小川フミオのモーターカー

メルセデス・ベンツEQCは“フツウ”じゃないのに“フツウ”の魅力

ついにメルセデス・ベンツのEV(Electric Vehicle:電気自動車)の登場だ。2019年7月4日に日本でも発表になった「EQC」の特徴は、知らないで乗ったら、EVってわからないかもしれない、ところにある。

(TOP画像:ステレオマルチパーパスカメラとレーダーセンサーを使った運転支援システム搭載)

バッテリー駆動のピュアEVのことをBEV(Battery Electric Vehicle)と呼んだりする。EQCは、メルセデス・ベンツのブランドとしては日本で初めて発売されるBEVだ。欧州などではこれまでに「Bクラス・エレクトリックドライブ」などを手がけており、もし今回のEQCが“本番”なら、事前準備は着々と進められてきたことになる。

メルセデス・ベンツEQC

日本では50kWまでのCHAdeMO(直流急速充電)に対応

EQCはけっこう大きなサイズで、全長4761mm(欧州仕様車)もある。2873mm(同)と長いホイールベースは、既発の新型「GLC」(日本では10月3日発表)と同一だ。

そのため、GLCのプラットフォームを採用した、ちょっとお手軽なつくりのEVとみられがちかもしれない。しかし、ホイールベースを同一にしたのは、生産工場の同じラインで混流で組み立てられるからにすぎず、「ほとんどのパーツは新設計」と日本法人のメルセデス・ベンツ日本の広報担当者は説明している。

メルセデス・ベンツEQCは“フツウ”じゃないのに“フツウ”の魅力

私が「従来のエンジン搭載車と近い」と思うのは操縦感覚だ。ジャガーI-PACE(日本既発)やアウディe-tron(未発売)のような競合関係にあるBEVとは少し異なり、ハンドリングや加速感ではEV独特の感覚が薄い。

EVは電気モーターで駆動するので、エンジンと違って、アクセルペダルを踏み込んだとたん、最大トルクが立ち上がる特性を持つ。そのダイレクトな加速感を強調するために、足まわりを少し硬めにし、ステアリングのダイレクト感を増す設定がありがちなパターンだ。

EQCも最大トルクは765Nmと、ガソリン車でいえばメルセデスAMGのC63S(700Nm)を軽く超える。車重は2495kgと重量級だが、実際には、まったく不足はない。

いきなり速い、という感覚はないけれど、特にドライブモードを「スポーツ」にしてアクセルペダルを踏み込むと、どこまでも力がわきでるように思える。ペダルの踏み込み量にしたがって加速がぐんぐんと伸びていくかんじは、EVというよりよく出来たガソリンエンジン車のようなのだ。

メルセデス・ベンツEQC

エアコンのアウトレットの形状など専用デザインだが、10.25インチの液晶パネル2枚とボイスコントロールシステムは標準装備

今年度の入荷はほとんど売約済みというが、多くは従来のメルセデス・ベンツ車のオーナーだとか。適度な重さを持つステアリングホイールを切ったときに、比較的ゆっくりした速度で車体がロールするようすなど、メルセデス・ベンツそのもの。受け入れられやすそうだ。

電気モーターは前後に搭載されていて、前輪と後輪をべつべつに駆動する。EQCは、たいていの場合、前輪だけで走り、アクセルペダルを強めに踏み込んだときや、滑りやすい路面では後輪も駆動されるという。

おとなに十分なサイズの後席

おとなに十分なサイズの後席

EVらしさを感じさせるのは、回生ブレーキを使用したときだ。従来の車両ならマニュアルでの変速時に使うステアリングホイール背後のパドルで、回生ブレーキの強さを選ぶ。

回生ブレーキとは、ブレーキング時の力を利用してバッテリーへのエネルギー回収を行う機構だ。回生が強いと(バッテリーへの回収率が高いと)そのぶん抵抗が増える。

EVでは回生システムを利用して、アクセルペダルを離したさいに、ブレーキがかかるようにしている。メーカーによっては、ブレーキペダルをほとんど使わなくても、アクセルペダルのオフだけで減速から停止まで行える、いわゆる“ワンペダル”という設定を採用しているぐらいだ。

EQCでも回生レベルを「D- -(マイナス×2)」にすると、かなりの速度からでも強く減速が働く。ブレーキランプも点灯するけれど、かなり強い減速などで追突される危険性があるから「使うときは要注意」と私は試乗前にアドバイスを受けたほどだ。

ふだん街中で経験する渋滞では「D-」ぐらいにしておくと具合がよい。普通に走るときは軽度の「D」か、「D+」(回生なし)のほうが慣れ親しんできた感覚に近い。

四輪駆動時の液晶パネル

液晶パネルにエネルギーフローが表示される(写真は四輪駆動時)

車体のデザインは、SUVより乗用車に近い、いわゆるクロスオーバータイプである。着座位置は少し高く、かといって高すぎないので、少し足腰に自信がない人でも問題なく乗降できるだろう。

後席もサイズ的に余裕があり、試しにしばらくここに座って走らせてもらったところ、路面からのショックもなく、居心地がいいのがうれしい驚きだった。排気音も入ってこないので静かだし、家族で使うにもなかなかよいのではないだろうか。

価格は1080万円(税込み)と安くはない。ジャガーI-PACEの976万円(税込み)と近接している。ジャガーのほうが未来的な要素があって、コーナーでの楽しさを重視している感があるけれど、メルセデス・ベンツの長所は安心感だろうか。セダンを比較したときの印象と似ている。

【スペックス】
車名 メルセデス・ベンツEQC 400 4MATIC
全長×全幅×全高 4761×1884×1623mm
モーター形式 非同期モーター2基 パートタイム四輪駆動
最高出力 300kW
最大トルク 765Nm
航続可能距離 400km
価格 1080万円(税込み)

(写真=筆者)

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PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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