今日からランナー

途中でラーメンも振る舞われる! 「おかやまマラソン」の“おもてなし”がすごい!

ひさびさの大会ルポである。11月10日(日)に開催された「おかやまマラソン2019」(岡山県岡山市)を走ってきた。この大会はフルマラソンと5.6kmのファンランがあるが、当然、フルを選択する。前にこの連載で宣言した「47都道府県『旅ラン食べラン』コンプリート」の一環だ。かつて取材で岡山県に来たことは何度かあったが、レースに出るのは初めてだ。

おかやまマラソンが始まったのは2015年のこと。今年は節目の5回記念大会になる。いまでこそ市民、県民がひとつにまとまる一大イベントに育っているが、第1回大会当時は地元でも賛否両論あって、紆余(うよ)曲折のスタートだったとマラソン実行委員会名誉会長で岡山県知事の伊原木隆太さんが前夜祭で熱く語っていた。なにしろ、大会半年前になっても警察と折り合いがつかずコースが確定しない、メインスポンサーも決まらないというドタバタぶりだったという。

しかし、大会関係者の努力もあって過去4回の大会を通じてマラソンは市民、県民に浸透した。昨年の第4回大会では、国内最大のランニング専門サイト「ランネット」の大会ランキングで、居並ぶ人気レースを抑えて、なんと1位を獲得している。このランキングは大会参加者がコース設定や運営、おもてなし、沿道の盛り上がりなど23項目を100点満点で採点するものだが、おかやまマラソンは平均93.5点で前回6位からトップになった。ちなみに、世界6大マラソンのひとつでもある東京マラソンは91.4点で4位だった。

こうした人気を反映して、参加希望者も右肩上がりだ。今年はフルマラソン一般枠1万3千人に約2万8千人の応募があり、人数も抽選倍率約2.2倍も過去最高を記録した。この人気ナンバー1の秘密はどこにあるのか。それを探ることも、今回の参加目的のひとつだった。

途中でラーメンも振る舞われる! 「おかやまマラソン」の“おもてなし”がすごい!

絶好のマラソン日和となったこの日、約1万6400人のランナーがゴールを目指してスタートを切った

大会前日の11月9日に岡山入りする。当日のスタート地点であり、大会本部のある岡山県総合グラウンド(ジップアリーナ岡山)はJR岡山駅から徒歩圏内とすこぶる便利だ。ゼッケンを受け取り、エキスポを散策するとご当地グルメにまず目を奪われる。名物のデミカツ丼(デミグラスソースがかかったカツ丼)をはじめ、お好み焼きに地元産のカキがのったカキオコ、津山ホルモンうどんにラーメンとどれも旨(うま)そうだ。さんざん迷った末にデミカツ丼とカキオコを食べる。期待を裏切らないおいしさだった。

有森裕子さんら豪華アンバサダーが集結!

翌大会当日になると、人気ナンバー1の秘密が徐々に解き明かされていく。まずは、天気だ。実は、岡山県には「晴れの国」というキャッチコピーがある。降水量1mm未満の日が年間276.8日あって、これは全国1位なのだそうだ(1981〜2010年の平年値)。雨が降らないというのはランナーにとってはポイントが高い。実際、この日もまたとないマラソン日和になった。

次がゴージャス過ぎるアンバサダー&ゲストランナーである。岡山といえばお約束の桃太郎と並んでもうひとつ、女子マラソンで有名な天満屋デパートがある。その天満屋から、シドニー五輪の山口衛里さん、アテネ五輪の坂本直子さん、北京五輪の中村友梨香さん、ロンドン五輪の重友梨佐さんが駆けつけてくれた。そして、第1回大会からスペシャルアンバサダーを務めているのが岡山市出身でバルセロナ、アトランタ両五輪のメダリスト、有森裕子さんだ。なんと、オリンピック経験者が5人も! 現役引退後の有森さんがフルマラソンを走るのは、このおかやまマラソンだけなんだそうだ。これは気分が盛り上がらざるを得ない。

ゼッケン受け取りからスタートまでの運営はまったくストレスなくパーフェクトだった。スタート地点周辺には十分な仮設トイレがあり、塩分チャージタブレッツ、スポーツドリンク、水などが用意されている。おそろいのジャンパーを着たボランティアの人たちの動きも機敏だ。だが、この大会の“おもてなし”のすごさは、走り出してからさらに思い知ることになる。

その前にコースをザックリ説明しておくと、30kmを過ぎたところにある高低差約17mの岡南大橋を除けば、いくつかの橋でアップダウンがあるもののおおむねフラット。全体に単調だが、道幅も広く走りやすい。前半では、後楽園から岡山駅に向かう桃太郎通りというのがあって、ランナーと路面電車が並走する。後半は、岡山城を回り込む形で元来た道へ戻り、総合グラウンド内にあるシティライトスタジアムのトラックを走ってフィニッシュとなる。

話を戻すと、この大会でいちばん印象的だったのが沿道の声援とエイドの充実ぶりだ。ボランティアスタッフはもちろん、地域の人たちからの掛け声も途切れることがない。目が合うと、大きな声であいさつもしてくれる。「頑張ってくださ〜い!」という言葉を何度聞いたことだろう。吹奏楽の演奏も1カ所や2カ所ではなかった。学校や会社、工場には横断幕などを使ってランナーに向けたメッセージが掲げられている。街全体が“おもてなし”であふれていた。

マラソンのスタート直前、地元のダンシングチームが完走を祈念して舞い踊る

マラソンのスタート直前、地元のダンシングチームが完走を祈念して舞い踊る

そして、驚きのエイドである。水やスポーツドリンクは当然として、岡山ならではの食材がこれでもかというほど振る舞われるのだ。甘さ満点のシャインマスカットにプチトマト、温州みかん、瀬戸大橋まんじゅう、白桃ゼリー、千両ナスの浅漬けは塩分補給としてカラダに染みた。桃太郎の吉備団子をマラソン用に改良したスポーツ吉備団子なんてのもある。それだけではない。

おかやまマラソン最大の名物が岡南大橋の難所を越えたところにある「ラーメン広場」だ。なんとマラソンの途中でラーメンを食べさせようというのである。そこには5種類のラーメンとギョーザがあって、その気があれば全部食べてもオッケーだ。もちろん自己ベスト更新を狙っているランナーは、こんなところに寄る余裕はない。だからこそ、30km過ぎに設置されているのだと思った。つまり、この地点ならタイムを諦めたランナーがゆっくり立ち寄ることができる。これも細かい気配りで、脱帽としか言いようがない。ちなみに、私はゆっくりラーメンをいただいた口だ。

32km付近に設けられた「ラーメン広場」では、タイムを諦めたランナーたちが舌鼓を打っていた

32km付近に設けられた「ラーメン広場」では、タイムを諦めたランナーたちが舌鼓を打っていた

ゴール前での“お出迎え”に感動

さあ、ここからゴールまで約10km、旭川沿いを市街地に向かってひたすら走る。今回は1年ぶりのフルマラソンでしかも体重を落とし切れなかったので、最初から制限時間いっぱいを使ってマラソンを堪能しようと決めていた。エイドには全部寄って、全部食べて、写真も撮って……。自分的には超スローペースだったが、やっぱりフルはつらい。あとチョットからがキツイのだ。

それでもゴールは必ずやってくる。朝、出発した総合グラウンドが見えてきた。シティライトスタジアムに飛び込むと、また驚きの光景が。有森さんらアンバサダー&ゲストランナーのみなさんがハイタッチで出迎えてくれる。大型スクリーンには自分の姿も一瞬、写る。フィニッシュラインを越えると、そこには伊原木県知事や同じく実行委員会名誉会長の大森雅夫・岡山市長ら地元のお偉いさんたちがズラリ勢ぞろいしている。大森市長に至っては、次々とやってくるランナーのほとんど全員と握手していた。こりゃすごいわ。

東京マラソンの小池百合子都知事だってスタートには来るけど、ゴールには来ませんからね。市長や県知事はいったい何時間、スタジアムで待っていたのだろう。最後に、今年はランナーの要望に応えて沿道の仮設トイレを増やしたという話を後で知った。しかも、フルマラソンの20km以降は足腰への負担が少ない洋式にしたそうだ。どこまでも徹底している。そんなわけで、県と市をあげての“おもてなし”と“おいしさ”に打ちのめされた42.195kmだった。

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PROFILE

山口一臣

1961年東京生まれ。ゴルフダイジェスト社を経て89年に朝日新聞社入社。週刊誌歴3誌27年。2005年11月から11年3月まで『週刊朝日』編集長。この間、テレビやラジオのコメンテーターなども務める。16年11月30日に朝日新聞社を退社。株式会社POWER NEWSを設立し、代表取締役。2010年のJALホノルルマラソン以来、フルマラソン20回完走! 自己ベストは3時間41分19秒(ネット)。

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