インタビュー

深川麻衣「ダメ元でいいから挑戦する」俳優一本への決意の裏側

元アイドルであることを知らない人が多くなったほど、俳優として活躍している人がいる。深川麻衣さんだ。

乃木坂46の一期生として活躍し、「聖母」の愛称で多くのファンを魅了してきた。グループ卒業後は、映画『パンとバスと2度目のハツコイ』で主演を務め、NHK朝の連続テレビ小説『まんぷく』にも出演。10月から放送されるフジテレビ系『まだ結婚できない男』では重要な役柄に抜擢(ばってき)されるなど、波に乗っている。

「俳優の道の原点は乃木坂46時代にあった」と話す彼女に、これまでの歩みを振り返ってもらった。

俳優を志した原点は、乃木坂46でのMV

深川麻衣「ダメ元でいいから挑戦する」俳優一本への決意の裏側

深川さんが芸能界に興味を持ったのは中学生の時だ。雑誌やテレビで活躍している同年代の人たちに憧れ、自分も表現者になりたいと思ったという。今は俳優として活躍するが、その道を選択する上で大きく影響しているのが、2011年から約5年間活動していた乃木坂46での経験だった。

「乃木坂は色々な表現を経験できる場所でした。アイドルなので歌って踊ることがメインでしたが、テレビやラジオ、舞台に出演することもあった。中でも、特に印象的だったのが、ミュージックビデオ(MV)をつくる経験でした」

深川さんは乃木坂46の3rdシングル『走れ!Bicycle』で初の選抜メンバー入りを果たした。このMVを手掛けたのが映画監督の中島哲也さん。

「私が初めて名前を覚えた映画監督が中島哲也さんでした。学生時代はひんぱんに映画を見ていたわけでもなかったのですが、そんな中で独特の世界観が好きで見ていたのが『下妻物語』と『パコと魔法の絵本』。この作品をつくっている人は誰だろうと気になって調べたら、どちらも中島監督だと知りました。その中島監督が乃木坂のMVを撮ることが決まった時はとても驚きました」

「『走れ!Bicycle』はとてもポップでかわいらしいMVなのですが、撮影中に漂う少しピリッとした空気感や緊張感を直接肌で感じて、ドキドキしました。そこから、映像やお芝居の仕事にグッと興味を持ったんです」

このMV以降、様々な芝居の経験を重ねていく。そして16年にグループを卒業、俳優・深川麻衣としての道を歩み始めた。

深川麻衣「ダメ元でいいから挑戦する」俳優一本への決意の裏側

“乃木坂”のラベルを剝がし、俳優の道へ

乃木坂46で活動しながら俳優の仕事を得ることもできたはずだが、彼女はなぜ俳優一本で進むことを決断したのか。

「乃木坂時代に、メンバーの子が『聖母』というニックネームをつけてくれて、その呼び方がグループ内だけでなくファンの方にも浸透していきました。グループには色んな個性を持ったメンバーがいたので、覚えてもらいやすいあだ名として認識してもらえたことはとてもありがたかったです」

「ただ、徐々に『深川=怒らない人』という偏った見方をされるようになり、取材などでもいつ怒るのか、どんなことで怒るのか、と質問される機会が増えてきて(笑)。いつからかそう言われるたびに、深川という人間はこうあるべきだ、そこからはみ出してはいけない、と言われているような感覚を持つようになってしまって。本当の自分とは異なるイメージだけが膨らんで固められていくことに、少し怖さを感じていました。その頃お芝居の勉強をしたいと考え始めていました」

イメージが影響して与えられる役柄が限られることもあるのではないか。仮にイメージの異なる役を演じたとしても、だ。このままではフラットに見てもらうことは難しいかもしれない。乃木坂46のラベルを自ら剝がした背景には、こんな思いもあった。

深川麻衣「ダメ元でいいから挑戦する」俳優一本への決意の裏側

 

「やらずに後悔して終わりたくない」

乃木坂46に関わる人やファンは、思い切った挑戦と感じたことだろう。卒業の話を持ちかけたとき、周りからは「まだ早いのでは?」と言われたことも。それでも、自分の信念を貫き通すのには理由があった。

「“やらずに後悔して終わりたくない”と考えて、これまでも色々な選択をしてきました。専門学校を卒業して芸能界の道へ進むために上京した時も、乃木坂のオーディションを受けた時も。そのような大きな決断や岐路に立つタイミングでなくても、やってみたいことをやらずに諦めてしまうのはもったいないと思ってしまうんです」

「ダメ元でいいから挑戦してみる。それでダメだったり、やってみて違うと気づいたりしたら諦めがつくけど、あのときやっておけばよかった……と頭の中で“もしも”を悶々(もんもん)と考え続けるのはイヤだなって。興味のある場所、モノ、コトにはまず触れて確かめてみますね」

深川麻衣「ダメ元でいいから挑戦する」俳優一本への決意の裏側

同じ姿勢を仕事の上でも意識している。役柄が俳優のイメージを決定づけることもあるが、それでも彼女は「さまざまな役に挑戦していきたい」と話す。

「作品との出会いは一期一会なので、求められているものには全力で応えていきたいですし、こういう役は自分にできる、こういう役はできない、と自ら決めつけることはしないようにしています。例えば、殺人鬼の役に挑戦することになったとして、自分が人を殺すことはしないけれど、そこに至る過程や境遇に共感したり、理解しようとしたりすることはできるかもしれない。だからこそ、型にはまることなく、色んな役に挑戦していきたいです」

「私が初めて主演を務めた映画は『パンとバスと2度目のハツコイ』。監督の今泉力哉さんは、その次に手掛けた映画『愛がなんだ』でも私を起用してくださいました。前作とは全く違うイメージの役を任せてくださったのがとてもうれしくて。“この人がこういう役を演じたらどうなるんだろう。見てみたいな”と思われるような役者になりたい、と思いました」

「型にはまり過ぎないように」 柔軟性が生み出す演技の幅

やらずに後悔したくない――。その強い信念から、ある種“頑固”なイメージを持たれるかもしれない。しかし、彼女は「やらずに後悔しないために、型にはまり過ぎない」という柔軟さも兼ね備えている。それが俳優としての幅を広げていく。

「お芝居でも、自分の中でのイメージを固めすぎないように意識しています。台本を読みながら、自分が演じるのはどんな人なんだろうと、人物像や背景を想像して、ある程度土台を頭の中で組み立てるのですが、その土台が“絶対”だとは思わないようにしていて」

「現場に行き、共演者の方と対峙して、監督からの演出を受けて。その場で生まれるものにも敏感に反応できるよう柔軟でいたいです。ガチガチに土台を組んでしまうと、自分の想像していなかったボールが飛んできたときに身動きが取れなくなってしまうかもしれない。どんなボールでも打ち返せるくらいの柔軟性がお芝居をする上では大切だと思うので、型にはまり過ぎないように意識しています」

深川麻衣「ダメ元でいいから挑戦する」俳優一本への決意の裏側

乃木坂46を卒業して約3年、深川さんはさまざまな映画やドラマに出演してきた。この10月から放送が始まったフジテレビ系ドラマ『まだ結婚できない男』では、阿部寛さん演じる主人公・桑野信介の隣人・戸波早紀役に抜擢された。

1話で早紀はサングラスにマスク姿と、いかにも怪しい女性だが、2話以降で深川さんと同じ境遇の女性であることが判明する。

「早紀は元アイドルで、今は駆け出しの俳優をしている女の子。境遇が似ている分、脚本を読んでいると思わず自分と重ねて応援したくなるときがあります(笑)。『まだ結婚できない男』の登場人物は、桑野さんはじめみんなどこか一癖あるけれど、早紀もまた個性的で。でも似ている面があるからこそ、柔軟に役を演じていきたいと思っています。演技を通していろいろな表情を見てもらえたらうれしいです」

(文/阿部裕華 写真/南阿沙美)

深川麻衣「ダメ元でいいから挑戦する」俳優一本への決意の裏側

深川麻衣(ふかがわ・まい)
1991年3月29日生まれ。静岡県出身。2019年、NHK連続テレビ小説『まんぷく』に成長した香田吉乃役として出演。映画では『パンとバスと2度目のハツコイ』、『愛がなんだ』、『空母いぶき』に出演。ドラマ『まだ結婚できない男』に主人公の隣人・戸波早紀として出演。

出演情報

ドラマ『まだ結婚できない男』 
フジテレビ系2019年10月8日スタート
毎週火曜 夜9時放送(※一部地域を除く)

番組公式HP https://www.ktv.jp/kekkondekinaiotoko/index.html

▼深川さんより一言
前作のファンで、このシリーズをずっと楽しみにされていたという方はたくさんいらっしゃると思います。13年ぶりの新作ということで、物語の中でも時間の経過がわかる場面がいくつもあります。使っているモノが便利になっていたり、結婚観も大きく変化していたり、そんな変化も楽しんでいただければなと。ベースは前作同様にコメディーで明るい作品。今までのファンの方にも、はじめて見る方にも楽しんでいただけると思います!

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