原田泰造×コトブキツカサの「深掘り映画トーク」

カッコよすぎるブラピと役を作り込んだディカプリオが共演 映画愛があふれたタランティーノ監督最新作

ネプチューンの原田泰造さんと、映画パーソナリティーのコトブキツカサさん。映画が大好きなオトナのお二人が、新作や印象に残る名作について自由にトークする対談企画です。今回は、8月30日公開のクエンティン・タランティーノ監督最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』について熱く語ります。

<ストーリー>

リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)は、ピークを過ぎたテレビ俳優。そんなリックを支えるクリフ・ブース(ブラッド・ピット)は、彼に雇われた付き人で、スタントマン。ふたりは、親友でもある。しかし、映画の都ハリウッドは、徐々に彼らを必要とはしなくなっていた。そんなある日、リックの家の隣に、ロマン・ポランスキー監督と、新進女優のシャロン・テート夫妻が引っ越してくる。そして、1969年8月9日に事件が起こる……

 

監督・脚本:クエンティン・タランティーノ

出演:レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

8月30日(金)全国ロードショー

 

コトブキ 泰造さんには、たったいま試写を観(み)ていただいたばかりですけど、いかがでしたか? 

原田 面白かった! 観ている間、ずっと「俺はいまタランティーノ映画を観てる」っていう感覚があって、それがなんとも幸せだった。タランティーノも撮りながら幸せだったんじゃないかな。その気持ちが伝わってきた。

コトブキ 今作はタランティーノの個人的な映画になってますよね。自分が子どもの頃にリアルに触れていて、大好きだったモノで埋め尽くされている。

原田泰造さん

原田 それにレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの共演っていうのがぜいたくだよね。ブラピなんて、55歳だっていうのに、体もすごくて、カッコよかった。

コトブキ カッコよすぎて、役がブレていた気がします(笑)。ブラピが演じるクリフ・ブースは、スタントマンで、スターの付き人というか運転手じゃないですか。そんな地味な男にしては、カッコよすぎるんですよ。

原田 屋根の上でアンテナ直してるだけでカッコいいんだよね。家で犬にドッグフードあげてるシーンもカッコよくてずっと観ていられる。

コトブキ 演技も自然というか、たぶん、これタランティーノはブラピに演出つけてないと思うんですよね。役の設定だけ伝えて、カメラ回したらもうおまかせ、みたいな。

原田 ブラピは役柄的にオーバーに演じることもできるだろうけど、それはディカプリオがやっちゃってるんだよね。女のコに演技をほめられて感極まったり、ツバを吐いたり、鼻すすったりして、けっこう作ってきていたから(笑)。そのぶん、ブラピは付き人らしく、多くを語らずというキャラクターでバランスとったんだろうね。

コトブキ ディカプリオは、リック・ダルトンというちょっと落ち目の俳優を演じてるんですけど、魅力的でしたよね。少しダメな部分もさらけ出すようなキャラクターで、憎めない。

ONCE UPON A TIME IN HOLLYWOOD

シャロン・テート役のマーゴット・ロビー©ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

原田 シャロン・テート役のマーゴット・ロビーも可愛かった。自分が出演している作品を映画館で観て、お客さんが笑っているのを見て喜ぶシーンとか、たまらないよね。映画を愛していることが表現として伝わってくるし、それはタランティーノ自身もそうなんだなって思った。やっぱり、この作品で語られるのはラストの13分だと思うんだけど、それも含めてタランティーノの本質が出てるよね。

ラスト13分の“タランティーノ劇場”

コトブキ  ラスト13分はファンとしてタランティーノ劇場を楽しみました。あとシャロン・テート事件に関しては、実際に起こった悲劇ですが、ある程度知識があった方が映画を楽しめると思います。

原田 俺はあまり事件を知らないで観てたんだけど、これって本当にあった事がモデルの作品なんだよね。

コトブキ シャロン・テートが、カルト集団のマンソン・ファミリーに惨殺されたという事件なんですよ。だから、事件の顛末(てんまつ)を知ってる人は、シャロン・テートに悲惨な結末が待ってると思って気が抜けないんですよ。

原田 そうなんだ。俺は事件を知らなかったけど、日付のカウントダウンが入るし、ずっと不穏な空気も漂ってるから、この家で不吉なことが起こるだろうなってことは伝わった。町中にヒッピーがウロウロしてるところとかも、ちょっと不気味に描いてるんだよね。それに、ブラピが、ヒッピーたちが根城にしている西部劇の撮影場所に行くシーンがあるじゃない?

コトブキツカサ

コトブキ スパーンランチですね。あれも実在していて、実際にマンソン・ファミリーが根城にしてた場所なんですよ。

原田 あのシーンは、緊張感があったよね。もう、あそこだけで短編映画として成立するくらい。

コトブキ タランティーノらしいオチも含めて、不条理劇みたいな味わいがありましたよね。

原田 このリック・ダルトンとクリフ・ブースという人物は実在するの?

コトブキ この2人は創作ですけど、モデルはいるみたいですね。俳優とスタントダブルというのもよくある関係性だし、この頃にハリウッドの西部劇が衰退していって、イタリアに流れるとか、そういう役者さんは実際に多かったんですよ。

ブルース・リーへの愛情あふれるシーンも

原田 あと、本当かなって思っちゃうのは、ブルース・リーが出てくるところだよね。

コトブキ 史実でいえば、1969年にブルース・リーはハリウッドにいます。『グリーン・ホーネット』のカトー役とかで人気が出始めていて。ただ当時はアジア人に対する差別もあって、仕事がなくなってきたときに、シャロン・テートのアクション指導も実際にやっているんですよ。

原田 それも本当なんだ。

コトブキ ただ、ブルース・リー対クリフ・ブースは創作ですよ。このシーンはブルース・リーのファンから賛否両論になってるんですよね……。でも、クリフを演じたブラッド・ピットはブルース・リーの大ファンじゃないですか。

原田 あぁ、そうか。『ファイト・クラブ』だ。

コトブキ そう! 『ファイト・クラブ』で、ブラピはブルース・リーの動きを取り入れたりしてましたよね。そういう意味では、タランティーノもブルース・リーが好きじゃないですか。1972年にハリウッドで『燃えよカンフー』っていうテレビドラマが製作されることになって、ブルース・リーが主役を務めるというニュースが流れて、当時子どもだったタランティーノ少年は興奮したんです。でも、アジア人が主役では視聴率が取れないってことになって、主役がデビッド・キャラダインに変えられちゃって、タランティーノ少年はガッカリしたらしい。その思いがあったからこそ、タランティーノは『キル・ビル』でユマ・サーマンにブルース・リーの黄色いトラックスーツを着させて、殺されるビル役をデビッド・キャラダインに演じさせたという話です。

原田 そんなに思い入れが深かったんだ。

コトブキ だから、今回ブルース・リーが出てるのもタランティーノなりのオマージュなんですよ。ただ、ちょっと強調しすぎたというか、カリカチュア(劇画)化されたブルース・リーでしたよね。

原田 確かに、もっと上手にやらせようと思ったらできるはずなのに、面白いブルース・リーだったね。モノマネ芸人みたいな。

コトブキ もっとかっこよく表現できるのに、ちょっと誇張して皮肉屋みたいな状況を作ったんじゃないですか。これは、当時のブルース・リーがハリウッドではこう見られていたんだよってことなんでしょうね。光と影でいえば、影の部分を強調したというか。

原田 ぜんぶわかった上で、今回はこう描いたってことなんだろうね。これはこの映画の他の部分でも言えることなんだろうけど。

コトブキ それも含めて、タランティーノの演出がうまくなってますよね。マーゴット・ロビーもすごくキレイに撮ってて、監督としてはすごい円熟期に入ってる。だけど、ラスト13分のヤンチャぶりをみると変わってねえなって(笑)。

原田 よりパワーアップしてるよね(笑)。やりすぎてるぐらいだったよ。

コトブキ 僕はタランティーノ直撃世代なんですよ。『パルプ・フィクション』は公開当時から何度も観ているし、『ジャッキー・ブラウン』も大好き。その頃に受けた衝撃は計り知れないし、それってある意味、超えられないじゃないですか。もう『110番街交差点』を聞くだけで、あの頃を思い出してしまうというか。

原田 あの曲は心が沸き立つものがあるよね。もうカッコいい中のカッコいいっていう。

原田泰造×コトブキツカサ

コトブキ でも、今回の作品はそれに匹敵しますね。これがタランティーノの引退作ですって言われても納得しちゃう。それくらい、彼の好きな映画やテレビにブルース・リーやシャロン・テート事件もぶち込んであって、満足しましたよ。

原田 改めて、映画って自由でいいなって思った。もっといえば、タランティーノは自由に作っていい人なんだなって。みんな自由に作りたいけど、作れないんだよね。だからタランティーノみたいに、子どものままでいるのが大事なのかもね。

タランティーノがハリウッドに宛てたラブレター

コトブキ 僕、タランティーノにインタビューしたことあるんですけど、子どもみたいな人でしたよ(笑)。通訳さんを通してですけど、質問するじゃないですか。でも、話してるうちに自分の言いたいことをどんどん足していくから、質問と答えが全然違ってくる。自分のなかでしゃべりながら変わっていっちゃうんですよ。

原田 すっごくしゃべる人みたいだね。20年以上前に、『ママに宿題』っていう昼ドラマで中原早苗さんと共演させてもらったことがあったんだけど、中原さんは深作欣二監督の奥さんだということをうかがっていたから、「タランティーノって、深作さんの映画が好きなんですよね」って聞いてみたんだ。そしたら中原さんが「来たわよ、この前。家にタランティーノ。うちのお父さんとずーっと話していたわよ」っておっしゃって。家に普通にタランティーノが来るって、すごいなと思ったんだよね。

コトブキ 『家にタランティーノ』ってフレーズが面白いですね(笑)。

原田 なんか映画ファンって、タランティーノの話をしてるだけでうれしくなるんだよね。だから、タランティーノの新作を観るっていうだけで、もうイベントというか、お祭りみたいな感覚になる。だから観ながら純粋に映画って楽しいなって思ったんだよね。

コトブキ 特にこの作品はタランティーノからハリウッドに向けたラブレターですからね。ただ、そこにはアイロニーも含まれてるし、シャロン・テート事件というハリウッドを震撼させる影の部分もある。でも、これはラブレターだから、裏を表にするしかなかったし、おとぎ話にしたかったんだと思いますね。

原田泰造×コトブキツカサ

(文/大谷弦、写真/稲垣純也)

PROFILE

  • 原田泰造

    1970年、東京都出身。主な出演作に、WOWOW「パンドラⅣ AI戦争」(18)、映画「スマホを落としただけなのに」(18)、NHK「そろばん侍 風の市兵衛」(18)、映画「ミッドナイト・バス」(18)、NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」(13-14)、NHK大河ドラマ「龍馬伝」(10)など。

  • コトブキツカサ

    1973年、静岡県出身。映画パーソナリティとしてTV、ラジオ、雑誌などで活躍中。年間映画鑑賞数は約500本。その豊富な知識を活かし日本工学院専門学校 放送・映画科非常勤講師を務める。

映画じゃないと成立しない、エルトン・ジョンの半生『ロケットマン』

トップへ戻る

ホアキン・フェニックスの悲しい笑い声が心に響き続ける 話題作『ジョーカー』

RECOMMENDおすすめの記事