吉田直樹さん特別コラム

人がオンラインゲームをプレイしない理由その4. 『オンラインゲームって、なんだか難しそうなんだよね』

「友達にオンラインゲームで遊んでいる人がいてね」

「うんうん」

「その人が言うには、とても面白いらしいんだけど、理由を説明してもらったら、わけのわからない単語を連発されて、さっぱり意味がわかんなかったのよ」

「あー、あるある、そういうの」

「やっぱり、オンラインゲームって難しそうよねぇ……」

なんていう会話をしたことがある、あるいは聞いたことがあるそこの貴方! まあまあ、ちょっとお待ちなさい。きっとそのオンラインゲームを遊んでいる友達は、本当にオンラインゲームが大好きで、何とかそれを友人にわかってもらいたい、何なら一緒に遊びたいと、必死なだけなのだ。

はっきり言えば、最近のオンラインゲームは、まったく難しくなどない。まず、そう断言してしまおう。

なぜそう言い切れるのか、例を挙げてみるので、ぜひ、ご自身の胸に手を当てて(実際に当てる必要はない。比喩である)お読みいただきたい。

例えば、貴方が大のサッカーファンだとする。しかし、友達はサッカーを嫌いではないものの、特に強く興味を持っているわけではない。その場合どうするか。おそらくだが、サッカーの持つ魅力を、熱く語って聞かせる、という方法を取るのではないだろうか。もちろん、スタジアムへ強引に引っ張っていく、という手もないわけではないが、それではあまりに一発勝負すぎる。雨でも降ったらズブ濡れになり、サッカーが嫌いになってしまう可能性すらある。

しかも、ここで大きく問題となるのは、そもそも友達がサッカーのルール自体を詳しくないことだったりする。サッカーの魅力を伝えようにも、ルールがわからないと、意味がわからないだろうな、と貴方は考える。たいていの場合、ここに落とし穴がある。まずはルールを教えようとしてしまうのだ。

ところが、いざサッカーのルールを初心者に伝えようとすると、それがとても難しいことに気づく。

「サッカーってね、足でボールを蹴って、相手のゴールにボールを入れたらそれで1点になる。90分試合をして、相手よりも多く得点を稼いだ方が勝ち。ね、簡単でしょ?」

「どうして足で蹴るの? 手に持って運んだ方が簡単じゃないの?」

「……えーと、手で掴(つか)んだら簡単だからこそ、足でのみボールを運(はこ)ぶのさ」

「足なのにボールを運ぶの?」

「あ、いや、運ぶというのは、ゴールまで持っていくことで……」

「え? やっぱり持つんじゃない。持つってことは、手を使うのよね?」

「えーと……ボールを手で掴んじゃうのは反則で、手を使えるのはキーパーっていう人だけで」

「……ごめん、わけわかんない」

もちろん、この会話は極端な例である。しかし、たった一つ言葉を間違え、サッカー用語を使ってしまうと、相手はそれだけで混乱に陥る。オフサイドなんていうルールを教えようものなら、いきなり破綻(はたん)するだろう。面白いとか、面白くないとか以前の問題で、もう聞くのを諦めてしまう。教えてくれようとしている人が興奮していると、教わっている側は、逆にどんどん醒(さ)めていきがちだ。ワールドカップで大いに盛り上がったラグビーでも同じことが言える。

ラグビーなどさらに難しく、

「ラグビーはね、楕円形のボールを持って、相手の陣地の端にあるゴールエリアに、ボールを置けばいいんだ。それで得点。これをトライする、って言うんだ。トライくらいは、聞いたことあるよね?」

「うんうん、トライはわかる。きっと足の速い人がたくさんいたら勝てるよね!」

「いやいや、ラグビーは、そう簡単にトライできるわけじゃないんだよ。相手にタックルできるんだ。簡単に言えば体当たり。相手を掴まえて、地面に倒してボールを運ばせないようにするんだ」

「え、体当たりしたら反則じゃないの?」

「ラグビーはね、格闘技みたいなものなんだよ。もちろん、首から上へのタックルは危険だから反則だ」

「ふーん、でも、それならタックルされる前に、他の足の速い人にボールを渡せばいいんじゃない?」

「そう、そうやってパスをする。でもね、ラグビーが最高に面白いのは、パスは自分よりも前には出せないんだ」

「え? どうして?」

「だって、それじゃ簡単すぎて面白くないもの」

「簡単じゃダメなのか……」

「ダメなんだ」

「……(ナニ言ってんだコイツ)」

これもまた極端な例だが、もしかすると最近の日本でよく聞いた会話かもしれない。

……なんだか余談が過ぎた。話を戻すと、要するにこれらの例のように、「ルールから教えようとする人」というのが非常に多く、それによって誤解が生じる、と言いたいのだ。何事も、そんなに簡単なものは存在しない。

社会にだって数多くのルールがあり、僕たちは子供のころから、そのルールを少しずつ覚えていくから、複雑に感じていないだけだ。各種スポーツ競技や趣味の魅力を伝えようとしたとき、ルールから教えるのは悪手である。ルールを教えようとすると、そのルールの意味を教えなければならなくなる”からだ。

「オンラインゲームは難しい」という印象や思い込みは、こうやって形成されている。かつてインターネットがまだ一般的ではなかった頃は、そもそもインターネットが難しかったのは確かだ。やれ回線が太い/細い、ルーターがどうのこうの、ISPはどこが良い、ISDN…ADSL…LAN…とまあ、用語だけでパンクしてしまう。しかし、今やそんなものは意識しなくたって、みな、空気と同じようにインターネットを使っている。メカニズムを知らなくたってテレビは映るし、インターネットはつながるのである。

だから、難しいのはオンラインゲームではない。インターネットのルールが難しかったのだ。「オンラインゲーム」の「オンライン」の部分が難しい、と感じる原因だ。

近頃の日本では、特に意識しなくても家にインターネットが敷設されている。回線が無くたって無線Wi-Fiが飛び交っている。だから、最近の家庭用ゲーム機は、その普及台数の80%以上がインターネットにつながっている。意識しようがしまいが、繋がっていることが多い。

オンラインゲームは、インターネットを通じて、世界中の人と一緒に遊ぶゲームである。インターネットに通じている、ということ以外は、他のゲームとまったく変わらない。なぜなら、どのゲームにもそれぞれに独自のルールがあり、オンライン/オフラインにかかわらず、それは共通だからだ。インターネットが難しいものではなくなった(という当たり前すぎて、意識もしていないだろう)今、オンラインゲームだけが難しいということはない。これが最初に断言した最大の理由である。

ここで貴方は、「じゃあ、お前はサッカーの魅力を友達に伝えるとき、どうするんだよ」と、するどいツッコミをされるかもしれない。僕の答えは、「スタジアムで、友達と一緒にサッカーを見る」である。

「語るに落ちたな?! さっき、スタジアムに行って雨降ったらダメになるって書いたじゃん!」と、熟読されていた貴方は素晴らしい。熱狂や面白さを伝えるのなら、確かにスタジアムが一番だが、リスクはそれなりに高い。そう、確かにサッカーではそうなのだが……。

ここで本題に戻ろう。僕が貴方にオススメしたいのは、サッカーではない。サッカーは好きだけれど、これはオンラインゲームについてのコラムである。しかも、「オンラインゲームは難しいらしい」と感じている貴方への説得である。そんな貴方に、ぜひご紹介したいものがある。

実は、『ファイナルファンタジーXIVフリートライアル』というものが存在する。フリートライアル、つまり無料である。オンラインゲームではあるが、先ほど書いたように、オンラインは難しくない、ということが証明されたので、あとは”ゲームが面白いかどうか”の実地検証だけが残ったと言える。サッカーを一緒にやってみよう、と言うのはハードルが高すぎるが、ゲームならばそんなことはない。遊んでみて面白くなければ、やめてしまえばよいのだ。繰り返し言うが、無料なので気楽に試せるところがまた素晴らしい。

さらに言えば、屋外で遊ぶものではないから、雨が降っても問題はないのである。

 

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PROFILE

吉田直樹

ファイナルファンタジーXIVプロデューサー兼ディレクター
(株式会社スクウェア・エニックス 取締役/執行役員/第三開発事業本部 本部長)

「ファイナルファンタジーXIV」のプロデューサーとディレクターを兼任する傍ら、2018年に株式会社スクウェア・エニックス 取締役に着任。
出身は北海道札幌市。専門学校卒業後、1993年に株式会社ハドソンに入社し天外魔境シリーズ、ボンバーマンシリーズなどの開発に携わった。
2005年に株式会社スクウェア・エニックスに入社。「ドラゴンクエスト モンスターバトルロード」や「ドラゴンクエストX」の制作を手がけたのち、2010年には「ファイナルファンタジーXIV」のプロデューサー兼ディレクターに就任した。批判が多かった当時のゲームシステムなどを改修するため綿密な開発プランを実行し、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」として作品を立て直した。
以来、ファイナルファンタジーXIVの開発・運営を指揮している他、第三開発事業本部の本部長として部門運営にも従事している。
無類のゲーム好きを公言し、休日には一般のプレイヤーと共に「ファイナルファンタジーXIV」を楽しんでいるほか、他の新作ゲームも積極的にプレイしている。

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