原田泰造×コトブキツカサの「深掘り映画トーク」

映画じゃないと成立しない、エルトン・ジョンの半生『ロケットマン』

ネプチューンの原田泰造さんと、映画パーソナリティーのコトブキツカサさん。映画が大好きなオトナのお二人が、新作や印象に残る名作について自由にトークする対談企画です。今回は、8月23日公開の『ロケットマン』について熱く語ります。

©2018Paramount Pictures. All rights reserved.

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<ストーリー>
グラミー賞を5度受賞するなど、数々の名曲を生み出し続ける世界的なアーティスト、エルトン・ジョン。イギリス郊外の田舎町で生まれ育ったエルトンは、両親の愛を得られず、音楽の世界に没頭。やがて作詞家バーニー・トーピンとの運命的な出会いを果たし、成功の道を駆け上がっていくが……。
華々しい活躍と、その裏にあったさまざまなトラブルや悲哀を、エルトンの曲に合わせて描くミュージック・エンターテインメント大作。

 

原田 これはすごく観(み)たかった作品なんだよね。エルトン・ジョンの半生を描くということにも興味あったし、監督が『ボヘミアン・ラプソディ』にも関わっていたデクスター・フレッチャーということもあって、あの感動をもう一度味わわせてくれるんじゃないかと思ったんだけど、観終わってみると『ボヘミアン』とはぜんぜん別物だった。もちろん感動したんだけど、『ロケットマン』は、なによりもミュージカル映画なんだよね。

コトブキ そのミュージカル・シーンがどれも素晴らしいですよね。それぞれ映像にも工夫が凝らしてあって、エルトンの心情を描いていて。

©2018Paramount Pictures. All rights reserved.

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原田 冒頭に、幼少の頃のエルトンの家族たちが、それぞれ違った形の愛を歌うミュージカル・シーンがあって、もうこれだけで、この映画は名作だと思った。洗練された舞台を観てるみたいな感覚になるし、曲もすごく良かった。

コトブキ あそこは『I Want Love』という曲ですね。この映画はエルトンがいままで発表してきた楽曲を、年代関係なくシーンごとにアレンジしてはめていったみたいですね。

原田 そうなんだ。曲がすごくハマってるから、この映画用に作られたものなのかと思ったよ。移動遊園地でダンスするシーンも目が覚めるような盛り上がりだったし、アメリカ初ライブで披露した『クロコダイル・ロック』 も興奮した。これ、自分だけかもしれないけど。大人になるにつれてミュージカル面白いって思うようになったんだよね。

コトブキ 僕も、最近「好きな映画のジャンルは」って聞かれたら「音楽映画」って答えるようになったんですよ。ミュージカル映画もそうですし、音楽がフィーチャーされてる映画とか、アーティストを掘り下げた音楽ドキュメンタリーとか、その辺を全部ひっくるめて「音楽映画」っていう風に言ってるんですけど。

原田 やっぱりこれがただのエルトン・ジョンの伝記映画ですって言ったら、ちょっと間口が狭くなるかもしれないけど、これだけミュージカルとしてレベルが高くて、エンターテインメント性が高いから、すごい映画だと思うよ。エルトン・ジョンを知らなくても楽しめるしね。

原田泰造さん

コトブキ 僕は、この作品を『ボヘミアン』と比べない方がいいなと思って、それを前提として観たんですよ。泰造さんがおっしゃるとおり、ミュージカルという部分も大きな違いですけど、やっぱり伝記モノとして、エルトンがまだ生きているうちに作られているというのがポイントですよね。もっといえば、エルトン自身が製作総指揮にクレジットされてるんですよ。これはやっぱり影響力があるじゃないですか。

原田 確かに、製作となると、エルトンの意見がガンガン入ってそうだよね。

コトブキ エルトンもアーティストですから、ナルシシストな部分もありますし、自分をカッコよく描きたいと思うはずですよ。そのあたりのサジ加減に注目してたんですけど、もう最初からセラピーのシーンで始まるじゃないですか。そこで、ゲイというセクシュアリティーとか、ドラッグに溺れた日々を告白していくんですけど、もうオープニングから暴き出すんだと思って、不安が吹き飛びましたよね。この映画はとことんいくな、と。

原田 派手な衣装を着たままセラピーに参加してるから、ちょっと滑稽だし、逆に悲哀感も出てるんだよね。話が進んでいくごとに告白も赤裸々になっていって、だんだん衣装も脱いで、化粧も剝げてくる。素の自分になっていくという演出だよね。

コトブキ エルトン・ジョンと言えば派手な衣装なわけじゃないですか。でもなんであんな格好しなきゃいけなかったかっていうことが、映画を観ていくとわかるんですよね。

コトブキツカサさん

原田 その衣装も含めて、再現度も完璧だったよね。なによりも、この主演のタロン・エガートンがすごい。演技も達者だし、歌も踊りもめちゃくちゃ上手(うま)い 。それに太ったり、髪も薄くなったりして、ちゃんと老けていくのも圧巻だった。

コトブキ タロン・エガートンは『キングスマン』の印象が強いから、もっとやんちゃなイメージだったんですけど、繊細な演技を見せますよね。そういえば『キングスマン ゴールデンサークル』で、タロンとエルトンは共演しています。

原田 そうだ、そうだ。タロンとエルトンが、最後は一緒に戦うんだよね。エルトンはあの派手な衣装で大立ち回りしてて、面白かったよね。

コトブキ そんなタロンが、エルトンを演じるっていうのは運命的じゃないですか。普通に考えたら、エルトン・ジョンが製作する映画で、エルトン役を演じるというのはプレッシャー半端ないですよ。

原田 逆にこの映画でふたりが初対面だったら、キャスティングが難航してたかもね。お互いに知ってるから、ゴーサインが出せたというか。

コトブキ 『Ray』っていう映画があったじゃないですか。ジェイミー・フォックスがレイ・チャールズを演じてるんですけど、あれも制作時にレイ本人がオーディションに立ち会ってるんですよね。ジェイミー・フォックスが歌ってみて、レイ・チャールズが親指立てるみたいな映像が残ってて。

原田 本人が審査する、本人役のオーディションというのは、緊張するだろうね。 

原田泰造×コトブキツカサ

コトブキ それにこれは伝記映画だから、エルトン以外の人物もぜんぶ実在するわけじゃないですか。だから役者さんはみんなプレッシャーあったと思いますよ。このジョン・リードというマネジャーもちょっと悪徳な人物なんですけど、これは製作総指揮エルトン・ジョンの気持ちが入ってると思いますよ。イヤなやつだったから、イヤらしく描いてくれ、と。

原田  確かにイヤなやつだった(笑)。でも、最初はエルトンとジョン・リードは恋愛関係にあったんだよね。この監督がすごいと思うのは、あの恋愛をすごくきれいに描いてるんだよね。最初は気持ちが通っていたところをちゃんと描いてるから、後からすれ違ったり、揉(も)めたりするときに深みが出てくるんだよね。

コトブキ だからジョン・リード側にも言い分があるというのもわかりますよね。だってエルトン・ジョンがめちゃくちゃで破天荒なんだもん(笑)。ジョン・リードが物語的に一番の悪役になるけど、それだけじゃない深みのある人物像になってましたよ。

原田 そうなってくると、エルトンがどこまで口を出してるのかが気になるよね。

コトブキ 昔はプレスリーに憧れてたとか、エルトン・ジョンの「ジョン」はジョン・レノンからとったとか そういうエピソードは、たぶん本人から出てきたものですよね。これが20〜30年前の、エルトンがもっとバリバリの頃だったら出せないような話もそうとう入ってますし。

原田 エルトンも、もうぜんぶ出しちゃおうって境地に達したんだろうね。年齢を重ねて、器が大きくなったというか。

原田泰造さん

コトブキ 自分のセクシュアリティーについて、お母さんに電話で告白するシーンがあるじゃないですか。カミングアウトと言うか。あのくだりもリアルに感じたし、切なかったですね。

原田 勇気を出して告げるんだけど、「昔から知ってたわ」みたいな対応なんだよね。

コトブキ その後に母親が話すひとことが、重いというか、つらいんですよね……。イギリスって、伝統的に階級社会なこともあって、LGBTの方々が生きにくかったみたいなんですよ。その時代背景を踏まえると、もっと考えさせられる。

原田 でもエルトンってさ、イギリス王室からサーの称号をもらったよね。

コトブキ もらってますね。だからすごいですよね。自分を認めさせたというか、社会や文化を変えた。

原田 そういうところが海外ってすごいなって思うの。これだけドラッグ漬けになったり、トラブル続きで人生のどん底まで行ったりするけど、復活して、またちゃんとやり直せば、王室も認めるってことだよね。アーティスト自身が強いっていうのもあるけど、ファンや社会がそれを認めるっていう文化があるのかもしれない。

コトブキ 『27 CLUB』というドキュメンタリー作品があるんですけど、天才的なアーティストはだいたい27歳で死ぬという法則というか、都市伝説についての話なんですよ。例えばエイミー・ワインハウス、ジャニス・ジョプリン、カート・コバーン、ジミヘン、ジム・モリソン……みんな27歳で死んでるんですよ。

原田 そうなんだ。それだけ重なると、偶然では表せないものなのかもね。

コトブキ 原因はドラッグとかいろいろあるんですけど、やっぱりショービジネスというのはアーティストを追い込んでしまう側面がある。エルトンも危なかったと思うんですけど、そこを乗り越えてきたというのが称賛する部分なんでしょうね。

原田 ショービジネスの明暗やトップの孤独みたいなことは、いままでいろんな映画やドキュメンタリーで何度も見てきたパターンではあるんだよね。それはアーティストたち自身もよくわかってるはずなんだけど、やっぱり同じルートをたどってしまう。でも、エルトンの場合は実際立ち直ったわけだから、いまどん底にいる人がこの映画を観ると勇気づけられると思う。

コトブキ どん底というか、水中に落ちていってましたからね。あのシーンは象徴的だし、美しかったな。

原田 ドラッグで意識を失ってプールに落ちたら、水の底に子供の頃の自分がいるんだよね。悲劇的だけど幻想的で、そのときのエルトンの置かれた状況や心情まで伝わってくるよね。そのあとに病院に担ぎ込まれるシーンもミュージカル風になってるんだけど、そこもすごかった。この作品、舞台だったらこんな風になるんだろうな、なんて思いながら見てたんだけど、もう途中からこれは映画じゃないと成立しないなって思ったよ。

©2018Paramount Pictures. All rights reserved.

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コトブキ 最後まで観終わると、やっぱりエルトンは『ロケットマン』なんだなって思いますよね。あれだけぶっ飛んだエルトンの生きざまを映画にするなら、『ロケットマン』しかないですよ。

原田 そうか、『ユア・ソング』じゃないんだね。

コトブキ 知名度でいったら『ユア・ソング』だし、あの曲をテーマにした少し甘めのストーリーでも成立するんですよ。もちろん、今回の作品にも『ユア・ソング』的なテーマは入ってますよ。でも、真実はそんな甘くないんだよと。エルトンの人生をぜんぶ描き切って、それを象徴するタイトルはやっぱり『ロケットマン』なんでしょうね。

(文・大谷弦、写真・稲垣純也)

 

ロケットマン

監督:デクスター・フレッチャー
出演:タロン・エガートン ジェイミー・ベル リチャード・マッデン ブライス・ダラス・ハワード
配給:東和ピクチャーズ
https://rocketman.jp/

全国ロードショー公開中

PROFILE

  • 原田泰造

    1970年、東京都出身。主な出演作に、WOWOW「パンドラⅣ AI戦争」(18)、映画「スマホを落としただけなのに」(18)、NHK「そろばん侍 風の市兵衛」(18)、映画「ミッドナイト・バス」(18)、NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」(13-14)、NHK大河ドラマ「龍馬伝」(10)など。

  • コトブキツカサ

    1973年、静岡県出身。映画パーソナリティとしてTV、ラジオ、雑誌などで活躍中。年間映画鑑賞数は約500本。その豊富な知識を活かし日本工学院専門学校 放送・映画科非常勤講師を務める。

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