キャンピングカーで行こう!

日本バーベキュー協会会長に聞く! キャンピングカーとBBQの意外な関係(下)

本場アメリカのBBQは私たちが思っているBBQとは全然違う? BBQとキャンピングカーのカルチャーは似ている? そんな話題から始まった、日本バーベキュー協会会長、下城民夫さんとの対談。今回は、BBQの世界大会のお話や、下城さんの考える「日本のキャンピングカーカルチャーの課題」のお話です。

BBQには世界選手権がある

渡部前回はアメリカンBBQとはパーティー文化である、というお話をうかがいましたが、聞いたところによると、BBQの世界大会というのがあるんですって?」

下城「そうなんです。全米各地で行われていますよ。僕たちも日本代表としてBBQ SHOGUNというチームで参戦しています」

日本バーベキュー協会会長に聞く! キャンピングカーとBBQの意外な関係(下)

アメリカの大会での、あるチームのブース。あきれるほど巨大かつスタイリッシュだ(写真提供:日本BBQ協会 BBQ SHOGUN)

渡部「結構盛んなんですか?」

下城「そうですね。ほとんど毎週行われているといっていいでしょう。それも同時にあちこちで開催されていますから、おそらく年間、500~600回はあると思います」

渡部「そんなに!そこで何をしてるんですか?コンテスト?」

下城「そうです。だいたい大会は4日間ぐらいかけて行うんですが、いろんな種目や部門があって、全米や世界中から集まったBBQチームがエントリーし、戦いを繰り広げます」

渡部「前回のお話では、塊の肉を数時間かけて焼く、っていう話でしたが」

下城「ええ。肉の部位にもよりますが、例えばビーフ・ブリスケット(牛の肩から胸にかけての肉)だとグリルの中に入れる時間だけで13時間ぐらい」

渡部「丸半日じゃないですか」

下城「いえ、下ごしらえだとか、レストといって放置する時間(調味料をなじませる、焼き上がり後など)をいれると、20時間近くかかりますよ」

日本バーベキュー協会会長に聞く! キャンピングカーとBBQの意外な関係(下)

自慢の道具を披露する出場者たち。それぞれに工夫を凝らし、オリジナリティーあふれるツールばかり(写真提供:日本BBQ協会 BBQ SHOGUN)

渡部「それじゃ徹夜ですね」

下城「ええ、徹夜です。交代で寝ずの番をするんですよ。椅子に座ってウトウトしながら、それでもグリル内の温度のデータをスマホやパソコンに飛ばして、タイミングを見計らいながら薪をくべたりね」

渡部「ものすごくローテクな料理法を、ものすごくハイテクなツールで管理すると」

下城「そういうことです(笑)」

渡部「そりゃ道具も必要だけど体力もいりますね」

下城「だからたいていのチームは巨大なRV、いわゆるキャンピングカーで来ていますよ」

渡部「やはりそうですか」

下城「まるでバスみたいに大きなキャンピングカーがごろごろしてます。キッチンやシャワーはもちろん、ベッドルームがふたつあるとかね。豪華なキャンピングカーばっかりです。そういう設備を持ち込んで、交代で体を休めながら戦うんです」

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アメリカでの大会にて、某チーム所有のキャンピングカーの内部(写真提供:日本BBQ協会 BBQ SHOGUN)

渡部「下城さんたちも?」

下城「僕ら日本チームはかわいいもんです。彼らと比べたらまるで原始人ですよ。テントを立てて、交代で仮眠をとるのが精いっぱいでね。彼らはみんなフカフカのベッドで休んでるから元気いっぱいですが、僕らボロボロです(笑)」

渡部「かなりの人が集まるんでしょうね」

下城「世界各国から集まりますが、やはりBBQはアメリカが先進国、最高峰です。一番大きなものだと、毎年2月にテキサス州ヒューストンで行われる「ライブストックショー&ロデオ」というイベントで大会があるんですが、これには4日間で100万人がおとずれます」

渡部「ちょっと想像がつかないです」

下城「ですよね。エントリーするチームだけで500組ほど。4日間の日程ですが、はじめの2日間はほとんどパーティーです」

渡部「パーティー文化ですもんね」

下城「そうです。各チームとも巨大なテントを張って、チームスポンサーなどを招いたり、チーム同士の交流があったりもします。それはもう大変な規模のどんちゃん騒ぎです。そして本戦が始まると、一気にムードが変わります。みんなはそれをエンジョイタイムとシリアスタイムと呼んでますが、どんなにフランクに付き合っていても、コンペティションが始まればお互いライバルですから。何を使って、どんな風に調理するか、絶対見せないんです」

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巨大なクラスC(アメリカンキャンパー)でグリルトレーラーを引っぱる! (写真提供:日本BBQ協会 BBQ SHOGUN)

渡部「参加しているのはどういう人たちなんですか?」

下城「ごく普通の市民ですよ。ふだんはサラリーマンとか、いろいろです。中には何度も優勝するなどの実績を重ねて、プロになる人もいます。具体的には、自分の店(レストラン)を開いたり、ソースやスパイスを作って販売したり。アメリカにはテレビのBBQ番組もたくさんあって、BBQタレントっていうのもいるんです。昔はやった『料理の鉄人』っていう番組ありましたよね。あれもアメリカのテレビ局が権利を買って、向こう版の番組を作っていますが、あちらではBBQ対決なんですよ」

渡部「大イベントであると同時に、真剣勝負なんですね。それだけに、メンバーのコンディションを整える上で、キャンピングカーのホスピタリティーが大きな役割を果たしてるっていうことですね」

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ばかばかしいほどダイナミックで充実した装備。大人が真剣に遊ぶというのは、こういうことなのだ!(写真提供:日本BBQ協会 BBQ SHOGUN)

キャンプ車で出かけること自体が目的になってはいけない

渡部「キャンピングカーとアメリカンBBQ。道具ありきの遊びであり、外へ出て楽しむなどの共通項も多い。非常に似通ったものを感じるんです。日本のキャンピングカー登録台数は11万台を超え、急激に広がっています」

下城「そんなにあるんですか。確かによく見かけますよね」

渡部「一般に、自動車業界では2万台を超えると『よく見かける』といわれるレベルとされています。2万台以下だと『レア』になるんです。そう考えると10万台以上というのは、かなりの定着率ですよね」

下城「その人気ぶりを見ていて、危惧してることがあるんですよ」

渡部「どんなことでしょう?」

下城「僕はアメリカンBBQに出会う前は、アウトドアジャーナリストをしていたんです。日本で最初にアウトドアブームが起きたとき、ほとんどの人の目的は『テントに泊まること』でした。その後、オートキャンプ場が全国各地に一気に増えて、どこも大盛況になりました。でもね、ちょっと非日常を楽しみたい、テントで寝てみたい、っていう程度の目的意識だと、3回、4回と回を重ねるうちに飽きてくるんですよ」

渡部「なるほど」

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キャンピングカーとアメリカンBBQ。長時間にわたって火を管理し焼き上げる調理法には、キャンピングカーのようなツールが最適、と下城会長=野呂美帆撮影

下城「天気のいいときばかりじゃない。暑い寒いもあるし、虫はいる、トイレが汚いなど、嫌な思いをすることもある。やがてバンガローを備えたキャンプ場が増えて、テントキャンプの人気がなくなったんです。でもおもしろいもので、アウトドアブームっていうのはしばらくすると再燃するんです。最初にリバイバルしたのは、夏に野外の音楽フェスが開かれるようになったから。ライブは楽しみたいけれど宿がない。だから仕方なくテントで寝る。だけどテントが増えてくると、ちょっと人より目立ちたくなる。今のグランピングブームにもちょっと似ています」

渡部「流行は繰り返しますね」

下城「でも、やっぱり人は飽きるんですよ。それで気づくんです。実は、テントで寝ることが目的なんじゃなくて、楽しいのは山を歩いたり川で遊んだりすることだったんだ、と。それと同じことがキャンピングカーでも起こらなきゃいいがなあ、と思うんですよ」

渡部「それはすごく理解できますね。キャンピングカーを持つこと、キャンピングカーででかけることが目的になってしまってる。大切なのは行った先で何をするか、っていうことなんですよね」

下城「僕たちは年間60回ぐらい、全国でBBQ検定という講習会を開いているんですが、キャンピングカーを持ってる、っていう受講生の方がすごく多いんですよ」

渡部「そうなんですか」

下城「アメリカンカルチャーにあこがれてる、とか、キャンピングカー遊びをしている、そんな普段の遊びにプラスアルファで何かしたい、そう思って学びに来てくださってるんだと思います。キャンピングカーとBBQを通してそういう人たちの輪が広がったり、料理の腕を競う場があったりしてもいいと思うんですよね」

日本バーベキュー協会会長に聞く! キャンピングカーとBBQの意外な関係(下)

アメリカで人気上昇中という最新式のグリル。炭や薪ではなく、ごく少量のペレット(木のチップ)を熱源に、全自動で庫内も肉芯(素材内部)温度も管理。しかも温度データをWi-Fiでスマホに飛ばし、必要な電源はソーラー電池で稼働!=野呂美帆撮影

渡部「そうなんです。キャンピングカーのその先に、何があるのか、楽しみを見つけること。逆に、BBQを楽しんでいて、荷物も多いし一日中かかるし、キャンピングカーがあると便利だよね、ってキャンピングカーを買う人がいてもいい」

下城「旅の目的を宿泊装置に求めちゃだめだってことですよね。キャンピングカーというせっかくの道具ならば、その活用方法を探っていかないと。僕らはしょっちゅうアメリカに行くので、向こうのキャンピングカー事情というか、彼らの活用ぶりを見ているわけですが、何と言っても日本と違うところはRVパークなどのインフラが整備されていることですよね」

渡部「そこなんです。それが目下の急務だと僕も思っています」

下城「日本でもRVパークのような場が増えるといい。そしてそこに人が集まって、BBQであるとか、何か共通の楽しみに参加して人の輪が広がる催しがあるといいですよね」

渡部「今後、ぜひそうした活動を広げていきたいと思っているんですよ」

下城「それは楽しみです!ぜひご協力しますよ」

日本のアウトドアムーブメントを長年見つめてきた下城さん。流行の変遷を知っていらっしゃるだけに、非常にもっともなご指摘だったと思います。キャンピングカーを使って何をするか。その楽しみを探り続けるのも、キャンピングカー遊びの面白さではないでしょうか。

【前回の記事はこちら】
>>日本バーベキュー協会会長に聞く! キャンピングカーとBBQの意外な関係(上)

PROFILE

渡部竜生

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)がある。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫6匹とヨメさんひとり。

日本バーベキュー協会会長に聞く! キャンピングカーとBBQの意外な関係(上)

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