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スニーカーでありサンダルでもあるKEENのUNEEK、足元のクールビズに

この数年、アウトドアウェアを街中で着こなす男性が増えている。カジュアルでちょっとオシャレで着心地もいい。本コラムでは、ファッション性と機能性を兼ね備えたアウトドア・フットウェアブランドが展開する「これさえ持っていれば間違いない」というマストバイなウェア、グッズを紹介していく。

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クールビズも一般的になった昨今。かつては真夏でもスーツの着用が「マスト」だったサラリーマンも、涼しげなオープンカラーシャツやリネンのパンツを身につける人が増えているようだ。しかし、足元は革靴という方も多いのではないだろうか。スニーカービズにも注目が集まっているものの、オフィスにマッチするシックなスニーカーの大半は猛暑の前には無力。暑い、蒸れる、臭いの三重苦状態からは逃れられない。しかし米ポートランドのアウトドア・フットウェアメーカー<KEEN(キーン)>が展開する全く新しいフットウェア「UNEEK(ユニーク)」は、あなたの夏の足元を快適にサポートしてくれる。

通気性が非常に高いオープンエア・スニーカー「ユニーク」

通気性が非常に高いオープンエア・スニーカー「ユニーク」

ユニークの特徴は2本のコードで編み上げられたアッパーを使っていること。特殊なコーディング(コードと呼ばれるひもの編み方)を採用することで、現在主流となっているニットスニーカーに勝る絶妙なフィット感と高い通気性を両立し、「まるで裸足で歩いているかのようだ」と評される履き心地を実現している。「こんなカジュアルな靴では仕事に行けない」と思われる方も多いかも知れないが、ソックスのカラー次第で見た目はフォーマルに。この”オープンエア・スニーカー”は、もちろん通常のスニーカーと比べて通気性は段違いで、ソックスをはいていたとしても、ほぼ蒸れることはない。

黒のソックスの上から着用した「ユニーク」。見た目は完全にスニーカー

黒のソックスの上から着用した「ユニーク」。見た目は完全にスニーカー

3年の試行錯誤が生み出した絶妙なフィット感

2003年創業のキーンだが、ブランドの“ルーツ”は1970年代にまでさかのぼる。当時、のちに創業オーナーとなるローリー・ファーストがテニスシューズのソール交換業から靴工場を立ち上げ、その技術力の高さが評判を呼び、やがて一流スニーカーブランド数十社のOEM(他社ブランドの製品を製造すること)を一手に手がける企業として急成長を遂げる。その中で蓄積した様々なノウハウと反省点を生かし、満を持して立ち上げられたブランドがキーンなのだ。

創業と同時に、つま先を守るトゥ・プロテクション機能を採用した画期的なサンダル「ニューポート」を大ヒットさせたキーンは、アウトドア・フットウェアの世界で不動の地位を手に。数多くのヒット商品を生み出しつつも、ある意味での安定期へと入っていく。そんな流れに一石を投じたのが、創業者の長男にして、10代からKEENを製造する工場で経験を積んできたローリー・ファースト・Jr.。その彼が開発したのが、この「ユニーク」だ。

ポリエステル素材のコードは強度が高く、通常の使用で切れることはない。靴ひもの役割を果たす調整用バンジーコードは伸縮性のある別素材

ポリエステル素材のコードは強度が高く、通常の使用で切れることはない。靴ひもの役割を果たす調整用バンジーコードは伸縮性のある別素材

キーン・ジャパン合同会社のブランドディレクター・高木雅樹さんは次のように語る。

「創業者の長男であるローリー・ファースト・Jr.は、携帯電話がスマートフォンに進化したような劇的イノベーションを目指して、2011年ごろからユニークの開発を始めました。彼は試行錯誤する中で、コードで編まれたネットのような形状であれば、あらゆる曲面にフィットし、なおかつ通気性を確保できることに気づいたんです。シューズは通常、「皮革(アッパー)」「ソール」「シューレース」という三つの要素で構成されていますが、そこから「皮革」という要素を省き、“シューレース”とソールという2要素で構成されるシューズという発想に至ったようです」(高木さん)

キーン・ジャパン合同会社のブランドディレクター・高木さん。2004年の日本上陸からキーンにかかわっている

キーン・ジャパン合同会社のブランドディレクター・高木さん。2004年の日本上陸からキーンにかかわっている

開発の道のりは決して平坦(へいたん)ではなかった。絶妙なフィット感を生み出すために、無限に近いコーディングから、最適解を探し当てる必要があったからだ。しかも目指すのは、それまでにない全く新しいフットウェア。道具から全てを手作りする必要があった。そこでローリー・ファースト・Jr.は、まずはラストと呼ばれる足型や板材に無数の釘を打ち込み、そこに様々な形でひもをかけて、日夜コーディングを試し続けたという。こうして3年もの歳月を費やして生まれたのが、キーンの名品「ユニーク」なのだ。

ローリー・ファースト・Jr. が開発に使用したオリジナルの道具。自宅にこもって、日夜コーディングの研究をしていたという

ローリー・ファースト・Jr. が開発に使用したオリジナルの道具。自宅にこもって、日夜コーディングの研究をしていたという

裸足のような履き心地と歩きやすさを両立

通気性が非常に高いが、ソックスを選ぶことでカジュアルにもフォーマルにも見せることもできる

通気性が非常に高いが、ソックスを選ぶことでカジュアルにもフォーマルにも見せることができる

ユニークの特徴は、苦心の末に“編み”出された特殊なコーディングと調整用バンジーコードの組み合わせが生み出す、キツくも緩くもないフィット感。非常に微妙な調整が可能で、足を包み込むような履き心地を実現している。

また足に直接触れる内側にもこだわりは詰まっている。「メタトミカルフットベッド」と呼ばれる立体インソールは、親指の下部分や土踏まず部分が盛り上がっていたり、逆にカカトに関してはへこんでいたりと、足にフィットするように作られている。そのため着用時にズレが少なく、長時間の歩行をしても疲れない。

「靴の疲れにくさは、重量でも、クッション性でもなく、最終的には足にフィットしているかどうかで決まるんです。例えばオーダーメイドのドレスシューズは重くても疲れない。靴が足を包み込み、第二の皮膚のように機能してくれるからです。足を上下から包み込むような構造になっているので、本当に疲れにくいんです」(高木さん)

ソールには堅牢かつショック吸収性に優れたポリウレタン素材を採用。曲げると、ぬれた路面を歩く時に滑り止めの機能を果たす細かい波型の刻みが現れる

ソールには堅牢かつショック吸収性に優れたポリウレタン素材を採用。曲げると、ぬれた路面を歩く時に滑り止めの機能を果たす細かい波型の刻みが現れる

カカトには柔らかなマイクロファイバー素材を使っているため、靴擦れしにくい

カカトには柔らかなマイクロファイバー素材を使っているため、靴擦れしにくい

環境に優しいフットウェアづくりを目指す

ソールの内部をぐるりと一周する溝には、アッパーのコードを固定する役割を果たすインナーコードが挟み込まれている。右は試作アウトソール

ソールの内部をぐるりと一周する溝には、アッパーのコードを固定する役割を果たすインナーコードが挟み込まれている。右は試作アウトソール

キーンの創業者であるローリー・ファーストは、大手メーカーの下請け企業時代に、従来のシューズ作りが環境を破壊していることを実感した。そこで新たに会社を立ち上げるにあたって、“環境負荷を軽減するシューズ作り”を大きな目標に設定する。その姿勢は現在まで貫かれており、自然・環境保護のスペシャリストを雇用して、積極的に意見をとり入れている。また環境基準をクリアした団体が認証した工場で加工された素材を使用しているのも特徴だ。たとえば革に関しては、化学物質や廃棄物の管理、エネルギー消費、二酸化炭素の排出、水処理といった主要分野で製革工場の環境対策の監査を行う国際団体LWG(レザーワーキンググループ)の認証を受けた製革所からレザーを調達している。さらに環境汚染や人体への蓄積が問題視されている撥水(はっすい)・防汚素材「PFC(過フッ素化合物類)」の排除は95%まで実現しているというから、シューズブランドとしてはトップレベルの環境汚染対策を行っていると言っていいだろう。

「ユニークにもそういった視点は反映されています。一般的なスニーカーのアッパーは大きな生地から金型で切り出したパーツを縫い合わせて作ります。そのため切れ端に起因する廃棄物が大量に出てしまうんです。ところがユニークのアッパーはコードを編んでいるだけなので、とにかく廃棄物が少ない。またコードはミッドソールを貫通し、内部に配置されたコードに結び付けられているので、人体や環境に負荷をかける接着剤の使用も最小限で済んでいます。更に環境にいい商品づくりも進めています」(高木さん)

筆者はユニークを購入して10キロほど歩いてみたが、とにかく涼しく、また疲れない。フィーリングとしては、裸足にクッション性とグリップ力を追加したかのような感覚で、歩きやすさという点で最新スニーカーと比べても遜色はないように感じられた。またコードを使ったアッパーが生み出す、通気性と包み込むようなフィット感により、長時間歩いた後も足のむくみを意識せずに済むのが魅力と言えるだろう。ゆえにサイズはジャストがおすすめ。あまり締め付け過ぎずに履いてほしい。

今後、残念ながら温暖化はますます加速していくだろう。またエネルギー問題が解決するその日まで電力を節約していく必要もある。こうした流れから、オフィス内外でのサンダルへのニーズはますます高まっていくのは間違いない。この夏、ユニークで足元のクールビズを始めてみてはいかがだろうか。

KEEN(キーン)公式サイト
https://www.keenfootwear.com/ja-jp/

撮影/今井裕治

PROFILE

吉田大

ライター・編集者。大学卒業後、児童書出版社勤務を経て、フリーランスに。ファッション、アート、音楽、ストリートカルチャーから、政治経済、社会問題、テクノロジー、グルメに至るまで、多岐にわたるジャンルにおいて、長年にわたり執筆活動を続けている。趣味は自転車と立ち食いそば店めぐり。お酒や煙草を嗜まないストレート・エッジな生活を送っている。

オークリーのサングラス、スポーツ用アイウェアで培った機能とカジュアルなデザイン

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