吉田直樹さん特別コラム

人がオンラインゲームをプレイしない理由その3. 『パッケージソフトを買った以外にお金がかかるのは嫌だなあ』

「オンラインゲームは、やたらお金がかかる!」。こんな風に思っている方が、世の中には非常に多い。これは一部正しく、一部間違っている、と断言できる。一部は正しいわけだから、この理由は間違っていないし、否定もしない。しかし、ちょっとだけ待ってほしい。一部は間違った認識なので、その認識だけでも、後述の内容を読んでいただき、改めてほしいと切に願う次第である。

家庭用ゲーム機は、ゲームソフトが無いと遊べない。最近の家庭用ゲーム機は、本体を持っているだけでYouTubeやNetflixを観(み)られる機能があるので、一昔前とは異なるものの、ゲームを遊びたいと思えば、やはりゲームソフトが必要だ。ゲームソフトは、おおよそ5800~8800円くらいのものが多い。もちろん、最近は、「プレイするだけなら無料」というゲームも存在するので、若干複雑にはなってきていると思う。

ゲームソフトを購入してしまえば、そのゲームの所有権は購入者のものになる。対応している家庭用ゲーム機と、ゲームソフトがあれば、貴方がそのゲームに飽きてしまうまで、何度でも、何時間でも、何年でもプレイできて、それ以上のお金は発生しない。一般的にこれは、「買い切りビジネス」とも言われる。

しかし、その一方で、オンラインゲームの場合には、「ゲームソフト購入費用」の他に、追加でお金をいただくケースが多い。一見して、「プレイするだけなら無料!」と書いてあったとしても、ゲーム内のアイテムを買わないと、満足に強くなれなかったり、無料のままではキャラクターの育成に、膨大な時間がかかったりしてしまう。なぜなのかと言えば、ゲーム開発もビジネスだからだ。

僕たちゲーム会社は、ゲームの開発スタッフに給料を払わなければならないので、一切無料のままでゲームを提供するわけにはいかない。それでは会社が倒産してしまう。基本的には、先ほど述べたような“買い切りビジネス”で、ゲームソフト自体を購入していただき、それで利益を上げて社員の給料を払っている。

つまり、プレイ料金無料のゲームであっても、どこかでお金をいただかないと、開発費を回収できなくなってしまう、というわけだ。

ではなぜ、「オンラインゲームだけが、お金がかかる」というイメージが強いのだろうか? 確かに、オンランゲームでは、ゲームソフトを購入したのに、それにとどまらず、別途“プレイ料金”などを要求されることがある。

もちろん、これには先ほどの例とまったく同じで、ビジネスとしての理由がある。オンラインゲームは、PlayStation 4やNintendo Switchのようなゲーム機本体と、ゲームソフト以外に「サーバー」というものを用いてゲームをプレイするものだ。簡単に言えば、この「サーバー」というものの維持に、お金が必要なのである。

オンラインゲームは、基本的に、たくさんの人たちで、一緒にゲームを遊ぶことになる。たくさんのプレイヤーや、キャラクターのデータを同時に扱うことは、進化したとはいえ、今の家庭用ゲーム機の性能ではそれに耐えられない。もちろん、ゲームデータの改ざんをして、無敵キャラを作ってしまったり、ズルをして経験値を得たりといったような不正行為を防ぐ必要もある。たくさんの人が一緒に遊ぶのだから、公平さが大切だ。

そこで必要になってくるのが、高性能なパソコンによって構成されている”ゲームサーバー”というわけだ。これなら不正行為が極端にしづらくなるし、家庭用ゲーム機では実現しにくい、数千~数十万人が同時に、同じゲームを遊べるようになる。様々な例はあるものの、これがオンラインゲームの基本だと思っていただきたい。

更にオンラインゲームには、「運営」というものが存在する。買い切りのゲームソフトと違って、基本的にオンラインゲームに終わりはない。僕たち開発チームは、常にプレイヤーのみなさんのために、ゲームをアップデートし、新しいシナリオを追加したり、巨大なボスバトルを次々と用意していく。ゲームシステムも進化していくし、ゲームの世界で家を持つことだってできるのだ。オンラインゲームは、採算が合わなくなった時、運営終了となってしまうが、基本的に、終わらないように開発を続けるのが僕たちの仕事である。

でも、やっぱりこれもビジネスだから、僕たちが開発を続ける限り、費用がかかってしまうので、みなさんに“プレイ料金”という形で、お金をお支払いいただいている。

ここまで読まれた方は、「なんだ、やっぱりお金がかかることに変わりはないんじゃないか」と思ったかもしれない。確かにオンラインゲームをプレイするには、ゲームソフト購入とは別にお金がかかる。しかし、「やたらお金がかかる」というのは間違いである。最初に書いた通り、半分当たっているが、半分間違っている。

僕が総指揮を執っているファイナルファンタジーXIVは、パッケージを購入すれば、30日の無料期間がついてくる。つまり、まずは1カ月、パッケージ以外のお金は一切発生しない。そもそも、同じゲームを1カ月も続けてプレイすることは、稀なのではないかな、と思う。

そして、その1カ月が過ぎると、プレイを続けるために“プレイ料金”が必要になる。これが月額1500円程度。ファイナルファンタジーXIVは、「月額課金制」というビジネスモデルのゲームなので、普通にプレイするのならこれ以上のお金は一切かからない。強さにまったく関係のない、おしゃれ装備などは一応売っているものの、別にそれを買ったからといって、ゲームが有利になることはない。

さて、この月額1500円をどう捉えるだろうか。昼食2、3日分である。当然30日プレイし放題なので、何時間遊んでいただいても一定料金だ。週に3日、一回のプレイ時間が3時間くらいだとすると、1時間当たり42円くらいか。1年プレイを続けたとして、1万8000円くらい。飲み会に3回参加するくらいの金額である。これを、「やたらとお金がかかる」と思う人は、あまりいないだろう。

そしてぜひ考えてみていただきたい。週3日、1回のプレイを3時間だとすると、当然他のことはできなくなる。それだけ時間を消費しているのだから、無駄な飲み会は減り、余計な散財は減っていく。つまり、相対的に出費は減ることになり、逆にお金が貯(た)まることだってあるのだ(事実そう発言する人も多い)。

いかがだろうか? 少しはイメージが変わっていただけているとありがたいが、「いーや! お前はオンラインゲームのプロデューサーだから信用できない!」という、聡く、疑り深い方もいるかもしれない。「追加でお金を払ってまで、プレイしなくたって他のゲームもあるじゃん」という主張もあり得るだろう。そんな貴方に、ぴったりな機会をご用意した。こちらである。

6_麻雀

ファイナルファンタジーXIVフリートライアル』というものが存在する。フリートライアル、つまり無料である。パッケージ料金も必要なければ、プレイ料金も必要ない。現在は複数のジョブやクラス、どれでもレベル35まで自由に遊べる。レベルが35に到達した後だって、プレイが遮断されてしまうことはない。ちなみに、ゲームの中で麻雀もできるので、一生無料のまま、オンライン麻雀ソフトとしても遊ぶことができる。この辺りのアップデートは無料で受けられる。

オンラインゲームには、オンラインゲームでしか味わえない体験がある。僕たちはそのために開発をしているし、「プレイ自体にお金を払っていただく以上、買い切りのゲーム以上のゲーム体験をお届けしたい」と考えている。ご自身の価値観を確認するためにも、一度体験してみるのも悪くないのでは?

 

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PROFILE

吉田直樹

ファイナルファンタジーXIVプロデューサー兼ディレクター
(株式会社スクウェア・エニックス 取締役/執行役員/第三開発事業本部 本部長)

「ファイナルファンタジーXIV」のプロデューサーとディレクターを兼任する傍ら、2018年に株式会社スクウェア・エニックス 取締役に着任。
出身は北海道札幌市。専門学校卒業後、1993年に株式会社ハドソンに入社し天外魔境シリーズ、ボンバーマンシリーズなどの開発に携わった。
2005年に株式会社スクウェア・エニックスに入社。「ドラゴンクエスト モンスターバトルロード」や「ドラゴンクエストX」の制作を手がけたのち、2010年には「ファイナルファンタジーXIV」のプロデューサー兼ディレクターに就任した。批判が多かった当時のゲームシステムなどを改修するため綿密な開発プランを実行し、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」として作品を立て直した。
以来、ファイナルファンタジーXIVの開発・運営を指揮している他、第三開発事業本部の本部長として部門運営にも従事している。
無類のゲーム好きを公言し、休日には一般のプレイヤーと共に「ファイナルファンタジーXIV」を楽しんでいるほか、他の新作ゲームも積極的にプレイしている。

人がオンラインゲームをプレイしない理由その2. 『他人に迷惑をかけるのが怖いから、プレイするのはためらわれる……』

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