フワモコではない“真の定番フリース” パタゴニアの「メンズ・ベター・セーター・ジャケット」
文: 吉田大

この数年、アウトドアウェアを街中で着こなす男性が増えている。カジュアルでちょっとオシャレで着心地もいい。本コラムでは、ファッション性と機能性を兼ね備えたアウトドアブランドが展開する「これさえ持っていれば間違いない」というマストバイなウェア、グッズを紹介していく。
北米を中心に爆発的な人気を誇る “セーター風”フリース

レギュラー・フィットゆえ、身幅着丈とも余裕があり、比較的ゆったりと着ることもできる。フェアトレードサーティファイ縫製を採用
この数年、パタゴニアの「レトロフリース」が大ブームとなっている。フワフワの手触りとモコモコとした質感で人気を集め、発売直後からプレミアム価格で取引されることも少なくない。パタゴニアのフリースといえば“フワモコ”。そんな印象を持っている方も多いだろう。しかしこの現象は日本国内限定のもの。世界規模で見ると、パタゴニアで最もよく売れているフリースは「メンズ・ベター・セーター・ジャケット」なのだ。

一枚生地の表(左)が表面。裏面は起毛している
その名称から、コットンやウールを使ったジップアップセーターだと誤解されがちなアイテムだが、実は化学繊維で作られたフリースジャケット。外側こそシックなニット織りだが、内側に目を向ければしっかりと起毛したフリースであることが分かる。パタゴニアでカテゴリーマーケティングを担当する加藤学さんは、このアイテムについて次のように語る。
「2008年に発売されて以来、特に北米での人気が非常に高いアイテムです。街着としても使うことを意識して作られていますが、フリースの長所である吸湿発散性や保温性は申し分ありません。トレッキングやバックカントリーでは、シェルの下の中間着として活躍してくれますし、ハイキングやキャンプといったアウトドア・アクティビティー、最近ではヨガを楽しむ方にもご愛用いただいているようです」(加藤さん)

「キャンプやハイキングからタウンユースまで多用途に活用することを前提に作られたアイテムです」とパタゴニアの加藤さん
カジュアルなデザインながらアウトドアウェアに引けを取らない機能性

ラグランスリーブなので、腕が動かしやすく、バックパック着用時に肩に縫い目が当たることもない
このアイテムが全世界で人気を集めている要因は、スポーツウェアらしからぬシックな質感以外にもある。一見ミニマルなデザインながら、とりわけ都市においては、アウトドアウェアに引けを取らない機能を発揮してくれるのだ。

肉厚なフリース生地をフラットに縫い合わせている、非常に肌当たりが良い
激しい運動をすることを前提に作られているテクニカル・フリースは通気性が高く、真冬に一枚で着ると、風によって熱を奪われてしまうことも多いため、上からナイロンシェルを羽織る必要がある。しかし都市からフィールドまで幅広いシーンでの活用を考慮して作られた「メンズ・ベター・セーター・ジャケット」は、比較的肉厚な生地を使用している。そのため耐風性が高く、初冬までは一枚で完結する街用アウターとして活躍してくれる。

胸にはスマートフォンなどを収納できるジッパー付きの胸ポケット
さらに胸ポケットと腰部分に二つ付いているハンドウォーマーポケットは、ともにジッパー付きで、失せ物をしっかりと防いでくれる。またラグランスリーブ仕様となっているため、肩にスッキリとなじみ、バックパックのストラップとの摩擦をステッチの布が防止してくれている。
「基本的なデザインは発売当初からほとんど変わっていません。ぱっと見ではわかりにくいのですが、肌当たりの良い襟裏やジッパーからあごを守るチンガードなど、本当に細かいところに気が利いている着心地の良いジャケットです」(加藤さん)

左右配置されたハンドウォーマーポケットもジッパー付き

襟内側には、あごを金属ジッパーから守るチンガードがついている

襟裏は肌当たりを考慮して二枚仕立て。襟と背の縫い目はマイクロポリエステル・ジャージー素材の縁取りで覆うことで、肌当たりを改善しつつ耐久性を高めている
ペットボトル7500万本分の資源を再利用 「問題のない」環境保護系フリース

パイピング用の素材もリサイクルされたもの
フリースは非常に使い勝手のいいアイテムだが、長年にわたって環境に負荷がかかる衣料として批判を受けてきた。しかし繊維会社「Malden Mills(モールデン・ミルズ)」と共同で「シンチラ」(=現在フリース)を開発したパタゴニアは、批判を真摯(しんし)に受け止め、常に状況の改善を続けている。その象徴と言えるアイテムが「メンズ・ベター・セーター・ジャケット」なのだ。
「世界中で一番売れているフリースだからこそ、素材のリサイクル率を高めることで、環境への負荷を軽減しようと考えてきました。ジッパー以外のすべてのパーツをリサイクル素材に変更したことで、今シーズンだけでも地球を半周する長さに相当するペットボトル7500万本分の資源をセーブしています。また従来の製法に比べ染料とエネルギーと水の使用量を大幅に削減するローインパクトの染色処理を採用しているのも特徴です」(加藤さん)
フリースはそのまま洗うと微細なプラスチック繊維が洗濯機から流れ出て、河川や海を汚染するとも言われているが、パタゴニアはこうしたマイクロプラスチックへの対策を始めている。
「パタゴニアのフリースは耐久性が高いため毛は抜けにくいのですが、それでもゼロというわけではない。そこで我々は非常に細かい目でマイクロプラスチックをキャッチしてくれる『グッピーフレンド』という洗濯ネットをオススメしています」(加藤さん)

ドイツのストップマイクロウェイスト社が製造している高性能洗濯ネット「グッピーフレンド・ウォッシング・バッグ」(4,070円)
かつてフリース素材の服は「便利だが問題も多い」との指摘を受ける衣料だった。だがそのオリジネーターと言われているパタゴニアが生み出した「メンズ・ベター・セーター・ジャケット」は「ほぼ問題はない」と言っていいレベルにまで進化している。街からフィールドまで活躍してくれる万全な機能を備え、ブランドのマインドが遺憾なく詰め込まれた“真の定番フリース”。あなたのワードローブに加えてみてはいかがだろうか。
Patagonia(パタゴニア)
メンズ・ベター・セーター・ジャケット
¥ 18,700(税込み)
https://www.patagonia.jp/product/mens-better-sweater-fleece-jacket/25528.html
取材・文/吉田大
撮影/今井裕治
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