ミレニアルズトーク Millennials Talk

令和時代のインフルエンサーマーケティング 石井リナ×石山明日香

社会問題からセックスまで。現代を生きる女性に様々な選択肢を提案するエンパワーメントメディア「BLAST」。その運営会社であるBLAST Inc.のCEOを務める石井リナが、ミレニアル世代にフォーカス。

特に1990年前後に生まれた人は、インターネットネイティブな環境で培った柔軟な感覚で、様々な新しい働き方に取り組んでいる。学生時代にガラケーを持ち、インターネットの普及とともに育ってきた人々は、どんな価値観を持ち、何を思考しているのだろうか。世代の狭間に生まれ、時にハブになり得る「ミレニアル世代」を深掘りする。

今回は、PR事業を展開する株式会社TANKでSNSディレクターを務める石山明日香との対談をお届け。石山さんは大手化粧品ブランドから音楽フェスティバル、レストランなど多種多様なクライアントと日々向き合っている。自身もインフルエンサーとして活動する石井が、多くのインフルエンサーと関わる石山の仕事内容を掘り下げ、SNSマーケティングの現在地に迫った。

フォロワー数だけじゃない。PRパーソンが仕事をお願いしたくなるインフルエンサーは?

石井リナ(以下、リナ) 明日香ちゃんは、PR会社でインフルエンサーマーケティングの仕事に携わっているんだよね。どういった媒体で、インフルエンサーの人たちと仕事をしているの?

石山明日香(以下、石山) テレビや新聞、雑誌などのマスメディアから、WEBやSNSまで色々あるよ。最近は、マスメディアよりもSNSで情報収集をする人が増えてきているからか、WEBやSNS関連の案件が特に多いかな。

リナ マーケティングを発注する企業は、インフルエンサーのどういう点を評価して、仕事を依頼してくるのだと思う?

石山 企業にとって一番分かりやすい指標だから、フォロワー数やリーチ数などを元に評価する傾向にあるね。そういった数字はもちろん大切だけど、インフルエンサーの影響力は、数字だけでは測れないことも多いなって感じてる。私は、その人がどういう特性を持つかを判断基準に、企業の人たちへ紹介するようにしているよ。

石井リナさん、石山明日香さん

リナ たしかに。単純にフォロワー数だけを見るんじゃなくて、そのフォロワーの属性にまで目を向けることは大事だよね。最近、インフルエンサーを取り巻く環境は、どう変わってきている?

石山 まず、市場は着実に拡大していると思う。仕事はどんどん増えているし、フィー(報酬)も上がってきている。インフルエンサーがしっかりお金を稼げるようになってきた実感があるよ。

それに伴って、インフルエンサーにSNSで投稿してもらうことのハードルも、徐々に上がってきたと思う。少し前までは、宣伝する商品を無料でもらえる「ギフティング」や、招待されたパーティーに参加すること自体がインフルエンサーにとっての報酬として機能して、投稿してもらえる場合もあった。けど最近は、しっかりお金が支払われないのに投稿する人は、減ってきていると思う。

リナ インフルエンサーを仕事と捉える人が、増えてきているよね。

石山 そうだね。「なんでもやります」というスタンスの人もいた以前と比べると、インフルエンサー側が自分で案件を選べるようになったと思う。たとえばInstagramで、「自分のフィードに合わないものは載せません」とかね。

石山明日香さん

リナ 一方で、まだまだ投稿の自由度が低いと思う場面もあるかも。この間、ボトル入り飲料水の広告がTwitterで話題になったのを覚えてる?

石山 似た構図の写真に共通する文言を添えて、多くのインフルエンサーが商品について一斉に投稿していた件だよね。

リナ そうそう。「それぞれのインフルエンサーが自由に商品をPRする形にできなかったのかな?」と疑問に思った。関連して、インフルエンサーに自由にコンテンツを作ってもらっている海外企業の事例についてのツイートも見かけたよ。いまだに日本ではハッシュタグ9個つけてくださいなんて依頼もあったりするからね……。

石井リナさん

石山 いまだに写真の構図やハッシュタグ数について細かく指定しようとする企業が存在するのは事実。でも、それだとどうしてもPRっぽさが出てしまうよね。だから、クライアントが投稿内容について細かく指定しようとしていたときは、「インフルエンサーの人たちも投稿したがらないだろうし、してもらえたとしても不自然になってしまいますよ」と正直に伝えるようにしてる。そのバランスを調整するのが、私の役割なんだと思ってる。

SNSでコミュニケーションするだけでは不十分。インフルエンサーに愛される企業のシンプルな特徴

リナ インフルエンサーの人たちに仕事を依頼するとき、明日香ちゃんが気をつけていることはある?

石山 当たり前のことかもしれないけれど、その人の立場からメリットやデメリットを考え抜くことを大切にしてる。お金などにまつわる条件面はもちろん、一人ひとりの関心に合った案件かどうかを考えて、「この案件を依頼されたとき、やりたいと思えるかどうか」を判断した上で、依頼しているかな。

そのために、普段から仕事で関わるインフルエンサーの人たちのSNSを追いかけて、例えば音楽だったらどんなジャンルに興味があるのか、どんなライフスタイルかなどを、しっかり把握するようにしてる。相手に仕事をお願いする上で基本的なことだと思うけど、これができていない会社は結構多いと思うな。

石井リナさん、石山明日香さん

リナ 私もインフルエンサーとしてお仕事の依頼をもらうときがあるけれど、インフルエンサーのことを商品を広めてくれる「アカウント」としてしか捉えず、「仕事相手」として接しようとしない会社を見かける。当たり前だけど、インフルエンサーはひとりの人間なんだから、長期的な関係構築を視野に入れて接するのが大切だし、企業は履き違えちゃいけないところだと思うな。

石山 たくさんのインフルエンサーを囲って、「とりあえず」と、パーティーに招待するけど、仕事上のコミュニケーションをしっかり取ろうとしない企業はよく見るね。

リナ 呼ばれたからイベントに行ったけど、誰も挨拶(あいさつ)してくれなくて、呼んでくれた担当者が誰か分からない、なんてこともある。その点、明日香ちゃんは人との触れ合いをすごく大切にしているから、呼んでもらえると、つい行きたくなる。

石山 私たちは、SNS上でコミュニケーションを取るだけでなく、直接顔合わせして関係構築することを重視しているからね。イベントやパーティーに来てくれたら必ず挨拶するのはもちろん、継続的に仕事をお願いできるように心がけてる。

長期的な関係を構築できれば、インフルエンサーがブランドに抱くロイヤリティーも上がりやすいと思うし、企業にとってもメリットのあることのはずだしね。

リナ 本当にそうだよね。他には、何か気をつけていることはある?

石山 インフルエンサーの人たちが、投稿用の写真を撮りやすい環境を提供することかな。特に最近は、きれいな照明と背景が大切。少し前までは、みんなが似たような写真を撮りたがっていたから、撮影用のセットをがっちりとつくったり、フォトパネルを立てたりしていたんだけど、今のインフルエンサーの人たちは他の人と違う写真を撮りたがる傾向にある。

同じ構図を嫌がるし、撮影力も高いから、こちらが準備しすぎなくても、照明と背景さえ提供できれば、自力できれいな写真を撮ってくれるんだよね。

石井リナさん、石山明日香さん

リナ みんなと違う写真を撮りたいってことは、提供できる撮影スポットの数も、多ければ多いほどいいんだろうね。

石山 そうだね。他にも、商品だけが写った画像を投稿したい人もいれば、自分も写った画像を投稿したい人もいるから、どちらのタイプの人も撮影しやすいスポットを用意するようにしてる。

“ポスト・ステマ”のSNSマーケティングに迫る

リナ インフルエンサーマーケティングの仕事をしていると、普段SNSを通じて触れている情報の信頼性にも敏感になりそうだよね。明日香ちゃんは一人の消費者として、どんな情報を信用しているのかな?

石山 インフルエンサーをキャスティングしてPRしている側の私からしても、本当に信用できる情報を見極めるのは、すごく難しいんだよね。PRの投稿だと分かっていても、添えられている文章を読んだり、周りの人たちが使っているのを見たりすると、どうしても「良さそうだな」と思ってしまう。人びとに与える影響が大きいからこそ、企業やインフルエンサーは、適切な発信をしていくことが大切だと思う。

リナ そういう意味では、いまだに自分たちの発信が社会にどういった影響を与えるのかを自覚しきれていない企業やインフルエンサーは、少なくないと思う。たとえば、企業からお金をもらっているにもかかわらず、その旨を記載せずに投稿する「ステマ」は数年前から問題になっているけど、最近は改善されてきているのかな?

石山 以前と比べれば、PRであることを明記する投稿は少しずつ増えてきてる気がするな。「ステマはやってはいけないこと」という理解が、しっかり浸透してきているからね。

とはいえ、消費者としては「いいな」と思った投稿の最後に「#PR」と記載されているのを見ると、「なんだ、PRだったのか」と冷めてしまうのも、また事実なんだよね。

石井リナさん、石山明日香さん

リナ この間、面白かったのが、ある化粧品ブランドについての投稿数や投稿につく「いいね」が多すぎることに対して、ステマを疑う消費者が多かったこと。ステマの横行を知っているからか、「いいね」が多すぎる投稿は、逆に疑われてしまうんだって。

SNSの普及とともに消費者のリテラシーは確実に上がってきているから、PRだと分かると冷めちゃうし、ステマにも敏感になっているんだね。そういう背景もあって、最近はPR案件を受けないようにしているよ。本当に自分が好きだと思えるものしか投稿しないようにしているんだ。

石山 人びとのリテラシーが上がってきている今、大切なのは「リアルさのある投稿」だと思う。消費者からすれば、本当に好きなものだけを投稿するインフルエンサーじゃないと、信用しにくくなっているよね。

リナ だよね。リアルさのある発信をするために、PRする側として気をつけていることってある?

石山 投稿の日時を細かく指定しすぎないようにしているかな。もちろん短期的に集中して多くのインフルエンサーに投稿してもらった方が、人びとの目につきやすくなるんだけど、一目でPRだと分かってしまいやすくなるからね。

石井リナさん、石山明日香さん

<編集後記>

スマホを通じ、無数の情報にアクセスできるようになった現代では、無数にある選択肢から自力で「正解」を見つけ出すことは難しく、身近な人の「口コミ」が信用されやすい潮流が生まれている。

人びとを惹(ひ)きつけるカリスマ性を持ちつつも、テレビや雑誌で見かけるタレントと異なり、誰もがインタラクティブに交流できるインフルエンサーたち。程よく身近な存在である彼ら彼女らが紹介している商品に興味を持ってしまうのは、構造的に仕方がないことだと思う。

言うまでもなく、私たちは暇さえあればTwitterやInstagramのフィードを眺めているので、彼ら彼女らの投稿に触れる時間が長い分だけ、影響も受けやすいのは当たり前だ。

これからの消費者には、「本当に必要なものなのか」を判断する力がこれまで以上に求められる上、つい受動的な消費を行ってしまいやすい構造のなかで生活していることに自覚的にならなければならない。今回の2人のトークを聞いて、漠然とスマホを眺めているだけでは得られない気づきがあった。

(写真/三澤亮介、文/佐々木希海、編集/岡島たくみ)

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