めぐり、めぐって純喫茶

鶯谷で“純喫茶”を守り続けるお店「DEN(デン)」のクリームソーダ

昭和の香りただよう純喫茶には、そのお店ならではのストーリーや、おいしいコーヒー、そして食事があります。ともに1996年生まれの俳優・見津 賢と写真家・ヨシノハナが、東京のさまざまな純喫茶をたずねる本連載。前回までの「ナポリタン特集」に続いて、今回からは最近話題のクリームソーダを特集します。ということで、第1回は鶯谷の「DEN(デン)」をご紹介。

昭和のオトナ歓楽街 鶯谷「デン」

純喫茶の鉄板、王道のドリンクといえば、やっぱりクリームソーダ。子供のころにお子様ランチとセットで頼んでいたのが懐かしい。日本で一般的なクリームソーダは、緑色の甘いソーダにバニラアイス、真っ赤なさくらんぼ。この色の組み合わせが、まさに純喫茶好きの心をくすぐるわけです。

もちろん、店によっていろんな形があるので、「このクリームソーダが正しい」というものはないと思います。その店がクリームソーダといえば、それはクリームソーダなのです。ということで、軽食の定番ナポリタンのお次は、ジュースの定番クリームソーダが飲める喫茶店をご紹介。

鶯谷で“純喫茶”を守り続けるお店「DEN(デン)」のクリームソーダ

ぼくは「昭和」が残るディープなスポット・街並みが好きです。「ディープ」という表現を安易には使いたくないのですが、少し危ないにおいがしたり、小汚いんだけど街の人に愛されているお店が集まっていたりする、そのような場所でよく見かけるのが純喫茶なのです。

上野のアメ横、新宿ゴールデン街、浅草ホッピー通りしかり。あえて昼間に行ってみると、そこには普段では見えないものが存在していたりと、下町とはまた違った楽しみ方がある。

今回訪れたのは山手線で上野駅の一つ隣、鶯谷。ここには一度見たら忘れられない、超個性派クリームソーダを堪能できる喫茶店があります。鶯谷といえば、山手線全29駅の中で乗降客数が最も少ないところ。ですが! そこには知る人ぞ知る名店が数多く存在するのです。そのひとつがここ、純喫茶のデン。

鶯谷で“純喫茶”を守り続けるお店「DEN(デン)」のクリームソーダ

入り口にはソフトクリームのオブジェ。テントの色との組み合わせがナイスです。そして店名のカタカナ表記、フォントがかわいい。店内は暖色のランプの光と木目の壁、花柄のソファが、あたたかさを演出していて、この少しばかり狭い空間が、居心地よく感じるのです。早速お目当てのクリームソーダと名物の「グラパン」を注文。

鶯谷で“純喫茶”を守り続けるお店「DEN(デン)」のクリームソーダ

ふとお店の外を見てみると、外にいる人と目がすごく合います。たくさんの人がお店の前で並んでいる。店内も混みあっています。それもそのはず、ここデンは人気ドラマ『孤独のグルメ』に登場して以来、喫茶店フリークたちの間では大人気のお店なのです。遠方から訪れるお客さんも多いのだそう。

鶯谷で“純喫茶”を守り続けるお店「DEN(デン)」のクリームソーダ

そうこうしているとクリームソーダが登場。見てください! この存在感。緑色のメロンソーダ、きれいに巻かれたソフトクリーム、そしてコーンが帽子のようにかぶせられています。これはもう、写真を撮らずにはいられない見た目ですよね! 絶対にインスタで映える。

さて、肝心の味はというと……ソフトクリームのコクが深くて、おいしい。見かけ倒しじゃないんです。ほどよい甘みのメロンソーダに、しゃりっとした食感のソフトクリームがすごくマッチしています。この軽めの口あたりのおかげか、見た目よりも重たくない。胃にこない。ちなみに、まずは最初にジュースの部分を少し飲んでから、ソフトとコーンに手を付けるのがポイント。でないとジュースがあふれます(笑)。

鶯谷で“純喫茶”を守り続けるお店「DEN(デン)」のクリームソーダ

さらにそこへ、名物グラパンが登場。正直、あなどっていた。こんなにボリュームがあるとは……。ほぼ一斤の、立方体の食パンに、アツアツのデミグラスソースのシチューがたっぷり!

鶯谷で“純喫茶”を守り続けるお店「DEN(デン)」のクリームソーダ

こんなのうまいに決まっています! じっくり煮込まれて角の取れたごろごろ野菜たち。そこに溶け込むやわらかい牛筋が、うまみを引き立てています。そのままスプーンですくって食べるもよし。器となっているパンをちぎって、ソースにつけて食べるもよし。

グラパンはシーフードのホワイトシチューとデミグラスソースの二種類があります。これからの寒い時期にはもってこいの一品ですよね。量がすごいので、食べ終えたころにはすさまじく満腹です。2人で食べるのがおすすめ。

胃袋も店内も少し落ち着いてきたところで、店長さんにお話を伺います。「お店ができたのは1971(昭和46)年。でもあの形のクリームソーダを出し始めたのは、ここ十数年なんですよ。ソフトクリームを逆さまに刺したような見た目、っていう人もいるけど、実は理由があって」

鶯谷で“純喫茶”を守り続けるお店「DEN(デン)」のクリームソーダ

「何があったんですか?」と聞いて返ってきた、その答えに笑ってしまいました。「近所の人が、クリームソーダを出前で持ってきてって言うもんだから、試しに風よけのために、ソフトクリームにコーンをかぶせてみたんですね。それがいつの間にか、店でも当たり前になっちゃったんです」

風よけだったのか~!!!(笑)。まさかあのインパクト大のクリームソーダが、そんな偶然から生まれたものだったとは……。ちなみにあの……グラパンは……?

「あれも初めからあったわけじゃなくて。昔、アルバイトの子がまかないで『グラタンが食べたい』って言いだしたんですね。でも、ソースは作ることができるけど、うちは喫茶店だから耐熱皿がないわけです。仕方なくパンをくりぬいて、お皿替わりにして食べてもらってたんですよ。そうしたら、それを見たお客さんが『なにそれ食べたい!』っていうからメニュー化しました、なし崩し的にね(笑)」

鶯谷で“純喫茶”を守り続けるお店「DEN(デン)」のクリームソーダ

あのグラパンも偶然に生まれて、今やデンの鉄板メニューになっているのです。会えるものならそのアルバイトの子に拍手を送りたい(笑)。そういえば鶯谷は夜の街のイメージが強いけれど、デンの営業時間は19時まで。なんでこんなに早く閉めちゃうんだろう。これまたおすすめの、ボリュームのある自家製プリンを食べながら、その理由を聞きました。

「たしかに、場所が場所だし夜までやってお酒でも出せばいいのに、っていうお客さんもいるんです。でも、うちはあくまでも純喫茶で、コーヒー屋だからね。遅くまで営業して、アルコールを出したら純喫茶じゃなくなっちゃうじゃない。それが先代の願いでもあったから、営業時間は朝から夕方までって決めているんです」

「メニューも当初に比べれば増えたけど、根本の部分は変えたくない。場所も変わらず、ずっとこの鶯谷でお店をやっているので、建物も古いし壁の柱時計はついに動かなくなってしまいましたけど(笑)。今の時代、手軽にコーヒーが飲めるお店は増えたからこそ、こういう昔ながらの喫茶店があってもいいじゃない、と思うんです」

鶯谷で“純喫茶”を守り続けるお店「DEN(デン)」のクリームソーダ

創業50年以上。このアットホームな店内や絶品の人気メニューも長い年月をかけてできあがったもの。それでも、純喫茶であり続けようというマスターの思いがあふれるこの空間は、まるで止まってしまった柱時計が、現実の時間をも止めたかのように、昭和の創業当時そのままなのです。

ぼくは第1回の連載で純喫茶の定義付けをあえてしていないと言いました。純喫茶は、需要に合わせて変わっていくお店が多いからです。しかしデンは、純喫茶であることにこだわっている。そんなお店は都内にいくつあるんだろう。この古き良き雰囲気を残そうというお店が少しでもあれば、これから時代が変わっても純喫茶という文化は無くならないのではないでしょうか。

鶯谷で“純喫茶”を守り続けるお店「DEN(デン)」のクリームソーダ

(クリームソーダ 600円、グラパン980円、プリン550円 全て税込み価格)

DEN(デン)
東京都台東区根岸3丁目3-18
TEL: 03-3875-3009 
営業時間:9:00~19:00(L.O. 18:00)
定休日:木曜

鶯谷で“純喫茶”を守り続けるお店「DEN(デン)」のクリームソーダ

(文・見津 賢 写真・ヨシノハナ スタイリング・村井素良)

【衣装クレジット】
・クルーネックTシャツ  14,500円
・ワイドパンツ 26,500円
(ともにroundabout)
・シューズ  23,000円 (Clarks ORIGINALS / Clarks Japan )
※全て税抜き価格

【問い合わせ】
Clarks Japan 03-5411-3055

 

クリームソーダがおいしいお店 ラインナップ

①鶯谷 DEN(デン) 10/31公開

②四谷 コーヒー ロン 11/7公開

③東大前 こころ ゲスト:小谷実由 11/26公開予定

④平井 ワンモア 11/28公開予定

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PROFILE

  • 見津 賢

    1996年神奈川県出身、青山学院大学理工学部卒業。在学中に始めたモデル活動をきっかけに芸能界に入る。現在はCMやドラマ、映画などに出演している若手俳優。

  • ヨシノハナ

    1996年東京都出身。東京造形大学デザイン学科写真専攻を今年3月に卒業。 元フォトグラファーの父の影響で写真を始める。 雑誌やファッションブランドのルックを撮影するほか、個展など多方面で活動している新進気鋭の写真家。

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