッチバックはフォルクスワーゲン、というのが昔のドイツ車のすみわけだった。私の頭の片隅にはその定義が残っているけれど、実際にはとっくに垣根は取り払われている。メルセデス・ベンツ日本が2019年6月に発表した新型Bクラスは、たいへん出来のよいハッチバックなのだ。今回は、この新型Bクラスの試乗レポートをお届けする。

今回で3代目になる新型は、7年ぶりのモデルチェンジとなる。全長は4425ミリ(先代は4365ミリ)、全幅は1795ミリ(同1785ミリ)、全高は1565ミリ(同1540ミリ)と少しずつ大きくなっている。ホイールベースは2730ミリで先代より30ミリ伸びた。基本シャシーを共用するAクラスと同一だ。

新型Bクラスのラインナップは、1.4リッター4気筒エンジンの「B180」と、2リッター4気筒ディーゼルの「B200d」である。今回試乗したB180は1.4リッターエンジン搭載。パワーを先代に搭載されていた1.6リッター「B180」と比較すると、最高出力は90kW(122ps)から100kW(136ps)に上がっているのだ。

見本のようなハッチバック メルセデス・ベンツ新型Bクラス試乗レポート

空力特性にすぐれたボディはCd(空気抵抗)値0.24と低く、それが燃費にも貢献する

ハッチバック車を物色しているひとには、新しくなったB180はけっこうよい選択だと思う。パワーはたっぷりあって、乗り心地がよくて、室内も(市街地のみの体験ではあるけれど)静かで、そして広い。“理想のハッチバック”という資格試験があったら、きっと合格するだろう出来の良さである。

Bクラスのデザインは、これまでも機能主義的なスタイリングだった。特に初代はフォルクスワーゲン・ゴルフに真っ向から挑んだのか、“ドイツ車的”と呼びたくなる機能美が特徴的だった。今回の新型もキャビンが大きく居住性の高さをアピールしている。

見本のようなハッチバック メルセデス・ベンツ新型Bクラス試乗レポート

目立った特徴はないが後席バックレストは2:1:2の可倒式だしじつに機能的

リアクオーターピラーまわりなどの面の造形は、SUVのGLCを思わせる。かつ、キャラクターラインが極力廃されているのが特徴で、一目で先代とは違うとわかるし、Aクラスと見間違うこともなさそうだ。

ハッチゲートは比較的直立に近くて、455リッターの荷室容量が確保されている点も、このクルマに求められる機能にしっかり応えているといえる。後席空間も広くて、大人の男が2人で乗っても十分だ。オプションのグラスルーフを選ぶと、より気分がよい。

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写真はオプションの「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」を装着

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「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」の後席

排気量は1.4リッターと数字としてはやや控えめだけれど、走りに遜色はない。エンジン回転でいうと2000rpmの手前からターボチャージャーが利き出す感じで、しっかりした加速を味わえる。

ドライブモード切り替えスイッチが備わっていて、スポーツモードを選ぶとシフトアップするタイミングをわざと遅らせたりして、1400rpmから4000rpmと広い範囲で200Nmの最大トルクを出すエンジンゆえの、力強い走りがさらにたっぷりと楽しめる。

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最新のメルセデス・ベンツはライトスイッチがこのようなデザイン

ステアリングホイールへの応答性もよくて、中立付近から少し切り込んでから、車体が動くまでの反応が速い。それでいて、やたらスポーティーではなく、例えばカーブを曲がるとき、車体がじわーっと時間をかけながら傾いていく。この動き方は、メルセデス・ベンツのセダンに近く、セダンの運転感覚を知っているひとはより好感を持てるはずだ。

Aクラスもよく出来ているが、Bクラスは乗り心地がよりしっとりしていて、ハッチバックとかSUVとかの車型にこだわらず、家族のクルマ、あるいは自分で楽しむクルマ、どっちの目的であろうと、選んで後悔しなさそうだ。

「ハイ、メルセデス」と声を出すと「なにかご用ですか」と音声で反応する会話型の操作・インフォテインメント(ナビゲーション、エアコン、電話、音楽など)システムは、どうコマンドを出すと的確に指示できるか。これには慣れが必要だったが(私は焦った)、オーナーになると使いこなせるだろう。

見本のようなハッチバック メルセデス・ベンツ新型Bクラス試乗レポート

大きな液晶パネルが特徴的で二つのメーターの間にはさまざまな情報を表示できる

価格はB180が384万円(8%の消費税込み)、2019年10月以降に導入されるディーゼルのB200dは422万円(10%の消費税込み)となる。

昨今の輸入車のハッチバックは、目的に合わせて、かなり幅広い選択が出来るようになっている。楽しいクルマを探していれば、フォルクスワーゲン・ポロGTI(348万円)やルノー・メガーヌRS(440万円)がある。個性的なモデルなら、アウディQ2(299万円〜)やミニ・コンバーチブル(378万円〜)、さらにフランスのDSクロスバック(299万円〜)といった具合だ(価格はすべて8%の消費税込み)。

Bクラスはどこか突き抜けた個性を持っているわけではない。全体によく出来ている。それがほかにないキャラクターなのだ。

(写真=小川フミオ)

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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