キャンピングカーで行こう!

ファミリー向けキャンピングカーがトレンドに。ドイツ・キャラバンサロン2019リポート(上)

世界最大のキャンピングカーショー『キャラバンサロン』が、今年もドイツ・デュッセルドルフで開催されました。今回はファミリー向けレイアウトの車両が増えるなど、例年にない変化もありました。筆者が注目したトピックを、2回にわたってご報告したいと思います。

ファミリー向けキャンピングカーがトレンドに。ドイツ・キャラバンサロン2019リポート(上)

会期終了間際の土曜日の会場入口の様子。電車・バスはひっきりなしに到着し、次々観客を運んでくる

毎年8月の最終金曜日から9月の第1日曜日まで10日間にわたって開催される「キャラバンサロン」は、世界最大のキャンピングカーショーです。10日間という長い期間に加え、出展台数は2千台超。なにもかもスケールが大きく、ヨーロッパがキャンピングカーの本場であることを実感させてくれます。今年の来場者数は10日間で26万8,000人。昨年が25万211人でしたから、今年はさらに1万人以上増えており、大盛況でした。2009年から欠かさず取材に訪れていますが、毎回何かしら発見があるのはすごいことだと思います。

ファミリー向けキャンピングカーがトレンドに。ドイツ・キャラバンサロン2019リポート(上)

毎年恒例の抽選会の投票所。プレゼント商品は後ろにあるキャブコン

さて、このキャラバンサロンはスケールが大きいだけでなく、欧州キャンピングカー市場にとって今後の1年を占う大切なイベントです。各社からニューモデルがお披露目されるほか、既存モデルのブラッシュアップや新たなレイアウトなど、様々な提案が目白押しだからです。会場にはヨーロッパ全土から大小さまざまなビルダーが集結。ハイマーやデスレフなど日本でもおなじみの大手のブースはとても広く、その時扱っている全てのモデルを展示します。会場ではパーツ専門店、メンテナンス用品店なども軒を並べ、ニューモデルを熱心に売り込んでいます。

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会場内のレストラン……ではなく、某ビルダーの商談ブース。この席数が商談のお客さんで埋まるというのだからびっくりだ

ユニークなのは、毎年ほとんどのブースが同じ位置にあること。装飾も大きくは変わらないところが多いので、毎年通っていると既視感が半端ではなく、去年と今年で何が変わったんだか、間違い探しの気分になります。というのはもちろん冗談。どこも変わっていないビルダーなど、ひとつもありません。

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今年も設けられていた「キャンピングカー入門館」。様々なタイプのキャンピングカーが展示されセミナーも開催されていた

欧州のトレンドは「ファミリー志向」

今年、会場全体に共通して目立っていたのは「ファミリー向けのレイアウトが充実してきた」という点です。少し前までヨーロッパ製キャンピングカーといえば、大きな車両にゆったりした室内、それでいて就寝定員は2~3人という、ぜいたくなレイアウトが特徴でした。それが今年は、プルダウンベッド(ベッドが天井に張り付いていて、使うときだけ引き下ろすタイプ)や二段ベッドなどを備え、就寝定員4人以上というモデルが自走・トレーラーを問わず増えていました。

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子ども用三段ベッド! とはいえ日本なら小柄な人でも十分寝られそうなサイズ(画像提供:HOBBY Caravan)

特に面白いと思ったのは、キャブコンタイプが定員を増やす際の方法でした。バンクベッドではなく、プルダウンベッドを導入する車両が多かったのです。考えてみれば確かに、プルダウンベッドなら、全高が低いロープロファイルタイプ(バンクベッドがないスリムなタイプ)のシェルのまま就寝定員が増やせます。人数を増やすためだけに、シェルの改造までする必要がないのです。背が低い分、燃費や走行安定性の面でも有利かもしれません。今まで就寝定員の問題でヨーロッパ車を諦めていた方には朗報ですね。

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キャブコンだけでなくトレーラーにまで採用例が出てきたプルダウンベッド。使用しないときは天井に張り付くように収納される(画像提供:HOBBY Caravan)

「ベンツベース」の人気は意外と伸びず

昨年のこのショーで、FF(前輪駆動)を採用したキャンピングカー用シャシーを登場させたのがメルセデスベンツ社でした。ベース車としてヨーロッパ市場でシェア7割を誇るフィアット・デュカトの牙城(がじょう)に、FF投入でどこまで食い込めるのか興味津々だったのですが……。一年過ぎた今、ベンツベースが目立って増えた、という動きは感じられませんでした。

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ベンツシャシーの採用を宣伝するボード。ただ、ベンツの採用率はさほど高くない。相変わらずフィアット・デュカトがシェアトップを独走している

日本では「高級ブランド」として捉えられているメルセデスベンツですが、当地では一国産ブランドに過ぎません。コンパクトカーからトラックまで製造している総合自動車メーカーですから、トヨタや日産のようなポジションです。ただし、値段が高いのは事実。これまで同社のシャシーを採用していたのはフィアットにはないFRや4WDを重視したビルダーであり、デュカトと同じFFという土俵に立てば、フィアットと比較してコスト高は否めません。それが、積極的に選ばれない理由なのではないでしょうか。

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9速オートマチックの搭載を掲げたフィアットブース。低燃費や低騒音をうたっているが、価格への影響が心配だ

一方のフィアットはといえば、ユーロ6排出ガス規制に適合した新しいエンジンと、9速(!)オートマチックトランスミッションの展示があったのみ。昨年はコンセプトモデルが展示され、登場が期待された4WDですが、残念ながら今年は何の展示もなし。投入が断念されたのか、はたまた嵐の前の静けさなのか、まったくヒントもありませんでした。

バンコンとキャブコンの価格が逆転

いまヨーロッパで起きている意外な現象が、これまで比較的お手頃だったバンコンが、高かったはずのキャブコンの低価格化で価格競争力を失っているというものです。キャラバンサロンではここ数年、バンコンだけを集めた展示館が設けられていますが、今年の来場者は昨年より少ないように見えました。

バンコンは、すべて自動車メーカー製の車体で、内部を改装するだけのもの。一方キャブコンは、運転席とシャシーだけを自動車メーカーから仕入れ、居住部分はビルダーがつくるシェルを載せたもの。自動車メーカーからの仕入れ原価はバンコンのほうが高いものの、ビルダーの手が深く入ったキャブコンの方が最終価格は高いというのが、これまでの常識でした。

ファミリー向けキャンピングカーがトレンドに。ドイツ・キャラバンサロン2019リポート(上)

フィアット・デュカトよりも一回りコンパクトなクラスのバンコン(ベースはシトロエン・スペースツアラー)

それが逆転した背景にあるのは、キャブコン人気を背景にした価格競争です。キャブコンは依然として人気ですから、数もたくさん売られています。そしてベーシックなモデルでは、ほぼレイアウトのパターンも出尽くし、他社と差別化するための工夫も知恵も、出し切った状態にあります。そうなると、あとは価格の差で勝負するだけ。ディスカウント合戦に突入したキャブコンの価格体系が、結果的にバンコンを下回る事態になったのです。

高価なキャブコンよりも手軽なバンコン、というこれまでの価値観が通用しなくなった世界。「価格」という魅力を失ったバンコンは今後、どうなるのでしょうか。おそらくその答えは、来年のキャラバンサロンにあるのだろうと思います。

ファミリー向けキャンピングカーがトレンドに。ドイツ・キャラバンサロン2019リポート(上)

会場に犬連れがいるのも日本同様。ただし「犬連れOK」の表示はどこにもない。ショー会場のみならず、町のいたるところで犬連れに出会うが、すべては「飼い主の責任で」

さて次回は、トレーラーや部品、日本には入ってこない珍しい車両などのお話をお届けします。

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PROFILE

渡部竜生

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)がある。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫6匹とヨメさんひとり。

軽自動車ベースのキャンピングカーに、身長183cmの俳優・南圭介さんが乗ってみた

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1億8千万円のキャンピングカーも! ドイツ・キャラバンサロン2019リポート(下)

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