小川フミオのモーターカー

ボルボ史上もっともオシャレなモデル ボルボ480ES

1980年代、ボルボはことさら新車開発に意欲的だった。売れ線のセダンやステーションワゴンに加えて、新しい市場開拓を目指したのが「ボルボ480ES」。2ドアの4人乗りクーペで、低いノーズ部分と格納式ヘッドランプが特徴的だ。

(TOP画像:リトラクタブルライトが特徴的だった)

1985年に480ESが発表された時点で、いすゞにピアッツァ(81年)があり、ホンダにはアコード・エアロデッキ(85年)があった。私はこういうロングルーフのクーペというのか、2ドアのステーションワゴンというのか、ちょっと実験的なスタイリングが嫌いではなかったので、480ESも魅力的に思えた。

ボルボ480ES

ボルボの「アイアンマーク」がなんとバンパー下のエアインテークについている

なめらかな面をもつボディーは、当時のボルボのセダンとはまったく違う方向のスタイリングコンセプトだ。デザインを手がけたのは、イタリアのカロッツェリア・ベルトーネとうわさされていたのも、むべなるかなだ。

実際は、ベルトーネはたしかにプロジェクトに関わっており、スウェーデンの本社デザインセンターと緊密にデザインを練り上げるところまではやっていたけれど、最終的なスタイリングはオランダにボルボが持っていたスタジオのデザイナーだそうだ。

ボルボ480ESのリアビュー

ホンダ・シビックを思わせないでもないリアビュー(もちろん関係はなかった、はず)

ボルボは1800ES(1971年)にはじまり、クーペにけっこう熱心だった。ひとつは米国市場でパーソナルな2ドアクーペが人気だったからだ。480ESもとうぜん米国での販売増が主たる目的である。が、運悪く米国経済が低迷したため、ボルボは輸出をあきらめたと資料に記録が残っているのだ。

エンジンは当初、ルノーが開発した1721cc4気筒エンジンを購入して載せていた(当時ボルボはルノー、プジョーとビジネスのアライアンスを組んでいた)。なによりボルボの歴史に残るのは、最初の前輪駆動の量産車だったことだ。

ボルボは当時、“雪道などで安全なのは後輪駆動”とことあるごとに謳(うた)っていたのだが、このときから、モデルレンジには前輪駆動と後輪駆動が混在するようになる。では、後輪駆動なのか、前輪駆動なのか。確信をもてないことは大声で言わないほうがいい、と私は思ったものだ。

ボルボ480ESのインテリア

シートのマテリアルを含め、内装に凝るのはこのときからボルボの魅力

480ESのもうひとつの特長はインテリアだ。ダッシュボードもたくさんのスイッチと計器をきれいに整理して並べていて、クルマ好き(少年)には魅力的だった。そしてそれ以上に目をひいたのが、2席を独立させたリアシートの構成である。

中央にアームレストを置いた480ESのリアシートは、ぜいたくな4人乗り、という印象を与えた。英国のジェンセン・インターセプターとかロータス・エリートといった70年代のスペシャルモデルも似たタイプのリアシートを持っていたけれど、もっと広い空間を確保するなど、ボルボは機能面も考えていた。

ボルボ480ESのサイドビュー

プロファイルを見ると、意外なほどルーフの前後長があって室内空間が大きく確保されているのがわかる

のちのメルセデス・ベンツCLSやアウディA7スポーツバックといったパーソナル性を強調したモデルに先鞭(せんべん)をつけたデザインといえる。前席とデザインの共通性もあったし、しゃれたアイデアだと思う。

1985年には同じエンジンに、インタークーラー付きのターボチャージャーを搭載した「480ターボ」が追加される。標準モデルが109馬力であったのに対して、こちらは120馬力だ。実用域のパワーを持ち上げた設定で、好感の持てるモデルである。ボルボはオシャレなクルマを作っても、つねに日常的な機能を忘れていなかった。

【スペックス】
車名 ボルボ480ES
全長×全幅×全高 4260×1710×1320mm
1721cc直列4気筒 前輪駆動
最高出力 109ps@5800rpm
最大トルク 14.3kgm@4000rpm

(写真=Volvo Cars Corporation提供)

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PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

“自分の信じるものこそ人のためになる” モノ作りの信念を貫いた「サーブ95」

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