めぐり、めぐって純喫茶

変わりゆく町で変わらないもの 神保町「ラドリオ」で本とナポリタンを楽しむ

昭和の香りただよう純喫茶には、そのお店ならではのストーリーや、おいしいコーヒー、そして食事があります。ともに1996年生まれの俳優・見津 賢と写真家・ヨシノハナが、東京のさまざまな純喫茶をたずねる本連載、第2回は神保町の「ラドリオ」です。

 

文学の街 神保町の有名な純喫茶「ラドリオ」

休日。今日の予定は夜からだけど、早めに家を出た。せっかくの休みだから家にいるのはもったいない、でも特に用事はないし、歩き回る気分でもない。そんなときにおすすめの、ゆっくり本を読みながら、ランチができるお店をご紹介。

変わりゆく町で変わらないもの 神保町「ラドリオ」で本とナポリタンを楽しむ

世界最大の古書店街を有する街、神保町。大学や出版社なども多く、古くから学生や作家、編集者たちであふれるこの場所は、高層ビルの建設などによって新しく変化しつつも、そこはかとなく“昭和レトロ”を感じさせてくれるのです。今回の目的地は、神保町を代表する書店「書泉グランデ」と「三省堂神保町本店」の路地裏にある、創業70年のラドリオ。

変わりゆく町で変わらないもの 神保町「ラドリオ」で本とナポリタンを楽しむ

入り口には可愛らしいメニュー表。これを見て、譜面台のように思うのは、ぼくだけでしょうか? 窓についている巨大な……フォーク? そしてこの壁看板。どうしてもぼくは、こういう昭和らしいフォントにもえてしまいます。

変わりゆく町で変わらないもの 神保町「ラドリオ」で本とナポリタンを楽しむ

変わりゆく町で変わらないもの 神保町「ラドリオ」で本とナポリタンを楽しむ

歴史を感じさせる木製のドアを開けてみます。店内は薄暗いけれど、ランプの暖かい光で落ち着いた雰囲気。壁一面を埋めつくす、変色したれんがに歴史を感じます。ちなみに「ラドリオ」とはスペイン語でれんがという意味。よく見ると、特徴的な置物や絵画も至るところに飾られています。そして本棚には文庫本など、たくさんの本がずらり。

変わりゆく町で変わらないもの 神保町「ラドリオ」で本とナポリタンを楽しむ

早速、お目当てのナポリタンを注文。その間に、店長さんにお店について聞いてみることにします。ラドリオは、なんとアルバイトの方たちが経験を積んで、店長になるというシステムなんだとか。

「私も喫茶店が好きで、よく通っていました。そのうち喫茶店で働いてみたいと思うようになり、雰囲気が好きで通っていたラドリオで働き始めて、気づいたら店長を任せられるようになりました」

変わりゆく町で変わらないもの 神保町「ラドリオ」で本とナポリタンを楽しむ

「今はナポリタンとカレーを出しているけど、10年前の店長のときは日替わり定食なんかもあったりしたらしいですよ。ときどきの店長によって、お店のメニューは変わっていくんです」

意外すぎる、この雰囲気で定食……。それもまた粋だな、あと10年早く来ていれば、どんな定食が食べられたのだろう……。なんて思っていると、ナポリタンが運ばれてきました!

おお、シンプルだけど食欲をそそるナポリタン。いい香り! 大きめにカットされたピーマンが目立ちます。ナポリタンといえば太麺のところが多いけれど、ラドリオは細麺。ランチセットはサラダとスープがついています。それでは、いただきます!

変わりゆく町で変わらないもの 神保町「ラドリオ」で本とナポリタンを楽しむ

おお? すこしスパイシーで大人な味です! おいしい。最初はアルデンテなのかなと思ったけど、たぶん、しっかりと水分を飛ばして炒めてるんだろうな。ちなみにソースにはケチャップを使っていて、あらかじめコショウやタバスコを入れてあるそうです。どうりで、大人の味だと思いました・・・・・・。ぼくはナポリタンに限っては、パサつくくらい粉チーズをかけて食べるので、今回もかけてしまいます。

変わりゆく町で変わらないもの 神保町「ラドリオ」で本とナポリタンを楽しむ

 

「ウィンナーコーヒー」発祥のお店としても有名

「昔、常連の大学教授がウィーンに行ったときに、クリームが入ったコーヒーを飲んだという話を聞いたらしいんですね。ほかのお店にはないものを出したいとおもった当時の店長は、戦後、まだ生クリームが浸透していない時代にケーキ屋さんで作り方を学んだようです。それでできあがったのが、うちのウィンナーコーヒーなんです」

驚きました。ラドリオのウィンナーコーヒーは、ぼくも好きでよく頼みますが、このような歴史があったとは。ちなみに当時は、店長の愛子さんという方が50年にも渡って、お店を切り盛りしていたそうです。「日本で初めてシェイカーを振った女性」という説もあるのだとか。

変わりゆく町で変わらないもの 神保町「ラドリオ」で本とナポリタンを楽しむ

 

そういえば、お店に入ったときから気になっていた、彫刻や絵画ってなんだろう。

「あれは、昔から芸術家や文学者のお客さんが多く、その方たちから頂いたもので、代金の代わりに絵を持ってきたお客さんにも、愛子さんはコーヒーを提供していたらしいんです。棚にある本も、常連さんがほかのお客さんも読めるようにと置いていったもの」

たくさんの芸術家や作家が集まるこの街で、お客さんを思う店長がいるからこそのエピソードですし、愛子さんがどれだけ慕われていたのかが分かるエピソードです。なんとなく雰囲気が好きで通っていたぼくも、ここまで歴史が詰まっているお店だとは知りませんでした。

ちなみにお店のマッチやコースターも、常連さんがデザインしたものだそうです。ぼく、ここのマッチ好きで、何度かもらっています(笑)。

変わりゆく町で変わらないもの 神保町「ラドリオ」で本とナポリタンを楽しむ

時代や働く人によって変化してきたラドリオ。そこには変わらないお客さんを思う気持ちがありました。70年の歴史の中でさまざまな人々が愛したこのラドリオで、ゆっくり読書をしながら、ナポリタンを食べに来てみてはいかがでしょう?

変わりゆく町で変わらないもの 神保町「ラドリオ」で本とナポリタンを楽しむ

(ランチセット  ナポリタン  税込1,026円)

喫茶ラドリオ
TEL 03-3295-4788 東京都千代田区神田神保町1-3
営業日:月曜日~水曜日 11:30~22:30(ラストオーダー22:00)
土日12:00~19:00(ラストオーダー18:30)
定休日:祝日・年末年始

 

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(文・見津 賢 写真・ヨシノハナ)

 

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PROFILE

  • 見津 賢

    1996年神奈川県出身、青山学院大学理工学部卒業。在学中に始めたモデル活動をきっかけに芸能界に入る。現在はCMやドラマ、映画などに出演している若手俳優。

  • ヨシノハナ

    1996年東京都出身。東京造形大学デザイン学科写真専攻を今年3月に卒業。 元フォトグラファーの父の影響で写真を始める。 雑誌やファッションブランドのルックを撮影するほか、個展など多方面で活動している新進気鋭の写真家。

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