オトナたちに捧げる、現代インターネットのススメ。

プリクラからVRまで。kawaiiにまつわるテクノロジーは進化する

りょかち 今日はよろしくお願いします! 今回の連載は、若者文化やインターネット文化など、新しいカルチャーについて、「ついていけない」と苦手意識を持っているオトナたちに、楽しさを伝えられる対談にしていきたいなと思ってやっているんですけど。

久保友香さんは、「kawaii」カルチャーのプロフェッショナルですよね。先日「『盛り』の誕生 女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識」という本も出されていて。プリクラ時代から現代までの”kawaii文化”がまとまっててすごく面白かったです!

久保 ありがとうございます!

りょかち 久保さんは理系出身とお伺いしましたが、理系の方で、そういう研究してる人って珍しいんじゃないですか?

久保 そうですね、あまりいないですね。

りょかち どういうきっかけで研究されることになったんでしょう? 

久保 数字だけはずっと得意だったので、それで生きていこうと、理系に入ったんですけれども。大学院で研究者になろうと思ったときに、自分の好きなことと組み合わせていこうと考えて、日本の文化みたいなのに興味があって。実家が芸能とか大好きな一家で(笑)。

りょかち いいですね。

久保 日本人が感動するものにすごい興味があって。それって、一番数式化できなさそうだけど、それをなにか論理的に分かりたいなって思いがあって。日本の絵画って、漫画やアニメが登場する前も、浮世絵とか絵巻とかあんまり写実的に描かずにデフォルメして描かれていて。それがどうデフォルメされてるかってことなら数式化できるんじゃないかって思って。

りょかち 面白い。

久保 写真で撮ったものを、日本流にデフォルメするためのメソッドや数式を見つけて、そのソフトを作るというところで研究者になりましたね。

りょかち すごい。

久保 だけどその後、古い時代のことばっかりじゃなく、それを現代に活かそうと思ったときに、ちょうどみんなプリクラなどですごいデカ目にしていて、「あれ、ここにリアルなデフォルメがあるな」と思って、研究をはじめました。

りょかち 発想が面白すぎる! なるほどですね。

プリクラとSNSに共通して、私たちが表現しているもの

久保 りょかちさんは92年生まれ? 92年、93年は携帯電話やプリクラの進化を全部知ってる世代ですよね、きっと。

りょかち そうですね。携帯電話はガラケー世代。みんながガラケーでマウンティングしあってましたね(笑)。人気機種だったドコモのFシリーズ持ってる人はセンスがあるとか。ドコモ、高かったけどガラケーにこだわる人は使ってた。

久保 そうなんですね。WILLCOMとかを持つほうがいいのかと思ってました!

りょかち WILLCOMもイケてる子たちが二台持ちしてましたね。安い月額料金で友だちに長く電話かけられるから、友だち多い人が持っていたイメージがある(笑)。

久保 そうかそうか。「友だちが多い」のが良しとされるっていうのは、ずっと一緒ですよね。そういう意味では、プリ帳(プリクラを貼っているノート)にたくさんお友達がいるっていうのがいいことだし。

りょかち 確かに。この間プリ帳を見返してて思ったんですけど、自分が映ってないプリクラとかが貼ってあって、なにが楽しくて他人のプリクラ貼ってたんだろうって思って(笑)。見せ合いっことかしてたけど、見てた人もなにが楽しかったんだろうって今は思うんですけど。当時はめっちゃプリ帳の見せ合いをしてたし、見て「え、かわいいほしいー」って言ってた。人気な子は、「プリクラくださーい」とか言われたし。

けど、今思えば自分と友だちのプリクラや、友だちだけが映っているプリクラを見せあって、「友だちが多い」のをアピールしてたのかもしれません。プリ帳をみて、「この人と友だちなんだ」とか「この人とプリクラ交換してるんだ」とか思ってた。

久保 現代で言うと、Facebookの友達リストとか、TwitterやInstagramのフォロワー数や誰をフォローしているかで、その人の友だちの多さや、コミュニティーや趣味がわかる、みたいな感じなのかなあと思いますね。

りょかち なるほど確かに。すごくよくわかる。

りょかちさん
久保 それから、プリ帳全体としても盛ってる世界でしたよね。ただプリクラを貼っているだけでなく可愛く絵を描いたり歌詞を描いたり。ただ、歌詞も、本人に聞いてみると、別に自分の好きな歌詞じゃなくって、「これ書いてるとイケてる」みたいな歌詞を書いてた、みたいな。

りょかち ありましたね(笑)。イケてると思われるために加藤ミリヤさんの歌詞を書いとくか、みたいなとこありました(笑)。

久保 あはは(笑)。でもそれは、こうでありたい自分がそこにあるから。それも一緒ですよね、Facebookとか、Instagramの方がもっとそうか。

りょかち 自分はこうありたい、ある種、なりたい自分に対しての「セルフブランディング」みたいな。

久保 こういう自分でありたいというのを表現していて、そこにリアルとは違う自分がいる。アナログな紙だけど、プリ帳にはそういうのがあって。そういうのは変わんないのかなあと思ったり。

りょかち たしかに、プリ帳には憧れてる自分の表現がありましたね。静かな女子だったのに、プリ帳ではポスカとかで明るい感じ出してました(笑)。

VR時代のアイデンティティーのゆくえ

りょかち ミライの話をすると、これからはVRとかも普及していくのかなと思ってて。それって久保さんが研究されてきた、女の子たちの「kawaii」からちょっと飛躍しちゃうテクノロジーかもしれないと思うんです。どう思いますか? 

久保 わたしも最近、そのへんは気になってて。まだ調査中で整理できていない話になっちゃうんですけど。Vtuberとか最近頑張って見てます。あとはバーチャルモデルさんが気になっていて。葵プリズムさんとか、日本だけでなくアメリカとかでもいらっしゃいますよね。アバターを通じて、自由自在にイチからバーチャルなアイデンティティーを作るってことが、これからあるとはやっぱり思ってるんですよね。

りょかち そうですよね。すごくわかります。

久保 でも一方で、実際りょかちさんが、もしイチから完全にバーチャルなアバターを作れるとしたら、どういうのを作ります? これからはみんなバーチャルなアバターを持つようになるんじゃないかと思うんです、1人一つとは限らず。

りょかち うーん、細くて、髪の毛がめっちゃ長くて、華奢(きゃしゃ)な感じのを作るかなあ(笑)。わたしがなりたかった自分。完全に体形とかから変えちゃう気がします。

久保 そうか、でもアバター作るとするとまず最初、男・女選ぶじゃないですか。あれだとやっぱ女を選ぶってことですよね。

りょかち 女にしますね。

久保 しますよね。わたしも自然と女にするけど、Vtuber見てると、男性たちが全員当然のようにやっぱり女を選んでるんですよね(笑)。そのときに、ちょっと面白いなって。バーチャルは女性人口がすごく多くなると思うんですよ。そもそも、わたしが工学系の研究室にずっといて、研究室の男の子たちのTwitterのアイコンを見ると、ほとんど全員美少女なんですよ。

りょかち なるほど(笑)。

久保 特殊なコミュニティーなんだろうなとは思うんですけど。

りょかち 人類全員美少女になりたいのかな。

久保 なんかでも、ちょっと聞いてみると、美少女になりたいっていうよりは、女の子のほうがみんなが見てくれそう、みたいな感じがあるみたいなんですよね。

りょかち ああ、まあそれはあるかもしれない。

久保友香さん
久保 顔の特徴とかは残しますかね? 残さないですか? 

りょかち わたしは、残すかも。

久保 ですよね。わたしも残すかなと思ってて。ただ、私は小さいときからとにかく運動が苦手で、ずっと悩んできたから、アバターを作ったら、めちゃくちゃ運動神経のよさそうなアバターにするかもと思ったんですよ(笑)。

りょかち ああ、コンプレックス。

久保 自分のこだわりのある部分は自分を残し、自分がアイデンティティーとして興味を持てていなかったり、気に入ってなかったりする部分は他のものを持ってきちゃうようなアバターを作るのかなと思ったんですよね。

りょかち うんうんうん、たしかに。「こうなりたい」という叶(かな)えられない欲求を自在に叶えて、自分を表現できるところにバーチャルなアバターの魅力があるなと感じますね。ZEPETOとかも、使ってる子たちの中には、校則が厳しい子たちが、ほんとは金髪にしたいから、自分のアバターを金髪にするとか、そういう使い方してるケースも結構あるらしくて。自分の嫌なところをどんどん全部変えていけちゃう感じになっちゃうのかなーって。

久保 そうですね。あと、気になるのは、Vtuberにしても、複数人で一つのアイデンティティーを作ってますよね。中の人の声やってる人がいて、デザイン作ってる人がいて、音楽を作ってる人がいて……とか。複数で一つを作っているケースが多いですよね。

逆を言えば、1人の人がいくつものアイデンティティーに関わったりする、っていうことが、今後は普通になるのかなと。それがどういう時代になっていくのかなあというのは、興味があります。

りょかち それめっちゃ面白いですね。

久保 あ、でもすでにSNSだと、りょかちさんもいくつか持ってるんですよね? Twitterアカウント。

りょかち そうですね。10個ぐらいありますね。

久保 10個ぐらいあるんだ、やっぱり!

りょかち ふふふ(笑)。

久保 そういう方々が、これからもっと増えるわけじゃないですか。

りょかち いやあー、確かに今もTwitter使い分けてた(笑)! でも、それに見た目がついてきて、誰かと会話できたりするってやっぱり新しい感じがする。

久保 VRといっても、アニメ的なテイストもあれば、バーチャルモデルさんみたいなリアリスティックなものとか、いろんなジャンルがあるし、今後もいろんなテイストのものができていくと思うんですよね。自分がどこにこだわり持ってるかで、それを見て、どこのコミュニティーにいくかってことも選べるようになると思います。アニメが好きなら、アニメテイストな自分を作っておけばいいし、さらにファッションも好きだったらバーチャルモデルさんみたいなリアリスティックなテイストのアバターが集まったコミュニティーも入ればいいし。アイデンティティーが、1対1、リアル1に対してバーチャル1っていうことは、なくなっていくということですよね。

見た目のハードルから自由になり、才能は開花する

久保 VRの話をさらにすると、Vtuberさんたちは、自分の外見を取り替えちゃって、得意な音楽の才能を発揮して、今までは音楽を専業にできてなかったけど、できるようになってきた人とかも出ているみたいんですよね。そういう、自分の大事な部分、才能だけを取り出して、苦手な部分を全部取り替えちゃって活躍するっていうようなことが、これから進むのかなあと。バーチャルモデルさんも、とにかくファッションにこだわりがあって、洋服は見せたいけど顔は見せたくないっていう方は、そういうやり方をしますよね。見た目で狭くなっていた可能性が広がるのかなって。生まれ持った才能や努力が報われるような世界になると思います。気に食わないところを全部取り替えちゃえるようになることで。

りょかち いいですね。見た目が自分次第で自由自在になる時代が来ることで、見た目によるハードルからも自由になる。

久保 でも、一方で自分がどこが得意かっていうことを見つけるのも、結構難しいことだと思うんですよね。

りょかち そうですね。

久保 それをちゃんと、自分で見つけて強化していけるのが、今の若い人はすごいと思っちゃう。

りょかち たしかに。でも自己表現に関しては、今は環境として得意なこと見つけやすいような気がします。小さい頃から、ストーリーをあげてスタンプのっけて、かわいいの作って、誰かから評価されて……というのを繰り返したりとかしてるから。結構試行回数が多いかなーって。

久保 そっか、それで自分がどういうものが発信しやすいかとかがわかってきてる? 

りょかち 常に「いいね!」の数の多さに晒(さら)されているわけだし、昔に比べるとわかってる人は多いのかなー、という印象ですね。SNSと言っても、Twitterが得意な人もいれば、Instagramが得意な人もいれば、noteを書くのが得意な人がいれば、youtubeが得意な人もいる。SNS以外の表現もいろいろありますしね。

久保 そしたら、自分の不得意な部分は、目をつむれちゃうというか、得意な部分を活かすことで忙しくなりそうな気がしますね。

りょかち たしかに。そんな気はしますね。これだけプラットフォームも多様化してるし、やりたいことをやってみるハードルも低いし、人から評価を受ける機会も多いし。

久保 そっか。じゃあ、わたしみたいに運動できなくてすごい悩んでる人も、そんなにいないんですかね? もう今って(笑)。

りょかち 今はいろんな評価基準があるから。昔よりはマシな気はしますよね。いい世の中になってる!

久保 いい世の中ですね。そうそう、もっと評価基準が多様になるべきだって、小学校のときから思ってたんですよずっと(笑)。

りょかち お、夢が叶えられたんですね。

久保 そうなんですよね(笑)。やっぱり技術はすごい!

 

久保友香さん  りょかちさん

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PROFILE

りょかち

1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒。学生時代より、ライターとして各種ウェブメディアで執筆。「自撮ラー」を名乗り、話題になる。新卒で某IT企業に入社し、アプリやWEBサービスの企画開発に従事。現在では、若者やインターネット文化について幅広く執筆するほか、若年層に向けた企業のマーケティング支援も行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎)。

久保友香さんPROFILE

研究者、博士(環境学)。専門はメディア環境学。テーマはシンデレラテクノロジーなど。 趣味は季節行事、歌舞伎。好きな食べ物は羊羹(ようかん)、酒かす。

■Twitter @YukaKubo 
■Cinderella Technology http://cinderella-technology.com/
■著書『盛りの誕生-女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識-』(2019年、太田出版) 

「食べること」が「生きること」にもっとつながっていく、新しい時代

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