1人あたり200万円の高額コースも!? ラグビーワールドカップで始まった“新しいスポーツ観戦”を体験した

日本代表の快進撃に沸いたラグビーワールドカップ日本大会で、「スポーツ・ホスピタリティー」と呼ばれる、ラグジュアリーな観戦体験を提供するサービスが始まった。

英国のSTHグループ(Sports Travel & Hospitality Group)と旅行大手JTBが設立した合弁会社「STH Japan」が、観戦チケットに特別な空間で提供される食事や解説者によるトークショーなどを組み合わせたパッケージサービスを販売する。

同社によれば、日本で開かれる大規模イベントで、大会を通してホスピタリティーサービスが提供されるのは初のことだという。中には1人あたり約200万円の高額プランもあるが、ほとんど完売するなど注目度は高い。人気の秘密を探りに、&M編集部員が体験してきた。

一室4000万円! クローズドな特別空間

日本代表が優勝候補アイルランドを相手に“ジャイアントキリング”を起こす6日前。プ-ルAで最もハイレベルなカードと目されていたアイルランドvs.スコットランドの一戦が組まれたこの日、筆者は昼過ぎに横浜国際総合競技場の近くにあるホスピタリティー特設会場を訪れた。STH Japanが今回のW杯に合わせて、4カ月前まで市民の野球場だった場所に建設した施設だ。

高さは最高7.4メートル、広さはおよそ3850平方メートル

高さは最高7.4メートル、広さはおよそ3850平方メートル

入り口を抜けると、エントランスを挟んでVIP向けのレストラン会場「ウェブエリス・パビリオン」と、19のプライベートスイートルームを擁する「ウェブエリス・スイート」にエリアが分かれている。

パビリオンはテーブル単位で、スイートは部屋単位で販売され、どちらもその多くを企業が購入、クライアントや重要な関係者をもてなす場として活用しているという。

スイートはホスト(購入者)とゲスト(招待者)のみが入れるクローズドな空間だが、この日は特別にSTH Japanの一室を見せてもらった。

STH Japanのスイートルーム。購入した企業の多くは、自社のアピールにつなげるべく独自のカスタマイズを行うという

STH Japanのスイートルーム。購入した企業の多くは、自社のアピールにつなげるべく独自のカスタマイズを行うという

ヒルトンホテルが手がける軽食

ヒルトンホテルが手がける軽食

壁際にテリーヌやサラダなどの軽食と各国のワインがずらりと並び、近くに料理人やソムリエもスタンバイしている。フードとドリンクを手がけるのはヒルトンホテルだ。

ホストとゲストは試合前にこの特別な空間で上質な食事を楽しみながら歓談や商談を行い、気分が盛り上がった状態でスタジアムへ。カテゴリーAの特等席で試合を楽しんだ後に、再び会場に戻って優雅な時間を過ごす。

この一連のサービスが横浜国際総合競技場で開催される全7試合(=7日間)で提供される。20人からの利用で価格は1室4000万円から。冒頭に記載した1人あたり約200万円というのは、このスイートルームの料金だ。室内はカスタマイズが可能で、内装や食の形式をオーダーできるという。

元代表選手たちによる“舌戦” 盛り上がる会場

レストラン会場「ウェブエリス・パビリオン」

レストラン会場「ウェブエリス・パビリオン」

続いて、この日筆者がホスピタリティーを体験するレストラン会場「ウェブエリス・パビリオン」へ。1テーブル10席で、720席分を擁する大きなホールだ。価格は試合ごとに変わり、一席あたり18万円から販売されている。

指定の席へ向かうと、テーブルの上に置かれた小さなボックスが目に入る。開催日ごとに記念品が用意されているらしい。この日の品はモバイルバッテリーと充電コード。気の利いたもてなしに心が躍る。

会場内には複数のモニターが設置され、他会場の様子が放映されている。料理とお酒を楽しみながら優雅に試合を観戦。ビッグプレーが出るごとに会場内はヒートアップし、一体感に包まれる。

場内のモニターには他会場の試合が放映されていた

場内のモニターには他会場の試合が放映されていた

試合前に提供されたメインディッシュの牛フィレ肉。上質な料理が特別な時間を演出する

試合前に提供されたメインディッシュの牛フィレ肉。上質な料理が特別な時間を演出する

試合の一時間前になると、前方のステージにアイルランドとスコットランドの元代表選手が登壇し、トークショーが始まった。

開始早々、「アイルランドのラグビーはつまらない」とスコットランド側がつっかければ、「我々は、そのスタイルでオールブラックス(ニュージーランド代表)に勝ってます。スコットランドは勝ったことありましたっけ?」とアイルランドもすかさず反撃。“舌戦”で会場を盛り上げながら、2人は注目のプレイヤーや試合の展開、見どころなどを解説した。

ステージ上に元アイルランド代表選手(左)と元スコットランド代表選手が登壇。試合の展望、見どころなどを解説した。トークショーのメニューやゲストは開催日ごとに変わるという

ステージ上に元アイルランド代表選手(左)と元スコットランド代表選手が登壇。試合の展望、見どころなどを解説した。トークショーのメニューやゲストは開催日ごとに変わるという

いよいよ試合時間が迫ってきた。外に出ると、スタジアムまでのルートは大混雑。この日は6万人を超える観衆が集まっていた。

だが、ホスピタリティー参加者にはスタジアムまでの専用ルートと入場口が用意されており、人混みにもまれることなく会場に入ることができた。試合前に移動のストレスを軽減できるのは非常にありがたい。

ホスピタリティーサービスのゲストには、全く混雑していない専用ルートが用意されている。橋のコースはその一つ。特設会場周辺にはスタッフが配置され、ゲストに専用コースを案内する

ホスピタリティーサービスのゲストには、全く混雑していない専用ルートが用意されている。橋のコースはその一つ。特設会場周辺にはスタッフが配置され、ゲストに専用コースを案内する

スタジアムの入場口も全く並ばずに入れる。ノンストレス!

スタジアムの入場口も全く並ばずに入れる。ノンストレス!

観戦席はバックスタンド側2階の特等席。細かな雨がちらつく中でもフィールドの様子がよく見える。両国の選手が入場し、国家斉唱。地鳴りのような観衆の歌声がスタジアム全体に響き渡り、気分は最高潮に。

キックオフ。ボールが高々と蹴り上げられると、再び大歓声がわき起こる。試合前、トークショーで元アイルランド代表選手はこんなことを語っていた。「アイルランドが勝つためには、序盤からスコットランドの動きを封じ、彼らを勢いに乗せないことが大事だ」。

まさにそのような試合運びを展開するアイルランド。序盤から鉄壁の守備でスコットランドに単調な攻撃しか許さず、リズムを崩す。試合は27-3でアイルランドが圧勝。世界最高峰の戦いに釘付けになり、あっという間に80分が過ぎ去った。

後半、トライを決めるアイルランドのコンウェー=西畑志朗撮影(朝日新聞社)

後半、トライを決めるアイルランドのコンウェー=西畑志朗撮影(朝日新聞社)

試合後は再び会場へ。グラスを片手に解説者2人による試合の回顧を聞きながら熱戦の余韻に浸る。ホスピタリティー会場は20時で閉館。およそ7時間にわたる“非日常体験”は興奮冷めやらぬ中で幕を閉じた。

世界基準の「おもてなし」 日本に根付くためのカギは?

各種のスポーツイベントで、スポンサー企業が顧客や関係者を招待し、もてなす取り組みは日本でも珍しくない。だが、今回筆者が体験した「スポーツ・ホスピタリティー」は、スポンサー以外の企業や団体、個人がラグビーW杯というビッグイベントを、顧客をもてなす場として活用できることに新しさがある。

こうした取り組みは欧米では浸透しているというが、日本ではまだなじみがない。STH Japan取締役副社長・阿部一晴さんは、日本展開の狙いについて次のように説明する。

「多くの日本企業が『グローバル』『ダイバーシティー』というキーワードを重視して経営を進めていくなかで、外国人のビジネスパートナーや女性のキーパーソンが増え、従来の日本流の接待だけでは対応できなくなってきています。日本のマーケットのグローバル化が進むほど、世界基準の『おもてなし』の存在価値は高まっていくので、ビジネスチャンスは非常に大きいと考えます」

STH Japan取締役副社長・阿部一晴さん

STH Japan取締役副社長・阿部一晴さん

STH Japanでは今回の日本展開にあたって、欧米流のホスピタリティーのスタイルをベースに、日本の伝統文化を加えたミックススタイルを志したという。

商品価格は1人あたり5万円台からあるが、前述の通り200万円近い高額な商品もある。それでもSTH Japanの社内調査では、92%以上の購入者が「ホスピタリティーがビジネス関係を円滑にするという目的を果たしていると感じている」と回答するなど、コスト以上のパフォーマンスを感じているという。

「我々も決して高い価格設定ではないと考えます。ホストは、試合の前後を含めて5、6時間の特別なひとときを大切なゲストと一緒に過ごすことができます。その価値をどう捉えるか。感動的な体験はずっと記憶に残りますので、双方のパートナーシップを一層強めることにつながると我々は確信しています」(STH Japan阿部一晴さん)

会場でも体験談を聞いてみた。個人でサービスを購入したという50年来のラグビーファンの男性は、第一声で「食事のおいしさに驚いた!」と話し、最もこだわっていた観戦席については「ラグビーの試合は前列が見やすいわけではない。見晴らしの良い2階席が用意してあり、ファンのことをよくわかっていると感じた」と笑顔で語った。

サービスの将来像について、STH Japanの阿部さんは「まずは日本で成功させ、将来的にはアジア各国で展開していくことを目標としています」と意気込みを語る。

来年の五輪でも東京2020組織委員会が大規模なホスピタリティーサービスを販売すると見られている。果たしてスポーツ観戦を社交場とする文化は日本でも定着するのだろうか。新しいおもてなしのスタイルの今後に引き続き注目していきたい。

記念撮影をするユニフォーム姿の参加者たち

記念撮影をするユニフォーム姿の参加者たち

■ラグビーワールドカップ・ホスピタリティーサービス
https://hospitality.rugbyworldcup.com/ja-JP

(文/&編集部 下元陽 写真/森カズシゲ)

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