小川フミオのモーターカー

ステーションワゴンの新解釈だった ホンダ・シビックシャトル55

1980年代のホンダ車は概して“平たい”のだが、なかには83年9月発表の「シビックシャトル」のようにあえて背の高いクルマも出した。

(TOP写真:シャトルにはパートタイム4WDの設定もあった)

当時は、ホンダがいろいろな方向で“いいクルマとはなにか”を追求した時期である。

スポーティーであるべきクルマはよりスポーティーに(低く)、いっぽう荷物も載せて快適に走れるクルマはパッケージング優先(全高も高く)で設計していた。

ホンダ・シビックシャトル55

荷室の使い勝手を重視したパッケージを持つ

ワンダーシビックのニックネームで呼ばれた3代目が発表されたとき、ホンダはすでにその2カ月前に姉妹車の「バラード」と、2プラス2(というよりほぼ完全な2シーター)の「バラードスポーツCR-X」を発売していた。

ハッチバックというシビックの伝統的な車型に加えて、セダンもあれば、全高1290ミリにおさえたスポーツクーペもラインアップされた新世代のシビック。

さらにステーションワゴンの新解釈といえるクロスオーバーのシャトルがあったので、ホンダっておもしろいことを考える会社だなあと感心させられた。

ホンダ・シビックシャトル55

リアウィンドーのデザインテーマはシビックと共通

シャトルで当時うたわれていたのは、「都市と都市をキビキビとネットワークするこれからのコミューター」(ホンダの広報資料)というコンセプトだった。

シャトルというネーミングの由来として、「短距離路線または二つの交通系統を連結する定期往復列車や、航空機、バスなどを指して使われています」と、発想の原点が説明されている。

ホンダ・シビックシャトル55

当時のホンダ車らしく横基調のダッシュボードに独特の角度をもったステアリングスポークが特徴的

このころホンダの商品戦略のなかには、大型化する3代目「アコード」(85年)や大型セダン「レジェンド」(同年)、さらに高級クーペとしての3代目「プレリュード」(87年)などが予定されていたのだろう。

その分、シビックの一族には無理をさせなかった。むしろ、各モデルの個性を強調したのが、特徴的なマーケティングである。世の中にお金がある時代ということもあり、1台でなんでもできるというより、特化した機能を重んじたのだ。

ホンダ・シビックシャトル55

楽しさを感じさせるパターンのファブリック張り

きびきびと走りまわれるイメージのCR-Xから、大きなガラスでキャビンを強調したマルチパーパスモデルのシャトルまで。全長4メートルを切るコンパクトなサイズのなかで、自分にぴったりのクルマを探せばいい、という提案である。

ホンダ・シビックシャトル55

後席の「フレックスシート」は座面を取り外してシートバックを畳むとフロアが平板になる

フランスのルノーや、イタリアのフィアットなどが、同じように前輪駆動のハッチバック車のシャシーを利用して、ピープルムーバーを提案するようになるのは1990年代から。トヨタ・スプリンター カリブ(82年)や三菱シャリオ(83年)などとともに、ホンダは先駆けていた。

ホンダ・シビックシャトル55

荷室の床には小物を収納できるスペースが設けられていた

87年のシビック・シリーズのフルモデルチェンジで、シャトルは米国のミニバンを思わせる洗練されたスタイリングになる。私は、しかし、ここで紹介するオリジナルの、粗削りだけれど理想主義的なデザインのほうが好きだった。

【スペックス】
車名 ホンダ・シビックシャトル55i
全長×全幅×全高 3990×1645×1480mm
1488cc直列4気筒 前輪駆動
最高出力 100ps@5800rpm
最大トルク 13.2kgm@4000rpm

(写真=本田技研工業提供)

関連記事

ファンを徹底的に楽しませたこだわりの数々 ホンダS2000

1980年代のパーソナルカー人気の“前奏曲”だったホンダ・初代プレリュード

ホンダ初の高級セダン「レジェンド」

小川フミオのモーターカー:連載一覧はこちら

\ FOLLOW US /

ステーションワゴンの新解釈だった ホンダ・シビックシャトル55

&M公式SNSアカウント

TwitterInstagram

「&M(アンド・エム)」はオトナの好奇心を満たすwebマガジン。編集部がカッコいいと思う人のインタビューやモノにまつわるストーリーをお届けしています。

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

“空力”デザインで技術革新を果たした「アウディ100」

トップへ戻る

メルセデス・ベンツEQCは“フツウ”じゃないのに“フツウ”の魅力

RECOMMENDおすすめの記事