或る旅と写真

壮大な氷と火山の国 フォトグラファー仲間と一周したアイスランド

フォトグラファーの高橋伸哉さんが、「或る旅」の記憶をつづるフォトダイアリー。今回はアイスランドです。

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自分探しの衝動にかられて。または絶景写真を撮るため。単純に旅が好きでたまらない。理由は様々だが、世の中には、世界を自分の目で見て回らないと気がすまないという人たちが一定数いるようだ。そんな“旅人”たちが、「今まで自分が見た景色は何だったんだ?」という思いに駆られ、また必ず訪れたいと唸(うな)る土地をご存じだろうか?

それは、「地球の果て」とも称されるアイスランド。最近の映画でいうと『LIFE』の主人公がスケボーで走っていた場所だ。簡単に説明すると、RPGの『ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』の世界観のリアル版。氷と火山の国。えぇ、すごいんです。
とはいえ、ひたすら続く一本道を何時間も車を走らせると、たまに休憩ポイントのように現れるかわいい港町があったりして、もう実際に目で見て確かめないと、この魅力はなかなか感じてもらえないかと思う。

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カラフルな街から、道なき道の最果てへ

壮大な氷と火山の国 フォトグラファー仲間と一周したアイスランド

スタート地点はレイキャビクという、それはそれはオシャレでかわいい街から。
せっかくアイスランドを旅するなら、中途半端は嫌だ。ということで、僻(へき)地のフィヨルドも含めて、アイスランドを車で一周する旅をしてみた。

後にも先にもフォトグラファーとして一番ハードな旅だった。
全員がフォトグラファーの男女4人旅。全員既婚者で、子供もいる。合言葉は「無事に生きて帰ろう」。

ガードレールもない僻地の道なき道を、自分たちのものを含めてクルマが爆走していく。もうこのまま谷底に突っ込むんじゃないだろうかと思って、遠い目をしてましたねぇ。

壮大な氷と火山の国 フォトグラファー仲間と一周したアイスランド

ついつい遅くまで撮影(遊び)に夢中になり、次の宿泊予定ポイントまで200kmとか聞くと、もうHPも限界で心が折れそうになった。ある山越えの道では、完全に霧に包まれてしまい、時速数kmのノロノロ運転。ナビゲーションを見ると、道の両脇は海みたいに表示されていて、「山の上なのになんで海?」「ココハドコ? もしかしてもう死んでしまった?」という半端ない恐怖感を抱いた。実際は周囲は湖だったのだが。

旅の後半は、人間を見かけることは少なく、数としては羊の方が圧倒的に多かったなぁ。村上春樹はここで小説を書いてたんじゃなかろうか。『羊をめぐる冒険』とか。それぐらいの羊の世界だった。

初体験の白夜による、喜びと苦しみのループ

壮大な氷と火山の国 フォトグラファー仲間と一周したアイスランド

アイスランドを旅したのは8月。ハイシーズンということもあって、人気の場所は観光客がたくさんいた。北欧諸国のシンプルでオシャレな街並みは、それだけで幸せな気分になる。そして、我々を最も喜ばせ、同時に苦しめたのが、初の経験だった白夜という現象。これも簡単に説明すると、緯度が高いため、太陽がなかなか沈まず、夜の10時、11時ぐらいになってやっと日が沈みはじめ、翌朝の3時ぐらいにはもう日が昇るという具合だ。

この旅での走行距離が8日で3000kmを超えた。みんなできるだけ写真を撮りたい。でも次の宿は決まっているので、必ずそこにたどり着かないといけない。でも写真が撮りたい。白夜で1日が長いので、つい寄り道もしてしまう。夜の遅くにやっと次の宿に到着し、明日の用意をする。この繰り返しで毎日ヘトヘトになった。

今振り返れば、よく体力が持ったなと思う。すべてはアイスランドという超大自然の魅力と、たまに休憩できる小さな田舎町があったおかげだろう。あとフォトグラファー仲間が一緒で飽きることもなかった。予算を抑えるために、全員同じ部屋。旅の間は家族のようになって楽しかった。しっかり者の2人と、それに頼りきる2人。あ、自分は写真を撮るのに夢中で頼りきる方です(笑)。

地球を丸ごと感じるような壮大な旅

壮大な氷と火山の国 フォトグラファー仲間と一周したアイスランド

アイスランドの旅は、濃厚すぎるのとすごい景色がたくさんなので、一つ一つ説明していったらとてもじゃないがここでは書ききれない。ただ、アイスランドといえば、圧倒される大きさと迫力の滝が有名だろう。どれも名所と言えそうな滝があちこちにあるので、旅の後半では立ち寄らなくなった。帰国後、日本のどの滝を見ても、米国・オレゴンの有名な滝を見ても、特に驚きがなかったのは、アイスランドで慣れてしまったからだと思う。

滝以外にも、よくSF映画のロケ地にもなる火星のような場所もあれば、小川が流れるオアシスのような場所もあった。車を途中で止めて、大きな声で叫びたくなる雄大な景色。ぐるっと360度見回しても障害物のない空と大地が広がっている。

天気の変わりが早く、風も雨も遠慮なくやってくる。晴天より曇り日が多く、その代わり晴れたら虹がきれいなアーチをかける。自分も虹と滝が撮れたのには興奮した。それと、あと一歩踏み出せば確実に落ちて死ぬという場所でも、柵もなにもなかったりするのだ。自己責任というやつですね。

壮大な氷と火山の国 フォトグラファー仲間と一周したアイスランド

冬は、夏とは逆に昼が極端に短くオーロラも比較的見やすいらしい。夏は1周できたけれど、冬だとその半分も行くことができない。
世界を旅する旅人が、また行きたい場所としてアイスランドの名前を挙げる理由が少しわかった気がした。

地球の原風景が残る土地。どこか脳裏に焼き付いて離れない風景があって、心にいつまでも余韻が残る。また行きたいなと思える場所。ありきたりな旅行ではなくて、地球を丸ごと感じる壮大な旅をしたいなら、ぜひおすすめだ。

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PROFILE

高橋伸哉

人物、風景、日常スナップなど、フィルムからデジタルまでマルチに撮影するフォトグラファー。国内外を旅して作品を発表している。企業案件や広告撮影、技術本の書籍(共同執筆)、ワークショップなども多数。インスタグラムの総フォロワー数は35万人を超える。(@t.1972@s.1972

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