THE ONE I LOVE

はびこるヘイトに警鐘鳴らす 思い出野郎Aチーム・高橋一が選ぶ愛の5曲

はびこるヘイトに警鐘鳴らす 思い出野郎Aチーム・高橋一が選ぶ愛の5曲

 

こんな時代だからこそ、愛を聴きませんか、語りませんか──。“愛”にまつわる楽曲を紹介する連載「THE ONE I LOVE」。今回は、「マコイチ」の愛称で親しまれている高橋一さん(思い出野郎Aチーム)のセレクトによる愛の5曲を紹介する。

思い出野郎Aチームは、都会的でスタイリッシュなバンドサウンドと、それとは対極的ともいえるエモーショナルなボーカルで支持を集める8人組ソウルバンド。

9月18日に待望の3rdアルバム『Share the Light』をリリースした彼らに選曲を依頼したところ、トランペットとボーカルを務めるマコイチさんが思い入れの深い曲について熱く語ってくれた。

 

<セレクト曲>
 1 James Brown「Please Please Please」
 2 RCサクセション「June Bride」
 3 Sweet Thunder「Everybody’s Singin’ Love Songs」
 4 Jackie Wilson「(Your Love Keeps Lifting Me) Higher And Higher」
 5 思い出野郎Aチーム「同じ夜を鳴らす」

 

はびこるヘイトに警鐘鳴らす 思い出野郎Aチーム・高橋一が選ぶ愛の5曲

 

■James Brown「Please Please Please」

JB(ジェームズ・ブラウン)の代表的なソウルバラードです。歌詞としては「Please」を連呼していて、おそらくリリース当時から異色だったんじゃないかな。で、最終的には「行かないでくれ」みたいな。言葉を極限までミニマルにして、ボーカルの表現力だけでエモーショナルに伝えていくところに衝撃を受けました。JBってやっぱり「ゲロッパ」的なファンクのイメージだと思いますが、激しさだけじゃなくて、緩急のつけ方もすごい。

初めて聴いたのは高校生のときで、その頃耳にしていたJ-POPなどのラブソングとはまったく違う手法というか。日本語のラブソングって、言葉に対してあまり感情や情念を入れずに詩の内容で伝える傾向があると思いますが、これはその正反対。ラブソングを歌うということがラジカルなことでもあると気づかせてくれた、エポックメイキングな1曲だなと。

ソングライティングの面でも影響を受けています。僕は言葉をたくさん書いてから削っていくタイプですけど、「どこまで削って伝わるか」みたいなところで、この曲がいつも脳裏に浮かぶんです。

 

■RCサクセション「June Bride」

(忌野)清志郎さんにはめちゃくちゃ影響を受けています。名曲がありすぎて、1曲に絞るのはなかなか難しいですけど。この曲は三宅伸治さんが結婚するっていうことで作った曲らしく、皮肉ったりちゃかしたりしながらも「おめでとう」と祝う歌詞。でも、そういうバックボーンを取り除いて聴くと、急に「思いを寄せていた女性が結婚してしまう」みたいな切ない歌にも聴こえる。そこが個人的に好きなポイントです。

清志郎さんの詩って、背景の知識のあるなしで意味合いが変わってきたり、聴くときの気分でも全然違って聴こえたりするところがあります。情景描写とか、ちょっとした言葉の積み重ねだけで聴き手のイメージを喚起する手法はある種洋楽的だし、リズム&ブルース的。アコギがメインでフォーク調のサウンドだけど、実はソウルフルな曲ですよね。

RCから1曲選ぶときにこれを出してくる人も珍しいとは思うんですけど(笑)、こういう目立たない曲にも清志郎さんならではの魅力がしっかり現れているということもあって、選んでみました。

 

■Sweet Thunder「Everybody’s Singin’ Love Songs」

これはガラージクラシック(*)で、今回のアルバムに収録している「結局パーティは続く」でもちょっとだけ引用していて。誰か特定の人への愛というよりは、「愛を語り合いながらみんなで踊ろうぜ」っていう姿勢が僕らの目指しているものにすごく近いなって思います。もともとディスコの文化ってマイノリティーの、被差別側の人たちが作り上げていったものだと思いますが、そういう場でこういうピースフルな曲がかかるっていうのはすごく美しい光景だなと。今の日本にも必要なフィーリングだと思うんですよね。

楽曲の構造としても、ためるところとドンッて解放する、サビが繰り返されているだけみたいな作りには影響を受けてます。たとえば僕らの「ダンスに間に合う」って曲は、勝手に“ニルヴァーナ的”って呼んでるんですけど(笑)、そういう作りになっていて。あと、ベースとギターがユニゾンでリフをゴリゴリ刻みながらも曲調としてはメロウに進んでいく手法も、「夜のすべて」って曲でちょっと意識したり。ブルージーで強いリフを使っていてもロックには聴こえないっていうあり方は、けっこう僕らの目指しているところです。なかなかうまくいかないですけど(笑)。

*「ガラージ」は1970年代後半から80年代にかけてニューヨークに存在したクラブ「パラダイス・ガラージ(PARADISE GARAGE)」でかかっていた現在のハウス、テクノ音楽の源流になったダンス・ミュージックの総称。「クラシック(=名曲)」と掛け合わせることで「当時のダンス・ミュージックの名曲、定番曲」の意味をなす。「ガレージ」ではなく「ガラージ」と発音するのは、一部の客によって訛(なま)り、スラング化して呼ばれたためで、現在もこの「ガラージ」読みで親しまれている

 

 

■Jackie Wilson「(Your Love Keeps Lifting Me) Higher And Higher」

名曲中の名曲ですね。前作『楽しく暮らそう』に入れた「去った!」っていう曲でまんま元ネタにして、“ジャッキー・ウィルソン歌謡”って呼んでるんですけど(笑)。ラブソングとしては、「僕は君のことが好きだ」という言い方じゃなくて、「君の愛で高いところへ上がっていけるんだ」って言うのがすごくいいなって。それをこの、めちゃくちゃ高揚感のあるソウルサウンドでバーッと上げていく感じが大好きです。シカゴソウルのきらびやかさもありながら、曲が進むごとにどんどん、本当に高く高くなっていく感じ、歌詞とサウンドのマッチ感には憧れますね。なかなかこういう空気って出せないんだよなあ。

大学1年生くらいの頃に、シカゴソウルのコンピレーションアルバムとかで聴いたのが初めてだったと思います。単純にサウンドがカッコよくて「わあ、いい曲だなあ」って。ジャッキー・ウィルソンって、日本だとちょっと評価が不当に低い気がしていて。ものすごく偉大なシンガーだと思うんですけど。

 

■思い出野郎Aチーム「同じ夜を鳴らす」

自分たちの曲にはラブソングがほとんどないっていうか、正直に言ってしまうと、愛だの恋だのよりも歌わなければいけないことが現状ありすぎるなと思っています。この曲でも「ラブソングを歌う気にもなれず」って書いちゃってますし。ヘイトだったり差別的なことだったり、愛とは対極の感情が世の中にあふれすぎていて、それを見ないふりして愛や恋を歌うことは僕にはできない。

実は今回、レーベルから「ラブソングを作ってほしい」みたいなことを言われてたんですよ。でもこれは“ラブソング前夜”というか。ここで歌っているような社会不安を増幅させるヘイトや差別、そこを契機とした対立が解消して、世の中がいい方向に変わっていったときに、この曲は必然的にラブソングに変化していくのだと思っています。

今回のアルバムって、1曲1曲に歌詞を当て書きしてないんですよね。膨大に言葉をわーっと書いてから、それを切り取って各曲に分配するみたいな、今までとは違う作り方をしています。その中で「灯りを分けあおう」という曲がその長い文章全体を統括するような内容になっていたので、タイトル曲にしました。そういう書き方をしたものだから、まとまらなくてものすごく苦労しましたが(笑)、だからこそ結果的にはソリッドな表現になったんじゃないかなと思っています。

 

■プレイリスト

 

■思い出野郎Aチーム最新アルバム『Share the Light』

■Profile
思い出野郎Aチーム
2009年に多摩美術大学にて結成された8人組ソウルバンド。2012年には「FUJI ROCK FESTIVAL 2012」出演を果たし、2015年にmabanuaプロデュースによる1stアルバム「WEEKEND SOUL BAND」をリリースした。その後も順調にリリースを重ね、精力的なライブ活動のみならず、Negiccoやlyrical schoolへの楽曲提供、テレビ番組やお笑いライブの楽曲制作など、多岐にわたるフィールドで活躍中。

【LIVE SCHEDULE】

はびこるヘイトに警鐘鳴らす 思い出野郎Aチーム・高橋一が選ぶ愛の5曲

思い出野郎Aチーム presents ウルトラソウルピクニック
“Share the Light” リリースツアー

11月2日(土)
会場:愛知 今池 得三
OPEN18:00/START19:00
前売り 3800円(D代別)
チケットぴあ(P:162-446)・ローソン(L:45418) ・e+

11月3日(日)
会場:大阪 Shangri-La
OPEN17:00/START18:00
前売り 3800円(D代別)
チケットぴあ(P:162-300)・ローソン(L:57604) ・e+

11月9日(土)
会場:北海道 札幌BESSIE HALL
OPEN18:00/START19:00
前売 3800円(D代別)
チケットぴあ(P:162-340)・ローソン(L:12778) ・e+・LINE TICKET・タワーレコード札幌PIVOT店

11月16日(土)
会場:宮城 仙台enn2nd
OPEN18:00/START19:00
前売 3800円(D代別)
チケットぴあ(P:162-335)・ローソン(L:21786) ・e+

11月23日(土)
会場:福岡 INSA
OPEN18:00/START19:00
前売 3800円(D代別)
チケットぴあ(P:162-259) ・ローソン(L:82986)・e+

12月7日(土)
会場:東京 LIQUIDROOM
OPEN17:00/START18:00
前売 4000円(D代別)
チケットぴあ(P:161-677)・ローソン(L:72383) ・e+

 

<関連リンク>

思い出野郎Aチーム オフィシャルサイト
https://oyat.jp/

思い出野郎Aチーム| Twitter
https://twitter.com/o__y__a__t

(企画制作/たしざん、取材・文/ナカニシキュウ)

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