小川フミオのモーターカー

ゴルフのライバル 直線を生かしたスタイルのフィアット・リトモ

1970年代はハッチバックの時代だった。70年代初頭から、イタリアやフランスではさまざまなモデルが登場していた。もちろん極め付きは、74年にドイツのフォルクスワーゲンが発表した「ゴルフ」。機能だけでなく、高性能も追求したところがエポックメイキングだった。

(TOP画像:ヘッドランプの存在感が強調されていて、けっこうアグレッシブなフロントマスク)

イタリアのフィアットが、ゴルフの競合とすべく、78年に発表したのが「リトモ」だ。ゴルフスタイルといってもいいような、直線を生かしたスタイルである。

2ドアと4ドアがあり、ボディーカラーは豊富だった

2ドアと4ドアがあり、ボディーカラーは豊富だった

ただし、ゴルフに対して独自性を、と考えた結果だろう、車体はやや大きい。3940ミリの車体はゴルフより100ミリ以上長く、ホイールベースも50ミリ長かった。ゴルフの室内(とくに後席)はやや狭かったので、それをネガと捉えたのだろう。

もう一つ、リトモの特徴は、スタイリングだ。とりわけフロントマスクがいい。丸形のヘッドランプと、グリルと一体型となった合成樹脂のバンパーがキュートな印象である。

フィアットのエンブレムや、エンジンルームに空気を取り入れるスリットの位置が、中央でなく、左右いずれかにかたよって配置されているのも、デザイン的な遊びを感じさせておもしろかった。80年に発表された「フィアット・パンダ」にも引き継がれたコンセプトだ。

よく見ると機能主義的なデザインだが、ふつうのクルマにしたくないというのが当時のフィアットの思惑

よく見ると機能主義的なデザインだが、ふつうのクルマにしたくないというのが当時のフィアットの思惑

リトモの中身は、実はそんなに新しくなく、この連載でも取り上げた「フィアット128」(69年発表)である。当初の1リッターおよび1.3リッターエンジンも128に搭載されていたユニットに手を入れたものだった。

それでも、エンジンとギアボックスを横置きしたレイアウトなど、60年代はメカニズムの面でおおいに進んでいたイタリア車だけに、その時点でも決して古びていなかったのも事実だ。

ゴルフ(と同年発表されたシロッコ)を開発するにあたって、フォルクスワーゲンの開発陣が参考にした点は少なくないようだ。リトモはゴルフの成功を受けて世に出たとされるが、リトモの前身である128がなければゴルフは違うクルマになっていたかもしれない。

ルーフ後端が持ち上がるなど空力デザインが採用されている

ルーフ後端が持ち上がるなど空力デザインが採用されている

私もリトモが日本に導入されるのを楽しみにしていた。が、実際に正規輸入された仕様は衝突安全のための大型バンパーにリデザインされたグリルを備えた米国仕様(ストラーダという名称で販売されていた)で、心底がっかりした。

82年にシリーズ2となって、高性能化したが、一方でフロントマスクはフィアットグループのデザイン戦略変更にともない、センスが感じられない(と私には思えた)ものとなった。私はもっとがっかりした。

「105TC」にはじまり「125TC」さらに「130TC」と高性能なアバルト仕様は、走りは楽しめたけれど、「日常使いするクルマをグッドセンスでもっと快適に」というフィアットの魅力は半減してしまったと思えたものだ。クルマってむずかしい、というのが、私の総じての感想であった。

【スペックス】
車名 フィアット・リトモ65CL
全長×全幅×全高 3940×1650×1400mm
1302cc直列4気筒 前輪駆動
最高出力 65ps@5800rpm
最大トルク 10.0kgm@3500rpm

(写真=FCA 提供)

あわせて読みたい

機能を追求したセダンからラリー競技車まで フィアット131

根強い人気のフォルクスワーゲン・ゴルフ 上質な2代目

小川フミオのモーターカー:連載一覧はこちら

[ &M公式SNSアカウント ]

TwitterInstagramFacebook

「&M(アンド・エム)」はオトナの好奇心を満たすwebマガジン。編集部がカッコいいと思う人のインタビューやモノにまつわるストーリーをお届けしています。

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

レクサスがバッテリー駆動のEV「UX300e」を広州自動車ショーで発表した理由を考察する

一覧へ戻る

独伊合作の美しいスタイリング アウディ100クーペ

RECOMMENDおすすめの記事