小川フミオのモーターカー

最新のフェラーリは「甘い生活」 フェラーリ・ローマ発表

最新のフェラーリのテーマは「甘い生活」だった。

(TOP画像:発表会の会場では映画『甘い生活』のシーンがスクリーンに映し出されていた=筆者撮影)

2019年に5台のニューモデルを発表したフェラーリ。掉尾(ちょうび)を飾るのは、1950年代から60年代にかけての優雅な生活を思い出させると謳(うた)われた「フェラーリ・ローマ」だ。驚きの新型車である。

驚きというのは、昨今のフェラーリのイメージとは180度正反対にあるようなコンセプトゆえ。「La Nuova Dolce Vita」、日本語にすると「新しい甘い生活」とフェラーリにはめずらしい抽象的なキーワードを打ち立てて、車名のとおりローマでのお披露目である。

フェラーリ・ローマ発表会

発表会で「ローマ」のかたちについて語るデザイン統括のフラビオ・マンツォーニ氏(右)と、マーケティング統括のエンリコ・ガレリア氏(撮影・筆者)

このところフェラーリは1000馬力の「SF90ストラダーレ」を発表するなど、(超)高性能路線まっしぐらかと思われたが、今回の「ローマ」は「街中でもあまり目立たず、かつ扱いやすく、フェラーリ初心者、スポーツカー初心者でも乗れるモデル」と説明される。

世界中からやってきたジャーナリストを迎えて11月14日に開かれた発表会の場は、ローマ市内のスタジアム「スタジオ・オリンピコ・ディ・ローマ」に隣接していた。

「当時の自由な雰囲気の現代的解釈」とされる「フェラーリ・ローマ」だけに、60年のローマ五輪のために建設された同スタジアムは、まるで64年の東京五輪が東京人に一種の郷愁をかきたてるように、クルマのイメージに合っているのだろう。

会場に入って驚いたのは、大きなスクリーンだ。そこにフェデリコ・フェリーニ監督がローマを舞台に撮った映画『甘い生活 La Dolce Vita』(1960年公開)の各シーンが映し出されていた。

フェラーリ・ローマ

「街中で目立たず普通に乗れるクルマ」とフェラーリでは標榜(ひょうぼう)しつつ、スタイリングは250GTベルリネッタ・ルッソ(1958年)や250GT 2+2(60年)といった歴史的なGTモデルの流れにあるとする(写真・Ferrari SpA提供)

クルマ好きでも知られた二枚目俳優マルチェロ・マストロヤンニや、『男と女』にも主演していたアヌーク・エーメ、それにアニタ・エクベリ(エクバーグ)らの顔とともに、掲げられた文字が「La Nuova Dolce Vita」であった。

チネチッタ(イタリア版ハリウッド)があったローマでは、俳優や制作者がベネト通りの「ハリーズバー」などに集まっていたとか。かつての名優たちの顔は、当時の活気を知っているひとには懐かしく、若い世代には新鮮に感じられるのだろうか。

「ローマ」は、スタイルでは50~60年代を訴求するが、技術的な内容は、現代のスポーツカーとしてかなりトンガっている。ベースになっているのは、格納式ハードトップを持つフロントエンジンの「フェラーリ・ポルトフィーノ」である。

フェラーリ・ローマ

コックピットは左右が独立したユニークなコンセプト。操作系はデジタルだ(写真・Ferrari SpA提供)

ボディーは全長4656mmの「ローマ」のほうが「ポルトフィーノ」より少し大きいが、2670mmのホイールベースは同一。ただし車重は90kgほど「ローマ」のほうが軽く、3855ccV型8気筒ターボエンジンの出力も20CV(イタリア式馬力表記でpsに近い)高い620CV(456kW)だ。

「念のために言うと――」と、発表会会場において、フェラーリ社でマーケティングとコマーシャル(販売)を統括するエンリコ・ガレリア氏が前置きして、こう続けた。

「ローマはポルトフィーノの固定式ルーフ版ではありません。別のセグメントに属するモデルです」

「私たちは忙しい人生を生きています。仕事をしていなくても、いつでもスマートフォンを見て、何かに追われています。そこで、時間を見つけて、エスプレッソを一杯、あるいはワインを一杯、楽しむときの時間は至福です。ローマは同様のコンセプトをクルマに持ちこんだものです。このクルマでのドライブは最高の癒やしになると思います」

フェラーリ・ローマ

なめらかさを強調したスタイリングで白色はデザイナーのイチオシの色とか(撮影・筆者)

「フェラーリがそれを言うんだ」と妙に感心してしまった。

「ローマ」は、50年代のフェラーリのGTをイメージしたという流麗なシルエットを持ち、フェラーリのV8ミドシップスポーツモデルと違って、空力付加物は目につかない。

2ドアクーペボディーで、ハイスピードが出て、そして快適。そんなGTといえば、「ポルシェ911」「アストンマーティンDB11」「メルセデスAMGのGT」さらに「BMW M8」など競合車は少なくない。どのクルマもブランドの個性をしっかり持っているなかで、「ローマ」は最もエレガントなスタイルだ。

会場にフェラーリが用意した「La Nuova Dolce Vita」を意識したというモデルのお二人

会場にはフェラーリが用意した「La Nuova Dolce Vita」を意識したというモデルの2人(撮影・筆者)

価格は20万ユーロ(税別)を少し超えるそうだ。日本での発表は2020年春頃になるという。日本法人のフェラーリジャパンは「発売時期は未定」としている。

【スペック】
車名 フェラーリ・ローマ
全長×全幅×全高 4656×1974×1301mm
3855ccV型8気筒ターボ 後輪駆動
最高出力 456kW@5750/7500rpm
最大トルク 760Nm@3000/5750rpm

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PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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