インタビュー

「誰かの心を救うヒーローになりたい」声優アワード2部門を受賞した天﨑滉平が目指すもの

2014年のデビュー後、瞬く間に人気階段を駆け上がっている若手声優がいる。2019年10月に放映のアニメ『ハイスコアガールⅡ』で主人公の矢口春雄役を演じる天﨑滉平だ。
2018年に放映された同アニメの1期で初主演に抜擢(ばってき)され、第13回声優アワードでは新人男優賞と歌唱賞(※)をダブル受賞した。

※ヒプノシスマイク(EVIL LINE RECORDSが手掛ける男性声優12人による音楽原作キャラクターラッププロジェクト)として受賞。

天﨑は『ハイスコアガール』1期で、ゲーム愛あふれるオタクキャラクターの少年を見事に演じた。別の作品では、ファンをときめかせるようなアイドルキャラクターを演じるなど役の振り幅も広く、人気を博している。

今の声優界をフレッシュに盛り上げる人物の一人である天﨑に、『声優として心から尊敬する人』を聞くと、“あの声優”の名前が挙がった。

「僕の目指すべき人なんです」

と強く語るその人物とは誰なのか。そして、今をときめく若手声優が目指す先とは――。

「真似(まね)するくらい大好きなんです」という“あの”人気声優

―― 天﨑さんが声優として「この人すごいなぁ!」と思う方はどなたですか?

天﨑滉平(以下、天﨑) 悩みますね! 皆さん本当に素晴らしくて尊敬しているので、一番を決めるのはなかなか難しいのですが、お一人挙げるなら同じ事務所の先輩である松岡禎丞(まつおかよしつぐ)さんですね。

松岡禎丞
9月17日生まれ。北海道出身。アイムエンタープライズ所属。
主な出演作に「ソードアート・オンライン」(キリト)、「食戟のソーマ」(幸平創真)など

―― なぜ松岡さんなのでしょうか?

天﨑 お芝居に対する姿勢が真っすぐで。そして、とにかくお芝居が面白い。
禎丞さんがどのキャラクターを演じることになっても、絶対に面白くなると誰もが期待するくらい、今までの実績が信頼につながっていると思います。
禎丞さんは、役に対しても作品に対しても真摯(しんし)に、ストイックに取り組まれている姿が本当に素晴らしいし、カッコいい。

「誰かの心を救うヒーローになりたい」声優アワード2部門を受賞した天﨑滉平が目指すもの

あとは、禎丞さんの人柄も大好きなんです。誰にでも分け隔てなく親切で、分からないことを聞いたり相談したりしたときには、親身にアドバイスしてくれます。

―― 天﨑さんが松岡さんに相談して印象に残ったアドバイスはありますか?

天﨑 お芝居をするにあたって、尊敬する先輩の芝居を真似した方がいいのか、真似しない方がいいのか、という悩みにぶつかったことがありました。先輩の言い回しや発声を参考にすることは、モノマネになってしまうんだろうか? と。

そのことを禎丞さんに相談したら、「真似した方が良い」と言ってくれました。それは、誰かの演技をそのまま真似するという意味ではなくて。「自分の中にその誰かの演技を取り入れた上で、自分なりに反芻(はんすう)して演じることができれば自分の演技になる。モノマネじゃなくて学ぶってこと」だと。

―― すごくグッとくるアドバイスですね。

天﨑 そうなんです。教科書に載っているような回答じゃなくて、禎丞さんの経験が乗った上でのアドバイスなので、いまだに印象に残っています。

そこで肩の荷が下りたこともあって、今では禎丞さんの飲み物を真似するようになりました(笑)。

「誰かの心を救うヒーローになりたい」声優アワード2部門を受賞した天﨑滉平が目指すもの

―― 飲み物ですか?

天﨑 禎丞さん、どの現場でも炭酸飲料しか飲まないんです。炭酸の何がいいんですか? って聞いたら「なんかいいんだ」と言われて、禎丞さんが言うならなんかいいんだろう! と思い、僕も真似して今では現場に必ず炭酸飲料を持ち運ぶようにしています。

僕が禎丞さんをリスペクトして炭酸を飲んでいると周りにも公言していたら、禎丞さんとご一緒してる番組で「利き炭酸ゲーム」をすることになって。結果、僕が僅差(きんさ)で勝つという、そんなマニアックな遊びをするようになりました(笑)。

偶然耳にしたラジオに導かれ、声優の道へ

―― 松岡さんとは同じ事務所の先輩後輩ということですが、もともと仲は良かったんですか?

天﨑 いや、僕がデビューしてから3年くらいは挨拶(あいさつ)しかできなくて……。デビューする前からアニメ好きとして禎丞さんのことは知っていて、ずっと話したいと思ってはいたのですが、僕も禎丞さんも人見知りな部分があるので、最初はお互い笑顔で挨拶するだけでした。

―― 何がキッカケで今のような関係に?

天﨑 とある作品で共演する機会があって、その作品の打ち上げがキッカケですね。打ち上げ中に「声優を目指したキッカケを話そう」と、キャストのみんな一人ひとりが声優になったキッカケを話していったんですよ。
で、その時は何もなかったんですけど、打ち上げの翌日に禎丞さんから声をかけられて。「あまちゃん(天﨑さんのあだ名)が声優を目指した理由、すてきだった。その思いを持っていれば、どんなに大変なことがあっても絶対乗り越えられるよ」と。すごく印象に残っていることの一つです。

そこから少しずつ話せるようになって、今に至りますね。

「誰かの心を救うヒーローになりたい」声優アワード2部門を受賞した天﨑滉平が目指すもの

―― 松岡さんから素敵だと言われる、天﨑さんが声優を目指したキッカケ、気になります。

天﨑 アニメに救ってもらった、アニメはヒーローだという気持ちが大きくて、自分も同じようにアニメの声優という仕事を通して誰かの心を救いたい、ヒーローになりたいと思ったのが最初ですね。

―― 救われたというのは?

天﨑 僕、高校生活が楽しくなかったというか、あまりうまくいっていなくて。毎日悩んでいたり落ち込んだりしていたとき、たまたま深夜にテレビをつけたら『涼宮ハルヒの憂鬱』がやっていたんです。それまではアニメ・マンガ・ゲームに対して興味がとても薄くて、目に留まれば見る、くらいだったんですけど、高校時代にハルヒを見てからアニメにドハマりしちゃって。

アニメを見ている30分間は、別の世界で非現実的な体験ができている気持ちになれた。見終わった後には、落ち込んだ気持ちがちょっと明るくなって、前向きに物事を考えられるようになりました。アニメに救ってもらったという感覚になったんです。

「誰かの心を救うヒーローになりたい」声優アワード2部門を受賞した天﨑滉平が目指すもの

あとは、桃井はるこさんのラジオの影響も大きいですね。
声優という職業を認識したのは、桃井はるこさんがキッカケかもしれません!

桃井はるこ
声優、作詞・作曲・編曲・歌唱をこなすシンガー・ソングライター

―― アニメに興味なかったのに、どうやって桃井さんのラジオを聞いたんですか?

天﨑 本当にたまたまだったんですけど、高校生の時に聞いていたラジオがあって。そのラジオの前の時間に流れてたのが桃井はるこさんがパーソナリティーを務めていた『ウラモモーイ』だったんです。最初は、ラジオのエンディングだけ偶然聞いて、不思議な声の人だなと興味が湧いて(笑)。翌週からしっかり聞き始めました。

桃井さんのラジオを聞いていなければ、声優という職業を認識しないまま、今は別の仕事をしていたかもしれないですね。

声優として一皮むけた、主役を演じるということ

―― 今では声優としてかなり活躍されているなと。『ハイスコアガール』含め様々な作品で主役や重要なキャラクターを演じ、色々な経験を積んできて、何か心境の変化はありましたか?

天﨑 最初に志した“アニメを通して誰かの心を救いたい”という想いは変わってないです。

ただ、実際に作品に携わらせて頂く中で、声優という仕事は作品を作り上げるほんの一部分の役割だということに気づかされました。

―― 色んな人たちが関わって一つの作品として完成されますもんね。

天﨑 僕ら声優が声をあてるまでに、たくさんの人が作品づくりに携わっていて、色んな人の愛が詰まっている。だからこそ、作品に関わっていく上では、声優としてだけ頑張るのではなく、アニメを支える一つのパーツになろうという気持ちが今は強いです。

「誰かの心を救うヒーローになりたい」声優アワード2部門を受賞した天﨑滉平が目指すもの

『ハイスコアガール』で初めて主役・座長という立場に立たせて頂いて、さらに大きく感じた部分でもありました。春雄役が決まったとき、「僕がみんなを引っ張っていくなんて責任重大だ……」と思っていたんですけど、実際は全く違って。
スタッフやキャストの皆さんが僕を主役に引き上げてくれてる、支えられて春雄を演じることができてるって感覚になりました。自分が脇を演じていたときには感じてないものでしたね。

―― その気づきがあったことで、主役・座長として意識するようになったことはありますか?

天﨑 とにかく全力を出すことに尽きますね。『ハイスコアガール』の1期が終わったときの打ち上げで、ガイル役の安元洋貴さんが「天﨑くんが全力だったからみんなもついてきた、俺らももっと全力でやろう! って気持ちになれたよ」と言ってくださって。そのとき、座長がすべきことって前を向いて、一生懸命に、真面目に、全力で頑張ることだと思ったんです。

僕が前を向いて全力で「良い作品をつくる!」というゴールに、ブレずに突き進めば、みんなもそれに向かって走っていける。
なので、『ハイスコアガールⅡ』でも、とにかく全力でゴールに突き進むことを意識してます。

アニメを見た人の何かしらの“キッカケ”になりたい

―― 天﨑さんが全力を注ぐ『ハイスコアガールⅡ』ですが、10月からアニメの放映がスタートして、今回は原作漫画の最終話までが描かれるということで。見どころを教えてください。

天﨑 まず、ハイスコアガールの特徴でもあるゲームシーンは1期同様、ぜいたくに盛り込まれています! ゲーム好きな方はもちろん楽しめますし、ゲームを知らない方には新しい知識として楽しんでいただけたらと思ってます。

「誰かの心を救うヒーローになりたい」声優アワード2部門を受賞した天﨑滉平が目指すもの

さらに今回は、“アーケードラブコメディー”の“ラブ”の部分をぜひ意識して見てもらいたいなと! 1期はコメディー要素がメインで、キャラクターみんなが幼かったこともあり、ゲームを純粋に楽しむ様子が描かれてましたが、Ⅱでは人間模様がかなり丁寧に描かれてます。キャラクターが成長していく中での心境の変化、それに伴う人間関係の変化、そして、一貫して変わらないもの。すべてに注目していただきたいですね。

――見どころ満載ということですね。

天﨑 満載なので何回も繰り返し見ていただきたいですし、1秒も逃すことなく見ていただきたいです(笑)。
原作のある作品をアニメーションで最後まで届けられることがものすごくうれしくて。原作ファンの方にも、アニメでの良さをお届けしたい。大好きな作品がアニメを見たことで、さらに大好きになってもらいたいです!

「誰かの心を救うヒーローになりたい」声優アワード2部門を受賞した天﨑滉平が目指すもの

そして、色んな人の愛が詰まって出来上がっている作品です。僕も作品を支える一人として、春雄を演じます。『ハイスコアガールⅡ』を見てくださる皆さんのちょっとした息抜きになれるような、明日の糧になれるような、生活の中の何かしらのキッカケになれたらうれしいです。

(取材・文=阿部裕華、写真=野呂美帆)

プロフィール

 

天﨑 滉平(あまさき・こうへい)
10月22日生まれ。大阪府出身。アイムエンタープライズ所属。主な出演作に「ハイスコアガール」(矢口春雄)、「DOUBLE DECKER! ダグ&キリル」(キリル・ヴルーベリ)、「異世界チート魔術師」(西村太一)など。第13回「声優アワード」新人男優賞、歌唱賞受賞。

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