キャンピングカーで行こう!

日本バーベキュー協会会長に聞く! キャンピングカーとBBQの意外な関係(上)

キャンピングカーで出かけた先で、バーベキューをする方も多いと思います。たまたま女房がバーベキューインストラクターになったことから始まった、我が家とBBQのご縁。知れば知るほど奥深く、キャンピングカーカルチャーに通じるところも多いことがわかりました。そこでぜひお会いしてお話ししてみたい!とお願いしたのが、日本バーベキュー協会会長、下城民夫さん。キャンピングカーとBBQについて、肉を焼きながら話し合った内容を、今回から3回にわたってお届けしたいと思います。

日本とアメリカのBBQは別物?

渡部「おかげさまで、かみさんがインストラクターに認定していただきまして、急激に我が家にBBQの道具も、BBQをする機会も増えてきまして」

下城「それはそれは。楽しいでしょう?」

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下城会長(右)と筆者。全身黒のタイトな装いに黒のカウボーイハットで決めた会長はさすがにBBQ世界大会に出場する日本代表だけのことはある

渡部「そうなんです。出来上がる料理を見ると、僕らが今までやってきたBBQとはかなり違う。彼女は『これがアメリカンBBQなのよ』と自慢げですが(笑)。日本のBBQとアメリカのBBQ、どう違うんでしょうか?」

下城「いろいろと違いますが、端的に言って、パーティーと宴会の違いかな、と思います」

渡部「パーティーと宴会。違うような、違わないような……」

下城「人が集まって飲食を共にするという点では、確かに似ています。日本人にはなかなかパーティーの機会がありませんし、いわゆる宴会をパーティーと混同している人も多い。じゃあどう違うのかといえば、パーティーには必ず、ホストとゲストがいる、ということです。宴会には、幹事はいるかもしれないけれど、欧米で言うホストとは役割が違う」

渡部「確かに、幹事というのは単なるお世話係ですよね」

下城「アメリカのBBQはパーティーです。必ずホストがいて、もてなす相手=ゲストがいる。その相手というのは、家族、友人、同僚。それに知らない人が集うこともある。ホストはその日のメニューを決め、段取りを決め、参加している人たちが楽しめているかどうか、喜んでもらえているかどうか、目配りをするんです」

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対談取材BBQは梅雨明け間近の暑い日に。撮影は日本RV協会134番目のRVパーク・ヘリテイジ美の山にて

渡部仲間がわーっと集まって、火をおこして肉や野菜を焼いて食べるだけ、じゃないんですね」

下城「そうなんです。使う肉も違うし道具も違う。まったく別物です。日本で広く行われているBBQは、焼き肉なんです。炭火の上に網を置いて、薄切りの肉や野菜を焼きながら食べる。アメリカンBBQはそうはいきません。ひとつの肉が3kg、4kg。大きいものになると9kgの塊を焼きますから」

渡部「9kgですか!」

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アメリカンBBQの仕込み風景。手前がポークバット(豚肩ロース。今回は時間が短いため、小さい塊をチョイス)、奥がポークリブ(豚の肋骨部分)。細かな脂肪や筋膜など余分な部位を丹念に切り取ってゆく

下城「正確に言うなら、アメリカンBBQにも新旧あるんです。アメリカのホームドラマや映画で、裏庭やポーチにBBQグリルがあって、休みの日になるとお父さんがステーキやハンバーグのパテを焼いて家族にふるまうシーンがありますよね。あれは1960年代以降に定着した、新しいBBQスタイルです。なぜ60年代を境に変わったかというと、これは食肉流通の変遷にもかかわっているんです」

渡部「流通の事情ですか」

下城「ステーキハウスで出されるお肉はとても柔らかいですよね。日本人の大好きなロース、アメリカではサーロインとかリブアイロールなどと呼ばれますが、これらの部位はあんまり焼かなくても柔らかいんです。レアのステーキなんて、表面を焼いただけでしょ?」

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日本にはまだまだ知られていない、本格的アメリカンBBQについて語ってくださった、日本バーベキュー協会・下城民夫会長

渡部「確かにそうですね」

下城「でも、そんな部位は1頭の牛からほんの少ししかとれない。1頭を解体すると、そのほかの部位がたくさん出るんです。例えば牛の肩から胸にかけてのブリスケットは7kgから9kgもありますが、ステーキには適さない。おいしく食べるには、低温で長時間かけてじっくりと焼く必要があるんです。60年代以前までは、そうした部位をいかにおいしく食べるか、それがBBQの技術であり文化だったんです。これが大きな塊肉を焼く、アメリカンBBQのもともとの姿です。新しいスタイルが出てきたのは、ステーキ用の肉が小分けに流通される時代になったからなんです」

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整形(トリミング)が済んだら、下味を。肉の乾燥を防ぐため、オリーブオイルやラブ(RUB)と呼ばれるスパイスをすり込む。この日使用したのは、協会オリジナルのRUBスパイス

多彩な道具は「楽をするため」

渡部「仕事柄、アメリカにはよく行きますが、アメリカ人のBBQにかける情熱は並々ならぬものがあるなあ、と思いますね。アメリカにはキャンピングカーや用品を売っている大手チェーンがあるんです。ちょっと大きな町には必ず1軒はあるような店なんですが、そこへ行くと、かならず一角、それもかなりのボリュームでBBQ用品売り場があるんですよね」

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この日使用したグリルはアメリカンBBQの定番スタイル。アメリカ・ウェーバー社のもので、直径約57㎝ある

下城「そうですよね。BBQのための道具は実に多彩で、ぱっと見ただけでは何に使うのか想像もつかないようなものもありますよ」

渡部「私たちが想像もしないような道具っていったら、どんなものがありますか?」

下城「例えば、アメリカに行くようになった最初のころ、押しピン(画びょう)に取っ手をつけたようなものをいくつも見て、疑問に思いましたね」

渡部「何だったんですか?」

下城「BBQで一本丸焼きにしたトウモロコシを食べるためのピンでした。根本と先端にピンを差し込んで、取っ手を持てば熱くない、っていうわけです。その取っ手のデザインもいろいろあってね。楽しいんですよ」

渡部トウモロコシを食べるためだけの道具、ってことですね」

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アメリカンBBQは肉だけじゃない! サーモンフィレを水に浸した杉板にのせ、板ごとグリルへ。見栄えが美しいだけでなく、杉の木のスモークがかかって、ふっくら極上の仕上がりに!

下城「ほかにもいろいろありますよ。ステーキに焼き目を付けるための鉄板とか。ステーキの表面に斜めに焼き色がついているとおいしそうでしょう? 料理というのはAppearance(アピアランス)=見た目も大事ですから。焼き目のために波板状になった鉄板で、グリルグレートといいます。それに、しっかり焼き目をつけるためには肉を押し付ける必要もあるので、肉に重しをするミートプレッシャーなんていうものもありますね」

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BBQグリルでステーキを焼く。肉の下にあるのが、美しい焼き目をつけるための鉄板=グリルグレート。上から肉を押さえつけているのが、ミートプレッシャー

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グリルグレートのおかげでみごとな焼き目がついたステーキ。外はカリッと、中はジューシーな焼き加減!

渡部「そこまで外見にこだわりますか」

下城「見た目だけじゃありませんよ。例えば7kgもの塊肉になると、中のほうまで調味料の味がしみこみにくいですよね。そのためにインジェクション(注射器)でビーフストック(牛のだし)やスパイスなどを注入する、そんな道具もあります」

渡部「さきほど肉の内部の温度を測ってらっしゃいましたよね」

下城「そうです。焼き具合の確認と、それからホストとしてはゲストを健康被害から守る義務もあります。食中毒などの事故は絶対に避けなければなりませんから。手元で温度を測る肉芯温度計はもちろん、温度計を差しっぱなしにして、ブルートゥースやWi-Fiでデータを手元のスマホに飛ばしてアプリで管理するものまであります」

渡部「つきっきりでなくてもいい、ってことですね」

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これが話題のブルートゥース式温度計。ひとつに6本の温度計が接続されていて、肉に刺したまま調理可能。グリルを開け閉めせずに温度が計測できて、手元のスマホで管理できる

下城「今回私が持ち込んだDavy Crockettというグリルはストーブなどに使うペレットを燃料にするタイプで、まだ日本に正式上陸していません。火おこしも不要で、ごく少量のペレットを自動で足しながら、グリル自身が温度管理してくれるんです。内部温度も肉芯温度も計測できて、データはすべてスマホに飛んでくる。設定温度に達したらお知らせもしてくれます」

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Davy Crockettに投入されたポークバット。これから4~5時間かけてじっくりと温度管理しながら焼き上げる

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ウェーバーのグリルにはポークリブを投入。複数枚を立てて焼けるように、専用のラックがある!

渡部「至れり尽くせりですね。でもそんなところが、キャンピングカーとすごく似ていると僕は思うんです。日常の便利な暮らしを、そのまんま、外へ持ち出すのがキャンピングカーですから」

下城「そうですね。私たち日本バーベキュー協会では「スマートBBQ」というのを提唱しているんです。スマートとは「賢い」ということ。BBQはレジャーであって、何かの修行でも苦行でもない。道具を使うことで「より安全に」、しかも「楽ができる」なら使うべきです。アメリカのBBQ道具がいろいろあるのも、みんなが楽できるからです。ホストにもゲストにも、ひいては、環境にとっても優しいBBQができる。そしてそれがカッコイイ、という価値観があるから、なんです」

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実はアメリカンBBQは野菜がウマい! 炭火でじっくり焼くことで素材の味をまるごと閉じ込め、ジューシーな仕上がりに。これを食べて、苦手なシイタケやピーマンを克服した子どももいるとか

渡部「キャンピングカーも同じですね。テントキャンプもそれはそれで楽しい。けれど、天候のいい日ばかりじゃないし、設営や撤収には時間も体力も必要になる。電気・ガス・水道の生活インフラを旅先まで持ち出せば、楽じゃないかと。それがキャンピングカーの本質だと思うんです」

下城「実際、キャンピングカーとBBQの親和性はかなり高いと思いますね。どちらも家の外に出て楽しむもの。都会でも、田舎でも楽しめるものですしね」

渡部「道具ありきで遊べるところも似ていますね」

下城「そろそろ最初のお肉が焼けるころですから、続きは食べながらでいかがですか?」

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焼きあがったポークバット(豚の肩ロースの塊肉)は熱いうちに手で割く! 繊維に沿って割いたときと、ナイフでカットしたときとでは食感・味とも全く違うからおもしろい。焼き立ての肉を手作業で割けるほどの耐熱グローブも便利な道具だ

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手で割いたポークはプルド(割いた)ポークと呼ばれる。割いた肉はBBQソースにからめて、野菜やチーズと共にバンズに挟めば「プルドポークバーガー」に

いかがでしたか? なぜいきなりBBQの話を?と思われたかもしれません。しかし、知れば知るほど、私たちが慣れ親しんだBBQとは違うものであり、キャンピングカーの文化や価値観に近いものがありました。これからのレジャーを考える上で、非常に参考になるお話がまだまだ続きます。次回以降を、どうぞお楽しみに!

(写真:野呂美帆)

PROFILE

渡部竜生

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)がある。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫6匹とヨメさんひとり。

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