LONG LIFE DESIGN

MY LONGLIFE DESIGN.3 「僕の生活の中のロングライフデザイン」

MY LONGLIFE DESIGN.3 「僕の生活の中のロングライフデザイン」

デザイン活動家・D&DEPARTMENTディレクターのナガオカケンメイさんのコラムです。ナガオカさん自身が自宅で使っているロングライフデザインを紹介する第3弾。

「僕の生活の中のロングライフデザイン」身のまわり編:3

さてさて、今回も、我が家の中をゴソゴソと探し、長く使っているものをご紹介します。ここから読み始めた方にご案内。今回が3話目なんです。これ、自分としてはシリーズと考えていまして、毎回五つを我が家の中から紹介しています。

毎回、お伝えしていますが、結果、僕のやっている店(D&DEPARTMENT)のものが多くなってしまうのは、仕方ありません。すみません。ロングライフデザイン好きなので、ほとんど実際に家で使っているもので……。ここでネット通販するつもりはありませんよー(笑)。

>>「僕の生活の中のロングライフデザイン」身のまわり編:1
>>「僕の生活の中のロングライフデザイン」身のまわり編:2

11.Apple Computerのバッグ

これはいつ買ったものかをはっきりと覚えていません。製品を買ったらついてきたおまけなのか、周辺グッズとして販売されていたものを僕が買ったのか……。自分で「LONG LIFE DESIGN」をテーマに活動していると、こういうものの偉大さを感じます。なんというんでしょうか「残るもの」ですね。ブランドが一歩、一歩、しっかりと大切に成長しようとするとき、自身がこういうしっかりと使える周辺のものを作り、後世に残そうと思うわけですが、これは今も最新のマックブックエアーという商品を入れて使っているというところが、本当にすごいなぁと思います。

“適当に使える風”のノベルティはありますが、多少のお金がかかってもちゃんと作り込む。その「お金を多少使っても作りこむ」ところに、ファンはそのブランドの意志を感じるわけです。もしかしたらやっぱり、しっかりと価格をつけて販売していたものかもしれません。しかし、僕はそれほどMacのファンでもありませんが、こうして残っている。そして、使えているというのが、うーん、やっぱりすごい事です。もし、あなたが会社で製品にまつわるこうしたノベルティのようなものをつくることがあったら、やはり、そこに少しだけ愛をつぎ込み、少しだけお金をかけて「使えるもの」を作りましょう。それを見て、ファンはよりファンになると思うのです。

MY LONGLIFE DESIGN.3 「僕の生活の中のロングライフデザイン」
ものすごいシンプルな作りです。中にポケットとかはありません。繊細な部分がないので、ちぎれたり壊れたりしようがありません。そういうところもいいです。

12.「辻和美さんのメンチョコ」

金沢で活動しているガラス作家の辻和美さん。金沢21世紀美術館で開催された「生活工芸展」に出品者として選んでいただいたご縁で、ずっと仲良くさせていただいてます。その頃は辻さんのことは「日本の工芸を背負って立つ、粋なお姉さん」くらいに思っていました。作家として、彼女のつくる作品に関心を持ったのは本当に最近で、人間が素晴らしすぎて、何を作っているのかはどうでもよかったのでした。本当に人としてほれぼれするほど、熱く、そして心情がある。金沢のことや日本のことをよく考えている。
彼女が岐阜の安藤雅信さんや、長野・松本の三谷龍二さんらと「生活工芸」という、「民藝運動」を彷彿(ほうふつ)させる動きを始めた時も、本当にすごい人だなぁと思うばかりでした。

ある自分の企画展のために、辻さんを取材に行った時のこと。僕はほぼ初めて、辻さんの作品を手にしました。それがこの「メンチョコ」です。今や300種類以上の模様のバリエーションがあり、辻さんの代表作。今、オーダーすると優に1年は待たなくては手に入らない人気商品です。そんなこととは知らず、何個か注文し、自宅で使うようになり、そこでこのグラスの馴染む感じに、もう、手放せなくなるほど、好きになりました。カットグラスは普通はエッジをきかせ、細かく細工をすることで伝統的かつ高価なものになる世界。そこにも辻さん独特の「もっと日常で楽しくアートピースとしても使って欲しい」という考えから、カットしたエッジを何度も窯の中に入れ、エッジをあまく柔らかにする「ファイヤーポリッシュ」という技法にこだわり、想像以上の手間暇で作られています。

気がつけば、我が家で何かを飲む時は、これか、もう一つのグラスくらいしか使わなくなりました。それにしても何度か辻さんに「うちの店でも取り扱わせて!!」と、お願いしているのですが……。昔からの付き合いがある取引先を大切にする辻さんのそんなところも、大好きで、今日も朝から使っています。ちなみに「メンチョコ」の「メン」は「麺」だそうです。なんダァ、ウイスキーを気取って飲む用かと思ったら、辻さん、麺が大好きみたい。

MY LONGLIFE DESIGN.3 「僕の生活の中のロングライフデザイン」

MY LONGLIFE DESIGN.3 「僕の生活の中のロングライフデザイン」

五つあった我が家のメンチョコも、大好きな人が訪ねてくるたびに一つ、また一つとなくなっていく。でも、大好きな人が作っているものだから、どうしてもプレゼントしたくなります。そういう顔の見える感じも素晴らしい。

factory zoomer
https://factory-zoomer.com/glassworks.html

13.一澤信三郎帆布の氷バッグ

正式な名前は知りません。このバッグ、製氷業の方の依頼を受けて作ったもの。その後も改良を加え続け、氷屋さんから「もう、完成だね」と言われたかどうかは分かりませんが、改良のしようがなくなった時から、店頭で販売をしているそうです。こういうものづくり、本当に素敵です。
一澤信三郎さんのモノづくりの信念は「あつらえ」の精神。推定ターゲットを設定するような商品開発は一切せず、頼まれた人のために全力で作り、その人が使っていて思ったところを改良し続け、いい道具になったら、販売するわけです。そもそも生活道具って、こうやって生み出すべきです。

さて、そんなストーリーを店頭で聞かせてもらった僕は、何に使うかも考えずにこの大きなバッグを購入。自宅に持ち帰った後は、ここだけの話、しばらく何も使わず放置していました。大きすぎて日常のいつ使うか、なかなか活躍の場がなかったのでした。
僕は静岡の富士宮というところに家を建てて住んでいるのですが、会社が東京ということで、なかなか帰れず、東京に小さなマンションを借りて仮暮らしをしています。そんなことで部屋の片隅に放置していたある秋の日。このバッグが、薪ストーブの季節を前に焚き付け用の新聞紙や、静岡に持っていくであろう食材などをいれるのにちょうどよいことに気づきました。そして、いつの間にか「東京静岡の往復便」となり、大活躍中。

何がすごいって大抵の大きさのものは入ります。なんだか慌てて静岡に向かう瞬間にも、バタバタと目についたものをパパッと入れるのに最適。何でも受け止めてくれます。普通、バッグには思い浮かぶだいたいの容量がありますが、これにはそんな日常感覚の容量的なものはない。なので、本当に「移動」する時のなんでも便として使っています。

MY LONGLIFE DESIGN.3 「僕の生活の中のロングライフデザイン」

部屋の片隅になんでもこい!!とでも言うように待ち構えている氷バッグ

MY LONGLIFE DESIGN.3 「僕の生活の中のロングライフデザイン」

一澤信三郎帆布の氷袋
http://www.ichizawa.co.jp/products/details/134.html

14.SEIKOの壁掛け時計

2000年に起業した僕の店「D&DEPARTMENT」は、最初はほとんどの商品が中古品でした。要するにリサイクルショップだったわけです。その時、古物商の免許を取り、業者しか入れない市場に仕入れに行くと、よくこの時計が出ていました。これはいわゆる学校の時計。学校のものは通常の電池式ではなく(電池が切れて止まったり、そもそも交換の手間も大変)、親機が職員室のようなところにあり一括管理され、これらはいわゆる「子機」として後ろで線で繋がれているもの。つまり、これを仕入れても使えないのです。

公共の場にあるこうした普遍性のある時計は、空港や駅にあるものもそうですが、凛として飾り気が無く、シンプルで格好いいですよね。しかし、ずっと、見つけては、その後ろに線が2本だらんと下がっているのを見ては、「あぁ、こんなにいいデザインなのに……」と嘆いていました。
それでも使えなくてもいつかどうにかなると思い、たくさん購入して溜め込んでいたものを、研究熱心なうちのUSED担当が、市販の時計の部品を時計屋さんに接続してもらい、日常で使えるようにしたのです!! すごい!! ということで、うちにあった子機としての時計も同じように修理。今では正確に時を刻んでいます。

流行から生まれていない、そして、そもそも学校の教室でいつまでも長く使い続けられるようにデザインされたものだから、これから先も飽きるなんてことなく、使い続けるのでしょうね。
ちなみに僕は壁掛け時計を壁に吊るすのが好きではなく、写真のようにどれも立てかけています。自分でも理由は分かりませんが、壁という固定の場所に縛られず、家具のように気が向いたら移動できるように使いたいのかもしれません。

MY LONGLIFE DESIGN.3 「僕の生活の中のロングライフデザイン」

寝室にある子機だった時計。大きいので目が覚めて「今、何時……」なんて時も一目瞭然。音もせず、絵のように活躍しています

MY LONGLIFE DESIGN.3 「僕の生活の中のロングライフデザイン」
以下はD&DEPARTMENTで販売中の子機だった時計たちです。ぜひ、どうぞ。
https://www.d-department.com/category/STORE_USED/2099000200080.html
https://www.d-department.com/item/2099000200076.html

15.サンラメラ

最後は季節商品。今、まさに大活躍の遠赤外線ヒーターのサンラメラ。あぁ、なんだかやっぱり通販チャンネルみたいになってきました(笑)。僕がこの商品を素晴らしいと思う理由は明確に三つあります。

「機構がシンプルで故障がほぼない」
「品質のいい本物のセラミック板を使った赤外線ヒーターである」
「流行から生まれていないから、飽きることがない」

です。変にちょっと残念なのは、最近まで2段階しかなかった温度設定が、3段階になったこと(笑)。これは普通に考えたら、お客さんの声を聞いての改善なのでしょう。それくらいそもそもストイックに単機能で高性能でした。

世の中の家電で問題なのは、すぐに新製品が出ること。すぐにモデルチェンジがされる。まだまだ使えるのに「古くなった」気持ちになること。そして、いろんな最新機能を満載することで複雑になって修理できず、故障したら新品と交換しなくてはならないので、愛着を持ってずっと一緒にいられないことです。その点、このサンラメラは超単機能。スイッチも二つしかありません。昔のアイロンや扇風機のように、スイッチを入れたら動く。暖かくなる。複雑さからの不安もなく、「暖かくなること」に徹しているのもいいですよね。

我が家ではまさにコロコロと動かして使っています。朝はテーブルの下の足元。夜はテレビの前の足元。妻は床でストレッチをする日課があり、その時も近くで温めてくれます。サイズが何種類かあるようですが、我が家は一番小さなものを使っています。転倒防止機能も付いています。とにかく高倉健さんのように、温めるだけのために生まれた不器用じゃけん……な、いいやつです。
値段が少し高いのは、本物の高性能セラミック板を使っているからです。変にオレンジ色に発光して、偽の“暖かいような感じ”を作り出すなんてこともなく、つまり、暖かいけれど、光ったりはせず、じっと温めてくれます。本当にオススメします。

MY LONGLIFE DESIGN.3 「僕の生活の中のロングライフデザイン」

我が家のサンラメラ。シンプル過ぎて流行もなんのその。デザインが少し田舎臭いところもいいです

遠赤外線パネルヒーター「サンラメラ」
https://www.d-department.com/item/SUNRAMERA.html

さて、いかがでしたでしょうか。またいつか第4話書きますね。お楽しみに!!

あわせて読みたい

「僕の生活の中のロングライフデザイン」身のまわり編:1

「僕の生活の中のロングライフデザイン」身のまわり編:2

ロングライフデザインを探して d&d公開商品選定会より

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PROFILE

ナガオカケンメイ

デザイン活動家・D&DEPARTMENTディレクター
その土地に長く続くもの、ことを紹介するストア「D&DEPARTMENT」(北海道・埼玉・東京・富山・山梨・静岡・京都・鹿児島・沖縄・韓国ソウル・中国黄山)、常に47都道府県をテーマとする日本初の日本物産MUSEUM「d47MUSEUM」(渋谷ヒカリエ8F)、その土地らしさを持つ場所だけを2ヶ月住んで取材していく文化観光誌「d design travel」など、すでに世の中に生まれ、長く愛されているものを「デザイン」と位置づけていく活動をしています。’13年毎日デザイン賞受賞。毎週火曜夜にはメールマガジン「ナガオカケンメイのメール」www.nagaokakenmei.comを配信中。

「民藝的グラフィック」とは 来年の第二回ロングライフデザイン展を前に

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