キャンピングカーで行こう!

キャンピングカーとBBQの楽しみ方 共通する“マナー問題”を考える

日本バーベキュー協会会長、下城民夫さんをお迎えして、アメリカンBBQを楽しみながらの対談の最終回です。「便利な道具を使って屋外で快適に遊ぶ」。さまざまな点で共通項のあるBBQとキャンピングカー。今回は、そんな「遊びの文化」が根付くために必要なインフラや、共通するマナー問題について考えます。

キャンピングカーを持つことで満足してはもったいない

渡部 前回は日本のキャンピングカーがテントキャンプのブームのようなことになるのではないかと危惧されているというお話でしたね。

下城 アウトドアブームが始まったころ、人々の主な動機は「テントで寝てみたい」でした。しかしテント泊そのものが目的では、あっという間に飽きられてしまう。キャンプで何をして遊ぶのか、が大事なんです。

渡部 いまの日本のキャンピングカーブームも、キャンピングカーを持つことが目的になってしまってはもったいない、ということですね。

下城 おっしゃる通りです。高額な商品なだけに、買っただけで満足する側面はもちろんあるでしょう。僕も日本人ですから、その心理はよくわかります。しかし、その先の楽しみ方を見つけることができれば、いつまでも楽しめる趣味になると思うんです。そのためにも、「この道具を使うとこんな遊び方ができるよ」という提案を、誰かがしていかないといけないと思っています。

渡部 「日本人は遊ぶのが下手だ」とよく言われますよね。

下城 僕らがアメリカに通って、学んだことがあるんです。

渡部 どんなことでしょう?

下城 それは一つの趣味やレジャーに、いろんな他のものをくっつけることです。BBQを例にとっても、音楽だったりダンスだったり。もともとパーティー文化ですから、BBQ以外のアクティビティと結び付けることでより活発になる。日本であれば、温泉と結び付けてもいいと思うんですよ。スポーツ観戦とBBQでもいい。親和性の高いものと結び付けて、遊び方の選択肢を増やさないと。

渡部 なるほど。

下城 日本人が遊び下手なのは、遊びを作り出すのに慣れてないということだと思います。誰かに「ハイキングして、終着点でBBQしようよ」って誘われて、初めて「あ、そうやって遊ぶのもアリなんだ」と気づく。自分で考える癖がついてないんですね。それにそれなりに高価なキャンピングカーであれば、購買層は年齢が高めじゃないですか?

渡部 キャンピングカーの購買者層は若い世代とシニア世代とありますが、比較的大きな車の購買層は、年齢層は高めでしょうね。

下城 真面目で勤勉なところは日本人の美徳だと思いますが、日本のシニアは遊んでないんですよ。アウトドアするのは一部の趣味人に限られていて、せっかくいい道具を買っても遊び方が思いつかないんです。

渡部 キャンピングカーショーなどで、お父さんがキャンピングカーを欲しがっている横で、反対してる奥さんを見かけることがあります。反対する理由が聞こえてきたのですが、印象的だったのは「こんなに狭い日本で、キャンピングカーなんていらないでしょ」というもの。「おいおいおい、ちょっと待って」と思いました。

下城 おやおや。

渡部 下城会長は関西のご出身。僕は東京の人間ですが、うどんのだしの色もおでんの味付けも違いますよね。

下城 そうですね。日本は南北に長くて、山間部も海辺もあって、多彩な国ですよね。

渡部 そうなんです! 少し車で走れば違う作物が採れるし、食文化も異なります。何百キロも走らなくたって、非日常が味わえる。狭いからいらない、じゃなくて、狭いからラッキーと思わなくちゃ。新幹線の走らない土地にも面白いものがいっぱい眠ってる、それが日本です。キャンピングカーがなければ味わえない楽しみがいっぱいあるのになあと残念に思います。

下城 BBQも同じですね。みなさんにおなじみの、野外焼き肉スタイルのBBQだって、もちろんいいんです。みんなが集まって、外で火をおこして楽しめば、家やお店で食べるより楽しい。だけど、もう少し視野を広げてもらえれば、家ではできない料理もできる。前菜からデザートまでBBQでできるんだってことが知られていない。遊びに対する視野を広げていくことが大切ですね。

BBQ

焼く肉の種類に応じて火力を使い分ける。炭の位置(レイアウト)と量、食材を置く位置によって強火・弱火をコントロール。思ったより少ない炭で、数時間かけてじっくり焼き上げる

足りていないのはマナー?それともインフラ?

渡部 キャンピングカーの登録台数が11万台を突破して、これだけ愛用者が増えてくると、各地で問題も起き始めてるんです。例えば道の駅や高速道路のSA、PAで宿泊する。しかもテントまで出して、キャンプ場のようにふるまう人までいます。とうとう「キャンピングカーお断り」の道の駅まで出てきてしまいました。そうしたマナーの悪いふるまいが、結果的に自分たちの首を絞めているんですが……。

下城 そのあたりの課題も、BBQと全く一緒ですね。夏になるとBBQ客であふれかえる河川敷や海水浴場に残される大量のごみ。それどころか、火がついた炭を土や砂に埋めて放置し、知らずに上を歩いた子どもが大やけどを負う事故まで起きています。

渡部 ニュースになりますよね。BBQが悪者にされてしまう。

下城 でも僕はね、それってマナーの問題じゃないと思ってるんです。

渡部 といいますと?

下城 ひとつはインフラの問題。もうひとつは「公共の場を占拠して場を乱すこと」は“犯罪”だということです。まず、その場所はBBQをしていい場所なのか。火を使っていい場所なのか、ごみを捨てていい場所なのか。そうでない場所でBBQをすることは、イコール犯罪だ、と考えていい。欧米では「許可」「不許可」の線引きが非常に明確で、破れば即、逮捕です。

渡部 同感ですね。海外では、キャンピングカーに限らず、乗用車でも停泊していい場所とダメな場所が明確です。その代わり、ふんだんにRVパークがある。

キャンピングカーとBBQの楽しみ方 共通する“マナー問題”を考える

BBQの道具もキャンピングカー同様、どんどん進化している。「ペレットタイプのグリルは、炭も不要。ほんの少しの灰が出るだけでしっかり調理できます」(下城さん)。ごみを出さない、環境にやさしい遊びは進化しているのだ

下城 そこなんですよ。日本の公共の場、特に河川敷や海辺では、「やっていいこと」「いけないこと」が不明瞭で、そこへBBQや車中泊を楽しみたい人がやってくる。しかし、そこに人があふれると、ごみや後処理の問題も出てくる。明確な罰則規定もないことが問題です。世界をあちこち旅して思いますが、日本人ほど公共の場にごみを捨てない国民はいないですよ。ヨーロッパの町でも平気でごみをポイ捨てする人を見ます。
日本人は、1カ所に大勢が集中するととたんにごみにルーズになる。それはひとえに、インフラが追い付いていないせいなんです。オーストラリアなんて、そこら中にパブリックなBBQパークがあります。道具がそろっていて、誰でも食材を持ってくればBBQができる。ごみ処理も水場も整備されています。

渡部 キャンピングカーと同じ事情ですね。そのためにRVパークを増やしていこうと業界団体も頑張っていますが、まだまだ追い付いていない。

下城 それは本来、民間まかせにせず、行政や自治体が乗り出すべきことだと僕は思います。日本人のレジャーがこれだけ変わってきたのだから、整備しないと。そのうえで、決まりを破ったら罰金を科すぐらいにしなきゃ。実際、そういう対応に乗り出している自治体も出始めてるんですよ。東京では狛江市が、多摩川の狛江市側の河川敷でのBBQを禁止する条例を定めています。破れば罰金。こういう取り組みが増えればいい。その代わり、許された場所を増やしていかないと。規制と整備の両立が大事だと思います。

渡部 個々人の意識に任せる「マナー」の問題だけでは解決できないところまで来てますよね。

下城 「こんなマナー違反をしているやつがいる!」と目くじら立てるだけじゃ、何にも解決しないんです。

渡部 当人に注意すれば「どこにも禁止とは書いてない!」とか、反撃されてトラブルになることもありますしね。「していいこと」「してはいけないこと」の基準が一定じゃないから、マナーを重んじる人と軽んじる人の間で軋轢(あつれき)になって終わる。

下城 だからといって禁止条例だけ作っても、行く先がなくなるだけじゃ解決にはならないしね。すぐにそんな場所が増やせるわけではありませんが、それでも時間をかけてでも解決しなきゃいけない問題なんですよね。

渡部 初心者は、よくわからずにマナー違反を犯してしまう、っていうこともあると思うんです。そのためにも「ごみは持ち帰る」「公共施設をキャンプ場のように使わない」「火を使えない場所でBBQをしない」といった基本的なルールが常識になっていく必要がある。

下城 教育と啓蒙(けいもう)が必要ということですね。「日本人のマナーが悪くなってきている」なんて嘆くだけではなく、なぜこういうことが起きているのか、原因と背景を分析して解決策を練らないと意味がない。

渡部 ただただ、あれも禁止、ここもだめ、と縛るばかりでは、遊ぶ人の数も減ってしまいますよね。BBQもできる、キャンピングカーも泊まれる場所がもっと増えれば、きっと面白いことになると思うんですが。

キャンピングカーとBBQの楽しみ方 共通する“マナー問題”を考える

焼き上がったBBQ料理の数々。仕上がり時間を逆算して調理手順を組み立てる。BBQ=パーティーだが、準備段階がゲームのようで面白い!

冷蔵庫は空っぽのままで旅に出かけよう

渡部 僕、よく講演のときなどに言うんです。「みなさん、旅に出かけるときはキャンピングカーの冷蔵庫は空っぽにして行きましょう」って。いつもの近所のスーパーで買い出しして行っても、代わり映えしないじゃないですか。だったらその土地のものを買ったほうが安くておいしいんじゃないの?と。

下城 いい言葉ですね! 「冷蔵庫を空っぽにして行こう」。まったく同感です。地産地消という言葉もありますが、どんなものも産地周辺で食べるのが一番おいしい。それに、キャンピングカーやBBQで人が訪れれば、それが経済活動になる。人が動けば必ずお金も動きますから。

渡部 お金が落ちないと各地の人々も潤わない。旅人はその土地の気候風土、食を楽しませてもらう代わりに、対価を払う。

下城 BBQはいろんなマーケットに通じてるんですよ。食肉はもちろん、海の幸や野菜、お酒。炭などの燃料。移動のための車。スパイスやソースまでいれたら、ほとんどの産業とつながるといっていい。それを活用して、地域活性に結び付けようという自治体も増えています。

渡部 キャンピングカーとBBQ。こんなに楽しいのに、なかなか理解されてませんね。

下城 日本では「遊び」の地位が低すぎるんですよ。仕事と同じぐらい、遊びも大事。これからの日本を元気にするには、本気で遊ぶことが大事です。そのためにはインフラも必要だし、遊ぶ人の意識も変わっていかないとね。

渡部 そのうち、キャンピングカーとBBQのジャンボリーでも企画しましょう!

        ◇

いかがでしたか? アメリカンBBQの話から日本のレジャー全般の課題まで、話題は縦横無尽に広がりました。日本人はもっと遊んでいい。それも、よりスマートに、快適に。社会インフラの整備も含め、これからも考えていきたいと思っています。

貴重なお話の数々、下城会長、本当にありがとうございました。

(写真/野呂美帆)

【前回の記事はこちら】
>>日本バーベキュー協会会長に聞く! キャンピングカーとBBQの意外な関係(上)
>>日本バーベキュー協会会長に聞く! キャンピングカーとBBQの意外な関係(下)

PROFILE

渡部竜生

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)がある。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫6匹とヨメさんひとり。

日本バーベキュー協会会長に聞く! キャンピングカーとBBQの意外な関係(下)

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