THE ONE I LOVE

FNCYが選ぶ愛の5曲 三者三様、個性豊かなヒップホップ的解釈

FNCYが選ぶ愛の5曲 三者三様、個性豊かなヒップホップ的解釈

 

こんな時代だからこそ、愛を聴きませんか、語りませんか――。“愛”にまつわる楽曲を紹介する連載「THE ONE I LOVE」。今回は、FNCYがセレクトした5曲をご紹介。

FNCYは、気鋭のシンガー・ソングライターでありながら土岐麻子らの作詞作曲なども手がけるG.RINA、ヒップホップの“いなたさ”(ミュージシャンの間で「泥臭い」などの意味で使われる言葉)をスタイリッシュに再解釈するZEN-LA-ROCK、卓越したラップスキルで人気の鎮座DOPENESSによるスペシャルユニットだ。

そんな彼女たちが待望の1stアルバム『FNCY』をリリース。本作の特徴はJ-POP、シティーポップ、ファンク、ソウルなどを複雑に調合した独自のバランス感覚を誇るヒップホップサウンド。歌詞も、「夜」「夏」「ドライブ」「ファッション」「お金」「仲間」といったヒップホップではおなじみのトピックをFNCY的に解釈している。その三人に「愛にまつわる曲」をセレクトしてもらったところ、三者三様の個性が見えてきた。

 

<セレクト曲>
 1 FNCY「en」
 2 AKLO×JAY’ED「Different Man」
 3 NATE DOGG「I Got Love」
 4 William De Vaughn「Be Thankful for What You Got」
 5 山仁「君が世」

 

FNCYが選ぶ愛の5曲 三者三様、個性豊かなヒップホップ的解釈

 

■FNCY「en」

G.RINA:FNCYの「愛にまつわる曲」と言えば「en」だよね。この曲では、人生における巡り合いと、そこで生まれたen(縁)をいかに大切に育んでいくか、ということについて歌っています。今回のアルバムでは「夜」「ファッション」「お金」のような「ヒップホップでよく歌詞になるトピックをFNCY的に解釈する」というテーマがあって。

ZEN-LA-ROCK:今若いラッパーたちがよく歌っているのが「No New Friends」というトピック。これはどの業界にも言えることだと思うけど、ある程度名前が知られるようになると、怪しいやつらが寄ってくる。ヒップホップでは地元にいる昔ながらの友達と一緒に勝ち上がっていくことが多いから、そういう胡散(うさん)臭い人たちに向けて「No New Friends」と歌ってるわけです。でも俺、最近新しい友達がどんどんできるんですよ、「More New Friends」状態(笑)。若い頃は警戒心が強かったけど、大人になると対処方法もわかってくる。じゃあそれを曲にしてみようということになったんです。

鎮座DOPENESS:他者がいるからこそ感じることができる喜びもあるからね。もちろん若い子たちの気持ちもわかるんだけどさ。でも俺らはもう大人だし、新しい出会いが多くてハッピーなんだよね、実際。あと、この「en」は制作の過程にも愛があった。俺らは住んでる場所も、生活する時間帯も違うから、データのやりとりで曲作りすることが多いんだけど、この曲に関してはみんなで集まって作ったんだよね。それが楽しかった。

 

■AKLO×JAY’ED「Different Man」

G.RINA:この曲は単純に私たち三人が愛してるという理由で選びました。私はこのちょっとレイドバックした音色と遅めの四つ打ちビートがすごく好き。あとこの曲の世界観はFNCYとも通じると思うんですよ。ジャケットも大瀧詠一さんの『A LONG VACATION』を手がけた永井博さんが担当しているし、見ている場所が近い。

ZEN-LA-ROCK:俺ら、最近AKLO氏(アクロ:ヒップホップMC)と同じ現場になることが多くて。そこで「FNCYの中で『Different Man』がはやってる」という話をしたらすごく喜んでくれたんですよ。今度AKLO氏と同じイベントに出ることが決まってるんですけど、そのときにJAY’EDくんも連れてきてくれて、俺らのために「Different Man」を歌ってくれることになったんです。そういう経緯もあって、この曲はFNCYの三人が愛してる曲なんです。

 

■NATE DOGG「I Got Love」

ZEN-LA-ROCK:『愛にまつわる曲』って言われて、最初に思い出した曲ですね。あとこれならリナさんや鎮くんとは被らないだろうと思って。ネイト・ドッグはアメリカの西海岸を拠点に活動していたシンガー。いとこのスヌープ・ドッグと相棒のウォーレン・Gとのユニット「213」や、エミネムや50セントをはじめとするいろんなラッパーの曲にも客演している本当に大好きなアーティストですけれども、残念ながら2011年に亡くなってしまいました。

「I Got Love」は彼がソロ名義で2001年に出した曲。西海岸のヒップホップは、この曲もそうですが、メロディーが奇麗なんですよ。カリフォルニアのひっろい道路をデッカいコンバーティブルのアメ車でゆったり流してる雰囲気がぴったり合いますね。でもこの地域はギャングスタ・ラップ(暴力的な日常をテーマにするなど、過激で攻撃性の高いラップ)発祥の地で、治安の悪いエリアも多くあって、ネイト・ドッグ自身もめちゃくちゃギャングな雰囲気なんですよ。なのにそんなやつが愛について歌ってるというコントラストが面白い。単純に曲が良いから選んだっていうのもあるけど、背景にあるものも踏まえるとさらに面白く聴ける曲だと思います。

 

■William De Vaughn「Be Thankful for What You Got」

G.RINA:「Be Thankful for What You Got」は1974年に発表された曲。(Massive AttackやYO LA TENGO、Omarら)いろんな人がカバーしていて、私は90年代にリバイバルしたタイミングで知りました。この曲はいわゆるラブソングではありません。歌詞では、「キャデラックのような高級車を持ってなくても自分らしく堂々と生きていけばいい」ということを繰り返し歌っているんです。つまり「自分を肯定する愛=自己愛(セルフ・ラブ)」を歌った曲。彼はこの曲を成功してから書いたんじゃなくて、アルバイトで音楽活動をしていたときに書いているんです。きっと自分や自分の周りの人のことを歌っていたんだと思う。

人種的あるいは性的マイノリティーであるとか、たとえ自分が人と違う部分があったとしても、無理して周りに合わせなくていいし、自分の思っていることを信じて生きればいい。自己愛を持つにはどうすれば良いか、ということについてシンプルな言葉で歌っているんです。最近ならそういうテーマの曲も多いけど、70年代にすでにこういう曲があったんだなあって。あとこの曲のテーマは私たちのアルバムのリード曲「FNCY CLOTHES」にも通じるところがあるのでセレクトしました。

 

■山仁「君が世」

鎮座DOPENESS:小川美潮の「私は宝」という曲を紹介したかったんだけど、Spotifyでは配信されてないのでこの曲を。山仁の「君が世」です。僕は10代の頃から山仁というラッパーが大好きなんですよ。この曲は「KIMIGAYO」というアルバムに収録されています。2012年にリリースされたんですが、聴いたのはちょっと時間が経ってからですね。とてつもない作品であることはジャケットから匂ってきてたし、うわさにもなってた。だからちゃんと心の準備をしてから聴いたんです。(実際に聴いてみて)当然ぶっ飛びました。内容を口で説明するようなやぼなことはしないので、とにかく今すぐに聴いてもらいたいですね。僕はありのままの相手を受け入れることが愛だと思う。自分の中にある色眼鏡を徹底的に排除して相手と向き合うこと、決めつけないこと。この「君が世」はむき出しです。こういう状態になってこそ愛は生まれると思うんです。

 

■プレイリスト

 

■FNCY最新アルバム『FNCY』

■Profile
FNCY
土岐麻子らの作詞作曲なども手がける気鋭のシンガー・ソングライターG.RINA、ヒップホップのいなたさをスタイリッシュに再解釈するZEN-LA-ROCK、卓越したラップスキルで人気の鎮座DOPENESSによるスペシャルユニット。ZEN-LA-ROCKの2017年作『HEAVEN』に収録された「SEVENTH HEAVEN feat.鎮座DOPENESS & G.RINA」での共演をきっかけに、2018年夏結成。先行配信楽曲「Train」を含む配信シングル5作、7インチ・シングル『AOI夜/silky』の発表を経て、7月10日にユニット名を冠したファースト・アルバム『FNCY』を発表した。

<関連リンク>
FNCY オフィシャルサイト
http://fncy.tokyo/

FNCY(ZEN-LA-ROCK / G.RINA / 鎮座DOPENESS)| Twitter
https://twitter.com/fncy_official

FNCY ファンシー | EVIL LINE RECORDS
http://evilline.com/fncy/

(企画制作・たしざん、ライター・宮崎敬太)

<40>マーヴィン・ゲイ、細野晴臣、Kan Sano……ちょっとビターな10の物語を楽しむ大人のプレイリスト

トップへ戻る

はびこるヘイトに警鐘鳴らす 思い出野郎Aチーム・高橋一が選ぶ愛の5曲

RECOMMENDおすすめの記事