小川フミオのモーターカー

世界中を驚かせたスタイリング フェラーリ365GT4/BB

フェラーリ365GT4/BB

365GT4/BBのエアダム一体型バンパーは512BBのようなリップをもたない

「フェラーリ365GT4/BB」は、1971年にプロトタイプが出て、それまで見たこともなかった斬新なスタイルで世界中を驚かせた。

ピニンファリーナというイタリアはトリノに本拠を置くカロッツェリアがボディーをデザインした。365GT4/BBが生産開始された1973年には、ランボルギーニがクンタッチ(カウンタック)を発表している。

以来、「BBとクンタッチのどちらが好きか」という議論が自動車好きのあいだで交わされるようになった。自動車デザイナーの世界でも、フェラーリ派とクンタッチ派に分かれていた。

フェラーリ365GT4/BB

365GT4/BBのリアランプは6灯式で、512BBでは4灯式になる

「僕たちの世代はフェラーリこそ世界で最も美しいクルマだと思っていたんですが、若い連中はランボルギーニだと言うんです」。80年代後半にインタビューした、ある自動車デザイナー(1959年生まれ)はそう語っていた。

デザイナーの嘆き(?)はわかる。同時期に、フェラーリが他にも印象的なスタイルのモデルを発表しているのだ。67年のディーノ206GT、68年の365GTB/4デイトナ、73年のディーノ308GT4、75年の308GTBとGTS、といったぐあいである。

どれも、ロングノーズとクーペ的なキャビンの組み合わせという、従来のスポーツカー像とは一線を画したスタイリングを特徴としていた。

フェラーリ365GT4/BBのシート

シンプルな形状だが座り心地のいいシート

フェラーリに限らず、ベルトーネが手がけたランボルギーニや、ジウジアーロのマセラティなど、イタリアでは、まるで生物がいきなり爆発的な勢いで進化するように、スポーツカーのデザインがいっきに新しい時代へと突入した感がある。

365GT4/BBの画期的な点は、車名の由来でもある気筒あたり365ccの排気量を持つ4390cc12気筒エンジンを後車軸前にミッドシップしたこと、フロントフードとリアのエンジンフードががばっと開く競技車両のようなメンテナンス性のよさ、それにクンタッチより2キロ速い時速302キロの公称最高速など、いろいろあげられる。

フェラーリ365GT4/BBのエンジン

365GT4/BBの車名は、気筒あたりの排気量+GT(グランドツアラーというクルマのキャラクター)+4本のカムシャフト+ベルリネッタ(伊語でクーペ)+ボクサー(写真のように180度水平のエンジン形式)を意味している

車体色にかかわらず下面を黒色としたことで精悍(せいかん)さを感じさせる車体の塗り分けもよかったし、ポップアップするヘッドランプや、その下の大きな四角いポジションランプ、さらにずらりと並んだ円形のリアコンビネーションランプなども小技が効いていた。

前輪をおさめるホイールアーチぎりぎりまで低められたフロントフードを持つスタイルも、レースカーのようで、超がつくぐらいカッコよかった。

クロモドラ製の軽合金ホイールは現在のようなボルトオンでなく、センターロック方式だったのも、レースカーの技術を量産車に転用していることをさかんに謳(うた)っていたフェラーリらしくて魅力的だった。

フェラーリ365GT4/BB

スポーツカーでなく長距離ドライブも得意なGTなのでキャビンも余裕をもった大きさだ

プロのデザイナーが365GT4/BBを評価するのは、あえてノーズ(前輪より前の部分)をうんと長くしたプロポーションだ。英国やドイツのスポーツカーは、ここをなるべく短くする。逆にフェラーリは後輪から後ろの部分を短くする。英独の場合は長くする。

イタリア人の美意識的には、英独のクルマによく見られる、いわゆるショートノーズ&ロングデッキのスタイルは、古くさいと聞いたことがある。馬車のプロポーションをひきずっているからだ。

365GT4/BBは全長が4360ミリ、ホイールベースが2500ミリと比較的コンパクトだったので、ショートノーズよりロングノーズのほうが空力的に有利だという“科学的”な理由もあったと思うが、長いノーズは、新しい時代のスポーツカー像を模索して出来上がったデザインだと思う。

フェラーリ365GT4/BB

ホイールサイズは15インチで、タイヤの偏平率が70パーセントというのが時代を物語る

76年にはマイナーチェンジを受け、365GT4/BBは「512BB」となった。エンジン排気量が4942ccに拡大すると同時に、車名も従来の“1気筒の容量”でなく“全排気量+気筒数”というシステムが採用されたのだ。

当時は米国を中心に各市場で排ガス規制が敷かれていたため、最高出力は低下したが、最大トルクを増し、一般道での操縦のしやすさが向上したのだった。

このあと、84年には後継車となる「テスタロッサ」がデビューした。テスタロッサもカッコいいし、太いトルクで運転しやすいけれど、大胆に見えるスタイリングなどは、逆に大向こうウケを狙いすぎていたような気もした。

365GT4/BBが最後とはいわないけれど、フェラーリが心の底から“これだ”と信じて開発したスポーツカーは、1980年代になると、だんだん少なくなっていったように思う。その意味でも、365GT4/BBは抜きんでた存在感を持つモデルである。

【スペックス】
車名 フェラーリ365GT4/BB
全長×全幅×全高 4360×1800×1120mm
エンジン形式 4390ccV型12気筒DOHC
最高出力 380ps@7200rpm
最大トルク 44.0mkg@3900rpm

(写真=Ferrari 提供)

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PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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