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ナイキ史上最も“優しい”シューズ「 ジョイライド ラン フライニット」 至高の履き心地

スポーツ用品メーカー大手のナイキが構想から10年の歳月をかけて開発した、まったく新しいコンセプトのシューズを発表した。「Nike Joyride Run Flyknit」(ナイキ ジョイライド ラン フライニット)だ。その名の通り、ランニングを“楽しむ”ためのシューズである。

ナイキは41年前の1978年、ソールにエアバッグを入れたシューズ(ナイキ エア テイルウィンド)で世間をアッと驚かせたが、今回のイノベーションはそれに匹敵する。なんと、靴底に「エア」ではなく、無数のビーズを仕込むという奇想天外のものなのだ。これによって「まるで泡の上を走っているようにも感じられる」(プレスリリースより)履き心地が得られるという。

そもそもの着想は、硬いアスファルトの上を走るランナーに芝生や土の上を走る“優しさ”を提供しようということだった。イメージしたのは砂浜だ。ビーチに素足をおろしたとき、砂が動き、指と指の間にじわじわと入り込む、なんとも言えない気持ちよさがある。あの感覚をシューズで再現できないかという挑戦だ。

ソールにビーズを敷きつめるという発想は早い段階で生まれたという。だが、そこから先が大変だった。ビーチランをしたことのある人ならおわかりの通り、着地時の衝撃は少ないが、足が砂に沈み込んで走りづらいことこの上ない。砂には反発性(エネルギーリターン)がないからだ。同じことがビーズにも言える。着地時の衝撃吸収性(クッション)は抜群だが、反発性が確保できていないと走りにくい。

そこでまずビーズ素材の研究が始まった。ビーズはクッション性、反発性に加えて軽量性も考慮されなければならない。約150もの素材を試した結果、たどり着いたのがTPE製ビーズだった。TPEとは、Thermoplastic Elastomerのことで、日本語では「熱可塑(かそ)性エラストマー」と訳されるが、いったい何のことだかわからない。要は、ゴムのような性質を持った弾性体(力を加えると変形し、力を除くともとに戻る物体)ということのようだ。この素材を使って大きさについても試行錯誤が繰り返された。

こうして完成したのが直径3ミリほどのTPE製ビーズである。手のひらに乗せて握りしめると、指の間からピシュ、ピシュと勢いよく飛び出していく。反発性が非常に高いことがわかる。

弾け跳ぶTPE製のビーズがクッション性と反発性を両立させた/nike official

弾け跳ぶTPE製のビーズがクッション性と反発性を両立させた/nike official

このビーズをソール内にどう配置するかでも課題があったという。最初はソール全体に敷き詰めてみたが、体重をかけるとビーズが片寄ってしまう。何年もかけてテストを繰り返した結果、四つの小部屋に分けて配置するといいことがわかる。さらに、ヒール部分には厚め(全体の約50%)、つま先部分には薄め(同約20%)に配分することで、ランナーの体重移動がスムーズになるようにしたという。28cmサイズで片足約1万1000粒(25cmで約9000粒)のビーズが埋め込まれている。最適な数値を導き出すため、何度も実験が繰り返された。

砂浜に素足を置く「感覚」と反発力の「効果」の両立を目指し、こうした過程を経て誕生したナイキの新しいソールテクノロジーが「ジョイライド」だ。その初搭載モデルが「ナイキ ジョイライド ラン フライニット」というわけだ。10年におよぶチャレンジの結果、従来のナイキのシューズと同じ反発性がありながら、例えば「ナイキ エア ズーム ペガサス36」と比べてクッション性が14%も高いシューズが実現した。おそらくナイキ史上、もっとも足に“優しい”靴ではないか。

ビーズは四つの部屋に分けて配置されている/筆者撮影

ビーズは四つの部屋に分けて配置されている/筆者撮影

履いて実感「砂浜にいる感じ!」

この新製品の発表会が7月31日、ソウルで行われた。開催地の韓国をはじめ、日本、オーストラリア、インドなどアジアパシフィックエリアへ向けてのグローバルイベントで、各国のプレスやランナーなど約80人が参加した。このイベントで、私も発売前のジョイライドを実際に試す機会を得た。

見た目はかな〜りカッコいい。白いフライニットのアッパーに爽やかなミントグリーンのソールという組み合わせ。かかとの履き口を引き上げるためのオレンジのループがアクセントとして効いている。ただ私のようなガサツ者には、この薄い色だとすぐに汚れてしまわないかが心配だ。雨の日には履きたくないと思ってしまう。

最大の特徴は、ヒール部が半透明になっていて青と赤のビーズが見えるようになっていることだ。ちなみに、ビーズは色によって機能に違いがあるわけではなく、あくまでもデザイン上の配慮だという。

足を入れてみる。他のフライニットシューズと同様、包み込むようなフィット感で履き心地はいい。まず気づくのは、足裏のちょっとしたゴツゴツ感だ。ビーズが足裏を刺激して、健康サンダルのようでもある。この不思議な感触はなぜ起きるのだろう、と思っていったんシューズを脱いでみてわかった。インソール(中敷き)がないのである。足裏とビーズの間にあるものをできるだけ少なくしようということだろう。

ビーズの配分は、ヒールに厚く、つま先に薄くなっている/nike official

ビーズの配分は、ヒールに厚く、つま先に薄くなっている/nike official

その“効果”は、走り始めてさらにハッキリしてくる。ビーズが動いて、だんだん足裏の形状にフィットしてくるのだ。数百メートルも走ると最初のゴツゴツ感は消え、密着感が強まってくる。これはいままで体験したことのない不思議な感覚だ。そして、確かに砂浜の上にいる感じもする。面白い!

ナイキでは、このジョイライドによってランニングシューズの四つの柱が完成するという。以前、この連載でも紹介した「フリー」はSTRONG(鍛える)、「ズーム」はFAST(速く)、「リアクト」はLONG(長く)、「ジョイライド」はEASY(快適)を追求するシューズという位置づけだ。

ランニングシューズの四つの柱について説明する開発担当のウィリアム・モロスキー氏/筆者撮影

ランニングシューズの四つの柱について説明する開発担当のウィリアム・モロスキー氏/筆者撮影

中上級ランナーにとってジョイライドは、リカバリーシューズとして使うのがいいという。ナイキのラインナップでいうと、「ペガサス」でトレーニングをして、レースは「ヴェイパーフライ ネクスト%」で走る。ポイント練習の後やフルマラソン翌日のリカバリーなど、速さを気にしないランニングには「ジョイライド」が適している。脚の疲労回復に役立つという。

初級ランナーにとっては日常の練習からレースまで幅広い用途に使っていいと思う。とくに、これからランニングを始めようという人にとっては、ランニングを楽しむために設計されたジョイライドは最適といえるだろう。私は、この砂の上に立っている感覚がすっかり気に入ってしまった。ランニングだけでなく普段履きにも使いたい気分である。

8月15日に発売予定のナイキ ジョイライド ラン フライニット(1万8000円+税)/nike official

8月15日に発売予定のナイキ ジョイライド ラン フライニット(1万8000円+税)/nike official

PROFILE

山口一臣

1961年東京生まれ。ゴルフダイジェスト社を経て89年に朝日新聞社入社。週刊誌歴3誌27年。2005年11月から11年3月まで『週刊朝日』編集長。この間、テレビやラジオのコメンテーターなども務める。16年11月30日に朝日新聞社を退社。株式会社POWER NEWSを設立し、代表取締役。2010年のJALホノルルマラソン以来、フルマラソン20回完走! 自己ベストは3時間41分19秒(ネット)。

自分の走りを客観的に分析 スマートフットウェア「オルフェトラック」の実力

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