インタビュー

映画『見えない目撃者』で殺人鬼を追うコンビ 吉岡里帆×高杉真宙がしびれたカッコいい人

あなたは記憶力に自信があるだろうか? 例えば、さっき乗った電車で隣に立っていた人の顔や服装を、どれだけ覚えているだろう。

映画『見えない目撃者』は、目の見えない元警察官の主人公が連続殺人鬼を追うノンストップ・スリラー。主人公・浜中なつめを吉岡里帆さんが、犯行現場に遭遇した”もう一人の目撃者”で、なつめと一緒に事件を追う高校生・国崎春馬を高杉真宙さんが演じている。どちらかと言えば癒やし系の、笑顔が似合う役を演じることが多かった2人が初共演し、戦慄のサイコ・サスペンスに挑戦した。

インタビューで2人は、役づくりの苦労や撮影時のエピソード、プライベートまでじっくり語ってくれた。劇中では、姉弟のように絆を深める2人だったが、取材時も吉岡さんが高杉さんをさりげなくフォローする瞬間が何度もあり、和やかな雰囲気で進んだ。

目の見えない役を演じる苦労。「オフの時間も、どう演じるかがずっと頭にあった」(吉岡)

原作は、2011年に大ヒットした韓国映画『ブラインド』。原作の魅力を生かしながら、現代の日本を舞台としてアレンジを加え、連続殺人鬼を追い詰めて行くサスペンスに仕上がっている。吉岡さんは撮影に入る2カ月前から、視覚障害者の方や盲導犬と暮らす人、警察官に取材し、演技のヒントを得るためのリサーチを始めた。劇中でスケートボードを乗りこなす春馬役の高杉さんも、1カ月前から練習をスタートしたという。

吉岡里帆

吉岡 目が見えない演技は、とても難しかったです。視覚障害者の方がどんな風に生活しているか、何に大変さを感じているのか。細かくお話を聞けたことが、とても助けになりました。目の動きがとても難しかったのですが、監督と話して、視線は相手を見て、演技するという形にしました。目は見えなくても、ちゃんと相手の顔を“見る”というお芝居はとても難しかったです。オフの時間も『あのシーンはどうしたらいいだろう』と、ずっと心配事のように頭にちらついていました。

なつめは、目が見えないハンディを抱えているうえに、心も閉ざしてしまった人です。内にこもった鬱屈(うっくつ)とした気持ちを表現する一方で、犯人と戦っていく芯の強さを出すために、むき出しの心で、でも冷静に、ひとつひとつ大事に演じていこうと思いました。なつめは一切笑いません。でも私はすごい笑い上戸で(笑)。だからこそ、人間関係からできる絆とか、さりげない春馬の優しさがうれしいとか。そんな気持ちが伝わるような細やかな演技に気をつけました。

高杉真宙

高杉 吉岡さんは、いろいろなシーンで『ここ、こんな風にしようと思っているけど、やりにくくない?』と聞いてくださって、ありがたかったです。春馬は、成長していく部分がたくさんあるので、物語の最初と最後を比べて、大きな変化を見せられたらいいと思っていました。それがこの作品の希望にもなっていると思います。役作りでは、カメラテストに時間を割いてもらって、森淳一監督とたくさん話をしました。『こんな時は、こんな動きで』。そんなやり取りを重ねて、春馬の土台を作っていきました。スケボーは、家に持って帰って自宅のそばで練習しました。すごく素敵な春馬に仕上がっていて、ありがたいと思います。

互いの印象は、「高校生だと勘違いしていた(笑)」(吉岡)&「ストイックで強い人」(高杉)

初共演となる2人に、会う前のお互いの印象と共演した後で実際はどうだったかを尋ねた。

吉岡 会う前は、繊細で美しい青年というイメージでした。私、高杉さんを高校生くらいだと思っていたんです(笑)。高校生の制服の衣装は自前だと思っていて、学校に通いながら偉いなあ、私は高校生の時に何もできなかったなあと思って。後で、年齢を聞いてびっくりしました(笑)。役柄と同じ高校生に見えるというのは、表現の賜物ですよね。表現の幅がすごく広い方だと思いました。現場では、相談したり話し合ったりする時間も嫌な顔ひとつせず、向き合ってくれました。とても真面目で、話し合える方だったので、現場でもとても頼りになりました。

吉岡里帆と高杉真宙

高杉 童顔すぎるだけですよ(笑)。吉岡さんは、お会いする前は、ほわほわしたイメージでしたが、実際はもっと話しやすくて、何より役に対してストイックな方でした。役をどこまでも突き詰めていく姿はカッコよくて、なつめの正義感にもつながる強さがあるなと感じましたね。一番大変な役なのにもかかわらず、現場ではスタッフさんや僕を気づかっていただき、座長としてのたたずまいもカッコいいなと思っていました。

新幹線で隣りに座った人が何をして過ごすのか気になる(吉岡)

吉岡里帆

吉岡さんが最近観たサイコ・サスペンス映画は『エル ELLE』。「途中から逆転していくストーリーが面白いなと思いました。本作も、弱者だと思っていた人が実は強者だったという展開が好きなところでもあります」

『見えない目撃者』の物語は、目の見えない元警察官のなつめが車の接触事故の目撃者になったことから動き出す。車内からわずかに聞こえた、助けを求める女子高生の声。その場に居合わせた高校生・春馬がなつめをサポートする形で、女子高生の行方を探し始める。やがて、女子高生ばかりが被害者となった猟奇的な連続殺人事件とのつながりが発覚する……。

元警察官という経験も生かしたなつめの人並外れた洞察力と観察力が、事件の謎を解いていく。

劇中で“目撃者”となった2人に「普段、周りをどれくらいよく見ているか」を聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

高杉 僕は、見ているつもりで気づかないことが多いですね(笑)。記憶にほとんど残っていないです。

吉岡 最近、地方ロケで新幹線移動が多いのですが、新幹線の隣りの席になる人が気になります(笑)。偶然の出会いで2時間一緒になる人が、隣りで何をして過ごすのが毎回気になって。私は、じっとしていることがちょっと苦手だということもありますが。じろじろ見ては失礼なので、気配で様子を感じ取りながら、『ああ、このサラリーマンらしい方はシウマイ弁当を食べるんだな』とか、『洋書を読まれる素敵な女性だな』とか。『音漏れがめちゃめちゃしている』『意外とアイドルソングとか聞くんだ』なんて思うことも(笑)。この遮断できない近さが新幹線移動の醍醐味(だいごみ)ですね。

カッコいいと思うのは、「思いやりのある人」(吉岡)&「高杉家の祖父」(高杉)

吉岡里帆と高杉真宙

『&M』のテーマである、「カッコよさ」と「自分がこだわっているもの」について質問した。まず、2人がカッコいいと思う人はどんな人だろうか。

高杉 祖父です。高杉家の大黒柱的な存在で、とても力強い人です。お酒が大好きで、昔からカッコいいおじいちゃんって感じですが、かわいい部分もあって。この間80歳になったばかりで、親戚が集まってお祝いしたんですよ。僕は行けなかったので、テレビ電話で話をしました。あんな風に、いろいろな人を支えていける人物になりたいです。あの姿を追いかけています。

吉岡 私は、思いやりがある人が一番カッコいいと思います。言葉にキレがあるとか厳しい言葉をかけるのも愛ですが、にじみ出るように相手を思いやる優しさがある人は、懐が広くてカッコいいです。本作でも、実はすごいエピソードがあって。私の憧れの照明技師・藤井勇さんの話ですが、一番大変な洋館のシーンを昼夜逆転で撮影していた頃、ちょうど『万引き家族』で日本アカデミー賞の最優秀照明賞の授賞式があったんです。藤井さんは、現場から授賞式に向かい、式が終わると、なんとその足で夜の撮影に戻ってきてくださいました。お祝いの食事会には行かなかったのかと聞かれた時の答えが『一番大事なのは現場だから。僕はおにぎりでいいから』って。しびれる! 最高にカッコよかった。

高杉 もうほんとにカッコよかった!

続いて、生活の中で今一番こだわっていることは?

高杉 あまりこだわりはないんですが、体調を崩しそうな時には、サウナで汗を流して気分転換します。置かれている12分計が一周する間は入っていられるように頑張ります。本当は、スポーツをして汗を流した方がいいのでしょうが。たまに頭を空っぽにしたい時は、走ることもあります。

吉岡 オイル美容にはまっています。すごく忙しくて、睡眠不足の時とか、どうしたらいいかなと思っていた時に、ヘンプオイルを試したらとても良くて。寝る前に使うと疲れがスーッと取れて、リラックスして寝られるようになりました。現場にも持参して、眠い時や目がしぱしぱする時に使ってみたり、他の女優さんに勧めてみたり。あまり人にグイグイ行くことは無いですが、これだけは勧めています(笑)。

職人のように紡いだ1シーン・1カット。「想像を超えてくる映画です」(高杉)

『見えない目撃者』は日本では数少ない、サイコ・サスペンス映画。五感に訴える体感型ノンストップ・スリラーは、サスペンス好きだけでなく、大人が満足できる上質なエンターテインメントに仕上がっている。最後に2人が映画へのメッセージをくれた。

吉岡 本作はR15指定で、かなり危険な描写もあります。原作に対するリスペクトを持ちながら、しっかりと新たな物語を描いています。スリラーやサスペンスファンの人はもちろん楽しんでいただけると思いますが、実はその先に、一筋の純粋な光がぱっと開く瞬間があります。ラストシーンはジーンとしてもらえる作品だと思うので、ぜひ大切な誰かと、または1人で手に汗を握りしめながら観ていただければいいなと思います。

高杉真宙

一番ドキドキしたシーンは、「最初に車が爆発するシーン。ちゃんと爆発していてびっくりしました」(高杉)

高杉 日本であまり見たことがないタイプの作品じゃないかなと思います。現場では、お客さんへドキドキ、ハラハラを届けるために、スタッフさんが職人のように1シーン・1カットに時間をかけました。ある程度は覚悟して観に来ていただいていると思いますが、それを超えられる作品だと思っています。ドキドキ、ハラハラを自己投影して、驚きのシーンの数々を楽しんでください。

(文・武田由紀子 写真・花田龍之介)

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