小川フミオのモーターカー

よく見ると味わい深い、ドイツらしい合理的なクルマ フォルクスワーゲン・パサート

機能主義的デザインはなかなか古びない。独フォルクスワーゲンが1973年に発表した初代「パサート」は、ドイツが得意とする(と考えられている)合理主義的デザインの見本のようなクルマだ。

(TOP写真:手前が2つのファストバック、奥にステーションワゴン)

ちょっとつまらないカタチといえないこともないけれど、でもよく見ると、なかなか味がある。このぐらいの広さの室内が欲しいだろうなあとか、使うひとのことを考えて設計していったのだろうと想像できる。ファンクショナリズムの見本のようなクルマだ。

VWパサード

日本にも4ドアファストバックが輸入されていた

自動車における合理主義とは、マーケットが何を求めているかを的確に把握して、それに合致する設計をすることである。4人の成人が楽に乗れて、走行性能にすぐれ、通勤、家族、旅行など目的に応じてボディバリエーションがある。それがパサートの一にして全なる目的だった。

スタイリングを手がけたのはジョルジェット・ジウジアーロが率いたイタルデザインというイタリアのデザイン会社である。シロッコ(74年)やゴルフ(75年)など、VWブランドを復活させたヒット作もみなイタルデザインの作品だ。

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1977年のフェイスリフトでヘッドランプやバンパーの形状が変わった

イタリアの会社が感覚的なデザインをするのは、それが期待されているから、とイタリア人デザイナーが言うのを聞いたことがある。ランボルギーニやアルファロメオやマセラティのデザインを手がけたジウジアーロが、機能一辺倒ともいえるパサートをデザインしたのだから、その言にも信ぴょう性が感じられるではないか。

パサートはエンジンを縦置きにした前輪駆動方式を採用していた。アウディ80(72年)とシャシーを共用していたからだ。アウディが縦置きにしたのは、重いエンジンを前輪の前にぶらさげるように置くことで、しっかり荷重をかけて駆動力を確保するという目的があったのではないだろうか。

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全長は4.2mしかなかった

1年後に世に出たシロッコではエンジンが横置きされていたから、フォルクスワーゲンの開発陣は、アウディと意見を異にしていたのだろう。むしろ軽快なハンドリングを重視していたのかもしれない。そういえばエンジン横置きの前輪駆動車を実用化させたのも、イタリア人(ダンテ・ジアコーザ)である。

パサートには、4ドアセダンあり2ドアセダンあり、テールゲートをもったファストバックあり、荷室の大きなステーションワゴンあり、と実用車に考えられるタイプがほぼ用意されていた。

日本にも輸入されていたが、セールスはかんばしくなかったはずだ。輸入車に期待される“華”がなかったからではないだろうか。でも、乗るひとを最優先したパッケージングを持つ、いわば基本のキから、フォルクスワーゲン(とプラットフォームを往々にして共用したアウディ)は企業として成長していったのである。

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初期型

(写真=Volkswagen AG提供)

【SPECS】
車名 フォクルスワーゲン・パサートTS(1974年)
全長×全幅×全高 4220×1605×1360mm
エンジン形式 1470cc直列4気筒SOHC
最高出力 85ps@5800rpm
最大トルク 12.3mkg@4000rpm

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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