朝日新聞ファッションニュース

黒で攻める、創作の新境地 20年春夏、パリ・メンズコレクションの日本勢

6月に開催された2020年春夏のパリ・メンズコレクションでは、公式スケジュールでランウェーショーを催した全60ブランドのうち13ブランドが日本勢だった。共通するのは、巨大資本グループに属さず、流行に乗ることよりも新たな創作を重視する姿勢だ。

余計なもの排除 目立つ新鮮さ

今回のパリ・メンズでの大きな驚きの一つは、過去数シーズンは巧みな色づかいだったアンダーカバー(TOP画像)が、黒一色のコレクションを披露したことだ。「余計なものは排除し、エレガンスとその内に秘められた狂気を表現した」という。米写真家シンディ・シャーマンの作品をあしらう手法にも芸術性を感じた。

タカヒロミヤシタザソロイスト.

タカヒロミヤシタザソロイスト.

黒は、コムデギャルソンとヨウジヤマモトがパリに進出した80年代初頭から日本の“お家芸”で、シルエットとデザインのみで勝負する姿勢がうかがえる。今回はタカヒロミヤシタザソロイスト.もモノトーン。タイトなシルエットは、ビッグサイズが流行するなかで新鮮に映った。広報担当は「欧州のバイヤーからの評判も上々だ」。

ファセッタズム

ファセッタズム

黒と白に焦点を当てたのはファセッタズムも同じで、得意のジェンダーレスな雰囲気の服を見せた。演出も多くのブランドが外注するなか自分たちで担い、モデルに一般の人たちも起用。デザイナーの落合宏理(ひろみち)は「服そのものに目を向けてもらえるように考えた」と話した。

ヨウジヤマモト

ヨウジヤマモト

一方、ヨウジヤマモトはブランドの根幹ともいえる黒に、ビビッドな色を加えた。「子どもたちが美しいものを受け継ぐ」という願いがテーマだという。

鮮やかな配色も

サカイ

サカイ

もちろん、春夏らしい彩りの服も印象に残った。

サカイは今回、一見サイズ違いの重ね着に見えるが、実は一体構造のシャツなどを発表。ブランドが掲げる「ハイブリッド」を新解釈したといい、そのうえで涼しげな色を加えた。

ジュンヤ・ワタナベ

ジュンヤ・ワタナベ

爽やかな日常着のコレクションはジュンヤ・ワタナベ。レディースはデザインのきいたモードな服が多いが、男性服はリアルクローズ。今回は「何にもとらわれない自由な男性」をテーマに、新聞をプリントしたジャケットなど、日常の生活で目にするものを取り入れた。

オム・プリッセ・イッセイミヤケ

オム・プリッセ・イッセイミヤケ

プリーツの服の男性ライン、オム・プリッセ・イッセイミヤケは屋外の広場が会場。テーマは「アフリカン・リズム」で、鮮やかな色の服のモデルたちが新緑の木々の下で躍動した。

メゾンミハラヤスヒロ

メゾンミハラヤスヒロ

メゾンミハラヤスヒロは、人工知能(AI)などの技術革新を背景に「ヒューマンエラー」を肯定的に解釈。微妙にズレた丈のジャケットなどを合わせて、トータルではバランスよく見せる試み。三原康裕は「人間の駄目な部分を愛せなくなりつつある現代への警鐘」と語る。

フミト・ガンリュウ

フミト・ガンリュウ

グラフィックなどを使った大胆な配色で目を引いたのはフミト・ガンリュウ。主なモチーフは木や海など自然にまつわるもので、「監視社会からのエスケープ」がテーマだ。

ホワイトマウンテニアリング

ホワイトマウンテニアリング

ホワイトマウンテニアリングはカムフラージュにレオパードという“禁じ手”ともとれる組み合わせなど、新たな層を取り込む「攻め」と、既存のファンを意識した「守り」の両方のスタイルを見せた。パリの公式スケジュールでのショーは8度目。デザイナーの相澤陽介は「3年前と比べて海外の売り上げは約3倍に成長した。現地のPRやセールス担当と緊密に連絡を取ってトライ&エラーを重ね続けた結果だ」。その表情は自信に満ちていた。(後藤洋平)

 <写真は大原広和氏とRunway-Photographie撮影>

アートとコラボ、洗練の形 20年春夏、パリ・メンズコレクション

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