めぐり、めぐって純喫茶

四谷の老舗純喫茶「コーヒー ロン」で味わうクリームソーダとジャムトースト

昭和の香りただよう純喫茶には、そのお店ならではのストーリーや、おいしいコーヒー、そして食事があります。ともに1996年生まれの俳優・見津 賢と写真家・ヨシノハナが、東京のさまざまな純喫茶をたずねる本連載、第5回は四谷にある「コーヒー ロン」です。

静かで落ち着いた街、四谷にある「コーヒー ロン」

数多くの喫茶店があつまる街、四谷。ジャズ喫茶の老舗「いーぐる」があったり、その周りには夜、多くの人でにぎわう飲み屋街があったりします。さらに近くには上智大学があるので、多くの大学生とすれ違うことも。不思議な街だなあ、と思いながら目的地を目指します。

四谷の老舗純喫茶「コーヒー ロン」で味わうクリームソーダとジャムトースト

おおっ! 大通りを歩いていると、大きな看板が見えてきました。一目でわかる、いっぷう変わった外観が目を引きます。重厚さを感じるコンクリートの壁、少し高めに配置された「Lawn」と「ロン」の文字。エレガントさをまとうエントランス、店名の筆記体チックなフォントも好み。

らせん状の外階段があり、入り口のドアはガラス張りで、中の様子がギリギリみえるくらいの不透明度。余計なものを省いた、洗練された統一感のある外観には心ひかれます。雑多で生活感のある喫茶店も好きだけど、こういうつくりの喫茶店もまた、入る前からわくわくしますよね!

四谷の老舗純喫茶「コーヒー ロン」で味わうクリームソーダとジャムトースト

店内に入ると、目線は真っ先に上に向きます。2階まで吹き抜けになっているため、ほかのお店ではなかなか見られない開放感があり、とても広く感じます。レジ横にあるピンクの回転ダイヤル式電話がかわいい。こういうのが、純喫茶の好きなところの一つです。早速クリームソーダとおすすめのジャムトーストを注文。

せっかくなので、マスターもお気に入りという2階席へ。店内のらせん階段を上ると……。2階もおしゃれ! 入り口ドアから天井まで続く縦長の窓。ほどよく自然光が入ってなんとも壮麗な光景。

四谷の老舗純喫茶「コーヒー ロン」で味わうクリームソーダとジャムトースト

ここにいるだけで、映画のワンシーンに入り込んだような、そんな錯覚に陥りそう。それぐらい建築的なこだわりを感じます。と、内装に夢中になっていると、いつの間にかクリームソーダとジャムトーストが!

四谷の老舗純喫茶「コーヒー ロン」で味わうクリームソーダとジャムトースト

これは……思い描いていたクリームソーダそのもの! でも、想像よりものすごくおいしい。ソーダグラスにそそがれた、きれいな緑色のメロンソーダ、中央に浮かぶバニラアイス、アイスピックで砕かれた氷のかけら。深紅の革張りソファとの色合いもたまりません。ものすごくマッチしている。

では、いただきます。クリームソーダには、たまにシロップを入れすぎて甘ったるいものがあるけど、このクリームソーダは炭酸との割合がちょうどいいというか、口当たりもすっきりして飲みやすい。アイスが溶けて甘さのバランスがいいあんばいになる感じです。

四谷の老舗純喫茶「コーヒー ロン」で味わうクリームソーダとジャムトースト

そしてジャムトースト。2枚切りの分厚いパンにバターの風味と果肉が残るイチゴジャムがかけ合わさって、懐かしさのある味です。パン自体は分厚いけど、カットされているので食べやすい。あっという間に食べ終わりました。

店内の写真を撮らせてもらっているとマスターが話しかけてくれます。お店について少しお話を伺いました。「創業66年、僕が先代の父が始めたこの店をついでから50年。初めは道路を挟んで反対側にお店があったんだけど、昭和32(1957)年以降のオリンピックに向けた拡張工事で今の土地が空いたから、2号店としてオープンしたんです。ここが南店で、元の店が北店。『ロン』という名前は当時の喫茶店でよくあったけど、うちは“Lawn”と書くので少し意味が違う、芝生ってこと。なんで芝生かっていうのは、最初の店に芝生があったから、それだけなんですよ(笑)」

四谷の老舗純喫茶「コーヒー ロン」で味わうクリームソーダとジャムトースト

ご実家もお店の近くだそうで、四谷というこの街への思い入れも深いんだなと感じます。店名の意味も分かったところで、最初にできた北店も気になるけど、やっぱりこの洗練された建物の内装について聞いてみることに。

「ここはオープン当初からお付き合いがある、著名な建築家さんのお弟子さんに、独立記念みたいな感じで建ててもらったんですよ。コンクリート打ちっぱなしというのも純喫茶では珍しいし、この店は内側に柱が1本もなくて外階段がその役割を担っているんですね。1階の天井も斜めに作られているんですよ、面白いでしょう? 床は一つ一つ埋められた、れんがでできています」

なるほど、これで入った時に感じた広さの謎が解けました! すべて計算された設計によるものだったんですね。ロンは建築的に斬新な純喫茶で、今でも建築家志望の学生が見に来るそうです。

四谷の老舗純喫茶「コーヒー ロン」で味わうクリームソーダとジャムトースト

メニューについてうかがうと、「メニューは創業当初からずっと変わらない。もちろんクリームソーダは人気ですよ。『放課後ソーダ日和』って映画にもうちが出てくるし、その影響か最近若い子もよく来るようになったんですよ」

そう、ここロンは映画監督・枝優花さんが撮影した『放課後ソーダ日和』をのロケ地でもあるんです。純喫茶好きとしては、とてもアツい作品でした。

「でもやっぱりうちは純喫茶だから、ほんとうはコーヒーが売りなんですよ(笑)。ネルドリップでいっぱいに淹れて、香りよりも味を楽しんで欲しいですね」。そうですよね……店名に“コーヒー”がつくくらいだし……。次は店内に流れるビートルズを聴きながら、ゆっくりコーヒーを飲みに来ようと思います!

四谷の老舗純喫茶「コーヒー ロン」で味わうクリームソーダとジャムトースト

ちなみにロンは『ひょっこりひょうたん島』で知られる井上ひさしさんも常連だったそうで、執筆に行き詰まったときは、よくひと休みしに来られていたとマスターは語ります。建築家や作家さんまでもがお気に入りの、歴史あるロンで、クリームソーダを(もちろん、コーヒーも!)楽しんでみてください。

(クリームソーダ750 円、ジャムトースト300 円 いずれも税込み価格)

四谷の老舗純喫茶「コーヒー ロン」で味わうクリームソーダとジャムトースト(文・見津 賢 写真・ヨシノハナ)

コーヒー ロン
東京都新宿区四谷1丁目2
営業時間:11:00~19:30
定休日:土日祝

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PROFILE

  • 見津 賢

    1996年神奈川県出身、青山学院大学理工学部卒業。在学中に始めたモデル活動をきっかけに芸能界に入る。現在はCMやドラマ、映画などに出演している若手俳優。

  • ヨシノハナ

    1996年東京都出身。東京造形大学デザイン学科写真専攻を今年3月に卒業。 元フォトグラファーの父の影響で写真を始める。 雑誌やファッションブランドのルックを撮影するほか、個展など多方面で活動している新進気鋭の写真家。

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