マッキー牧元 うまいはエロい

暑い日に無性に食べたくなるタイ料理 幸福な辛さを味わえる「ソムタムダー東京」(代々木)

蒸し暑い日が続くと、暑い国の料理が食べたくなる。言うなれば東南アジアやインド料理である。中でも都内にはたくさんあるのは、タイ料理店だろう。

大抵のタイの郷土料理は、タイ全土の料理を満遍なくそろえているが、こんな日が続くと辛い料理が食べたい。なら選ぶのは、タイ東北地方の料理「イサーン料理」である。

タイ料理は、辛み、甘み、塩味、うまみ、酸味の五つが複雑に混じり合っているが、イサーン料理は、その中でも特に辛みを重んじる。代表的な料理は、青パパイアサラダの「ソムタム」や、豚ひき肉を各種ハーブと合わせて辛く味付けをした、「ラープムー」などである。

さて、蒸し暑い日にこれらを無性に食べたくなり、昼から手軽に食べようと思い、僕は代々木の「ソムタムダー東京」に向かう。なぜならこの店は、イサーン料理を中心にしているからである。本国のバンコクのほかNYや北京、ホーチミンにも店があり、NY店はミシュラン一つ星をとっている。

 

暑い日に無性に食べたくなるタイ料理 幸福な辛さを味わえる「ソムタムダー東京」(代々木)

店内はカフェのようにモダンな内装で、可愛い中折れ帽を被った店員たちが気軽に応対してくれて、居心地がいい。この軽やかな内装と、飛び切りの辛さというミスマッチがいい。

必ず頼むのは、ランチセットの1500円である。先に挙げた、ソムタムとラープ、それにイサーン風のフライドチキン「サポークガイトートダー」というおかずが3種類つき、そこに蒸したもち米「カオニャオ」が添えられる。

昼に、この料理とカオニャオのセットというのが、都内の店ではなかなかない。そこもこの店に寄ってしまう理由になっている。これだけでも十分なのだが、今日はぜいたくをして、辛く酸っぱいスープも頼もう。

「トムセープ グラドゥックオン」(豚肉の軟骨入りイサーンスパイシースープ)である。軟骨とその周りの肉、フクロタケ、しめじなどが入れられたスープで、この暑さを吹っ飛ばしてくれるに違いない。

 

暑い日に無性に食べたくなるタイ料理 幸福な辛さを味わえる「ソムタムダー東京」(代々木)

さあ運ばれてきた。まずは現地と同じ辛さにした「ソムタム」(辛みを弱めることも、もっと辛くすることもできる)からいこう。

辛い。かなり辛い。だがこの舌へのキックこそが、タイ料理の序章である。そしてスープを飲めば、これまた酸っぱさの奥から辛さがやってきて、口腔(こうくう)内を蹴飛ばす。

 

暑い日に無性に食べたくなるタイ料理 幸福な辛さを味わえる「ソムタムダー東京」(代々木)

ここで「カオニャオ」を登場させる。少し食べては辛さを緩和し、また次の料理に向かうのである。

隣の客は、右手にスプーン、左手にフォークを持ち、上品に食べていたが、僕がタイで教わったお作法は違う。竹筒に入れられたカオニャオを、親指、人さし指、中指でつまみ、適当な大きさにしたら、おかずへ置き、そのまま親指でおかずを引き寄せ、抱き合わせて食べる。

 

暑い日に無性に食べたくなるタイ料理 幸福な辛さを味わえる「ソムタムダー東京」(代々木)

これが本当に正しいのかはわからない。しかしラープも、ソムタムも、崩したトートダーも、こうやって食べるとめっぽううまい。

なんでもイサーンでは、大勢で食卓を囲み、たくさん並べたおかずをみんなでつつき合いながら、カオニャオと合わせて食べるのだという。

もちろんスプーンとフォークでもいい。でもこうして食べる方が、手からの感覚が脳に伝わって、コーフン度が高くなる。やはり手の味というものはある。

さて、カオニャオはこうして食べにいくのだが、最後は日本人特有の嗜好(しこう)でいく。スープにカオニャオを入れて、スープ茶漬けにするのである。

小鉢にスープをとり分け、カオニャオを入れ、ラープやソムタムも少し入れ、搔(か)き込む。

できればここで箸をもらい、おわんに口をつけて、ザブザブザブッといく。

ハハハ。この幸せ、やめられませんよ。

暑い日に無性に食べたくなるタイ料理 幸福な辛さを味わえる「ソムタムダー東京」(代々木)

 

ソムタムダー東京

【店舗情報】
東京都渋谷区代々木1-58-10 松井ビル 1F
JR、都営大江戸線「代々木」駅より徒歩2分、小田急小田原線「南新宿」駅より徒歩3分
03-3379-5379
営業時間:11:30~15:00/17:00~23:00
定休日:無休
公式サイト:http://somtumdertokyo.com/

PROFILE

マッキー牧元

1955年東京生まれ。立教大学卒。年間幅広く、全国および世界中で600食近くを食べ歩き、数多くの雑誌、ウェブに連載、テレビ、ラジオに出演。日々食の向こう側にいる職人と生産者を見据える。著書に『東京・食のお作法』(文藝春秋)『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)。市民講座も多数。鍋奉行協会顧問でもある。

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