自然と計算機の境界が溶けていく未来に思いを巡らせる 日本科学未来館に落合陽一氏総合監修の新常設展示がオープン

デジタル技術がさらに発達した未来では、私たちは自然と人工物を区別して認識しなくなる(できなくなる)かもしれない——。日本科学未来館(東京都江東区青海)で、人工知能(AI)が生活や社会を変化させようとしている現在、私たちの“認識”がどのように変化していくのかを考えるきっかけになる常設展示が始まった。

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総合監修とアートディレクションを務めたのは、メディアアーティストで筑波大准教授の落合陽一さんだ。展示のタイトルは「計算機と自然、計算機の自然」。落合さんが著書『デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』(PLANETS)で考察したテーマだ。タイトルの言葉からは、理解するにはかなりの知識が必要そうに感じるが、実際の展示は、大人が見ても、子どもが見てもいろいろな“気づき”があるように工夫されている。

落合陽一

落合さんにそれぞれの展示の狙いを聞いた

タイトルにある「計算機」とはコンピューターのこと。29ある展示物の一つで、タイトルの一部にもなっている「計算機と自然」は、樹木と草花に、管状の光源や構造色印刷技術で造られた蝶(ちょう)、自律で動くロボットアームなどが混ざり合ったアートだ。自然のものと、コンピューターがつくる人工物の境界がなくなった世界の姿を表している。

計算機と自然

展示『計算機と自然』

タイトルのもう一つの言葉「計算機の自然」と題した展示は、人工知能(AI)が、多数の画像を学習して、新しく文字や人間、動物の顔を生成してディスプレーに表示するもの。もし、このようにAIが生成した実在しない人物の顔をアイコンにして、投稿内容もすべてAIが作成したSNSアカウントをフォローしたら、そのアカウントが実在の人物なのかどうか判断はできないだろう。そして、そうした技術が当たり前になった未来の人は、そのアカウントが人間なのかAIなのかをそれほど気にしなくなるのかもしれない。創られた人の顔、動物、植物が次々となめらかに変化していく画像群を見ながら、そんなことを考えた。

計算機の自然

展示『計算機の自然』

思索にいざなうような展示以外にも、モノがそこにあるようにしか見えない立体映像や、ぴったり5秒でタイマーを止めるゲームを実際に試してみると、試した人全体の平均が“5秒”に収束していくという「確率分布」を学べる展示もあって、直感的に楽しめた。紀貫之と武田信玄と初音ミクが共演している展示もあるが、詳細は実際に見て、感じてみてほしい。ひとつひとつの展示についてちょっと解説がほしくなったら、スマートフォンでQRコードを読み取って専用の説明ページを開けば、解説文を読むこともできる。

そして、常設展示全体が、お寺や茶室の周りに配置された竹林をイメージしたという銀色の柱をつかって構成されている。音や光の演出も細かく計算されていて、いわば、展示空間そのものが、ひとつのメディアアートであるように感じられる。展示設計にあたり、空間デザインを担当したnoizと議論を重ねたという。

この展示の構想から完成まで2年半ぐらいの時間をかけたという落合さんは「僕がいつも考えていることを、語りすぎず、学習コンテンツとしてつくりました。親子で、『これはどんな意味があるんだろう』『これは何だろう』と語り合いながら見てほしいです。それぞれがひとつでも『問い』を持ち帰ってもらえるとうれしいです」と話していた。

落合陽一氏

常設展示なので、慌てる必要はない。どこかの週末か長期休みに、子どもを連れて、または1人で、未来と科学、デジタルについて思いを巡らせてみるのも楽しそうだ。

(文・&M編集部 久土地亮、写真・林紗記)

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