私の一枚

『時効警察はじめました』出演の内藤理沙 家族ケンカの原因になった“大人の役”に「また挑戦したい」

2018年の春、両親と母方の祖父母が東京に来た時に新宿御苑で撮った一枚です。ちょうど桜が満開で、素敵な家族写真になりました。

内藤理沙

両親とは今でもすごく仲がいいですね。母とは特に話すことがあるわけでもないのによくテレビ電話で話をしていますし、ラグビーをやっていた父とは一緒に秩父宮ラグビー場に試合を観(み)に行きます。女の子って高校生ぐらいになると「お父さんが汚い」とか「臭い」ってよく言いますけど、みんなどうしてそんなにお父さんがイヤになるんだろう。まあ確かに臭い時もありますけど(笑)、だからといって「もう無理」みたいなことはまったく思ったことがないです。

祖父母とは同居ではありませんでしたけど、実家のすぐ裏に住んでいて、両親が共働きだったので、子供の頃はいつもおばあちゃんと一緒。祖母のお友達とお茶をしたり、『水戸黄門』や『渡る世間は鬼ばかり』を一緒に観たりしていました。

劣等感から自信をなくし引っ込み思案な性格に

『国民的美少女コンテスト』に応募したのは、中学2年生の時に父が新聞で募集の記事を見つけたことがきっかけです。3年生になると受験勉強が始まるし、高校に入ったらいろいろと忙しくなるだろうから、今しかできないだろうということで、思い出作りぐらいの軽い気持ちで応募しました。絶対にデビューするぞとか、賞を取るぞとか、そんなことはまったく考えていませんでした。

でも、コンテストに参加している子たちはみんな芸能界を目指していろいろ努力をしている子たちばかり。ボイストレーニングに通ったり、ダンスやバレエを習っていたり、日焼けしないように気を配っていました。私は何もしていなかったので、1次、2次と審査が進んでいくにつれて、「どうして私はここにいるんだろう」と思うようになりました。運よく最終審査まで残り、デビューさせていただきましたけど、端からみんなに負けているという劣等感がありました。

デビュー後、地元の高校に通いながらお仕事をしていた頃も、電車に乗っていると「それで美少女かよ」みたいなことを面と向かって言われたりして、さらに自信をなくしていきました。その頃の私は強くなかったから、そういう言葉をすべて正面から受け止めてしまって、いつの間にか「変に目立つぐらいならおとなしくしていよう」と思うようになっていました。あまり前に出ず、平凡に、波風立てずにいようって。

前に出て褒められたらうれしいけれど、マイナスな意見をぶつけられるリスクもあるじゃないですか。そんな気分を味わうぐらいなら、プラスにならなくてもいいから前に出ず、褒められも怒られもせず、あまり人と関わらないようにしていよう。そんなネガティブな考えが自然と身について、引っ込み思案になってしまっていました。

役と向き合い自分を出し切ることを知った『ドクターX』

内藤理沙

そんな中、2014年に、秘書役で出演した『ドクターX』は私にとって大きな変化のきっかけになりました。デビュー以来ずっと当たり障りなくやってきたせいか、それまでは現場で監督さんに怒られることもほとんどなかったのですが、『ドクターX』では今まで言われたことがないような言葉で監督さんからお叱りを受けることが多くて、頭が真っ白になってセリフが思い出せなくなるようなこともありました。

でもその時に思いました。今までの私は役をこなすことばかり考えて、しっかり向き合えていなかったんじゃないか。だから怒られもしなかったんだって。せっかくいただいた役を演じきれないなんてもったいない。そう思うようになりました。

まだ、いろいろ考えて落ち込むこともたくさんあります。でも、演技に打ち込み、演じることが楽しいと思えるようになったのは、『ドクターX』での経験のおかげです。

シャワーシーンで家族が大ゲンカに

祖父は、今でこそすごく私を応援してくれていて、ドラマに出れば必ず観てくれるし、お友達に「今度理沙が出るんだ」と言ってドラマの放送日を教えたり、いろいろ宣伝したりしてくれていますけど、もともとは芸能界に入るとか東京に出るとか、そういうことには絶対反対の人だったんです。母が「もしもダメだったら帰らせるから」と説得して、ようやく送り出してくれました。

そんな経緯があったので、『ドクターX』でシャワーやベッドのシーンが放送された時は大変でした。共演者とのからみがあったわけではないのですけど、祖父は母を呼び出して「お前はあんなことをさせるために理沙を東京に出したのか! だから反対だったんだ!」みたいな感じで怒りだして、母も「理沙だって仕事なんだから仕方ないでしょ!」って反論して、もう大変なケンカになったそうです。

後日、家族でよくお世話になっている内科の先生が、祖父に「頑張っているんですから応援してあげなきゃだめですよ」って言ってくれて、ようやく落ち着いたみたいです。その後で、私も祖父に言いました。「私ももう大人だし、後悔するのは嫌だから、自分がやりたいと思った仕事であれば、またああいう役を演じることもあるからね」って。

祖父にとっては、いつまでもかわいい孫のままなんですよね。両親にとっても、子供はいくつになっても子供だし。でも、いつまでも甘えてはいられないから、「もう大人なんだよ」というところを見せなくちゃいけないとずっと思っていました。今思えば、『ドクターX』がそのタイミングだったのかもしれません。いろんな意味できっかけを作ってくれたドラマでした。

みなさんの目に焼きつく何かを残していきたい

内藤理沙

10月11日スタートのドラマ『時効警察はじめました』では交通課の女性警察官を演じる内藤理沙さん

この10月から『時効警察はじめました』というドラマに出させていただきます。12年前に放送していたドラマの続編で、当時からのファンの方もいらっしゃるでしょうから、「あの子が入って変わっちゃったよね」と思われることがないよう、入ったからこそ「新しい『時効警察』になったね」と感じてもらえるように演じたいです。

最近は、家族や応援してくださる方のために、どんな役であっても、ワンシーンでもみなさんの目に焼きつく何かを残していきたいと思っています。これからは、「前に出る」ことは前提で、もうちょっと大人の役、『ドクターX』の時のような役にも挑戦したいです。その時には、私から直接祖父に「またああいうのをやるからね!」って言います(笑)。

両親と祖父母、みんな口をそろえて、「やめたくなったらいつでも帰ってきていいよ」と言ってくれます。悩んでいた頃のことを思い返すと、今でもお仕事を続けていられるのが不思議なぐらいです。いつやめてもおかしくないぐらい、環境の変化に自分の気持ちが追いついていませんでした。でも、家族のそんな言葉があったからやり続けてみようって思えたのかもしれないですね。帰る場所があるって、本当にありがたいです。

(聞き手・髙橋晃浩 写真・小山昭人)

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        ◇

ないとう・りさ 1989年、群馬県生まれ。2002年、「第8回全日本国民的美少女コンテスト」に出場し、翌年「美少女クラブ21」のメンバーとしてデビュー。2007年にドラマデビューし、『ドクターX~外科医・大門未知子~』第3シリーズの他、『ビブリア古書堂の事件手帖』、『家政夫のミタゾノ』第2シリーズ、『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』など話題のドラマに多数出演。10月11日スタートの金曜ナイトドラマ『時効警察はじめました』(テレビ朝日系)では女性警官・浜田山役を演じる。2017年「ぐんま特使」に任命。

■『時効警察はじめました』公式サイト
https://www.tv-asahi.co.jp/jikou2019/

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私の一枚
著名人の思い出の写真と、その1枚にまつわるエピソードを本人にインタビュー。今でも忘れられない「あのとき」や、「あのとき」はわからなかったけれど今ならわかることもあるようです。

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PROFILE

髙橋晃浩

福島県郡山市生まれ。ライター/グラフィックデザイナー。ライターとして有名無名問わず1,000人超にインタビューし雑誌、新聞、WEBメディア等に寄稿。CDライナーノーツ執筆は200枚以上。グラフィックデザイナーとしてはCDジャケット、ロゴ、企業パンフなどを手がける。マデニヤル株式会社代表取締役。

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