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アークテリクス社員のマストアイテムを街用にアレンジ 高性能ボンバー・ジャケット「セトン ジャケット」

この数年、アウトドアウェアを街中で着こなす男性が増えている。カジュアルでちょっとオシャレで着心地もいい。本コラムでは、ファッション性と機能性を兼ね備えたアウトドアブランドが展開する「これさえ持っていれば間違いない」というマストバイなウェア、グッズを紹介していく。

MA-1に比べると身幅は狭く、着丈は長めのスッキリとしたシルエット

MA-1に比べると身幅は狭く、着丈は長めのスッキリとしたシルエット

長らく“定番”として根強い人気を誇る中綿入りフライト・ジャケット「MA-1」。ミリタリーウェアの中でも“名品中の名品”として認知されているアイテムだが、身幅が広く、着丈が短いシルエットであるため、実は着こなしの幅はそれほど広くない。また様々な高機能アウターが出回る現在において、機能性という点でもやや難がある。この数年、こうしたMA-1の欠点を補ったカジュアル・アイテム「ボンバー・ジャケット」が流行しているが、その中でもアークテリクスの「セトン ジャケット」はオススメだ。

腰の左右には2つの隠しジッパー式ハンドポケットが付いている

腰の左右には2つの隠しジッパー式ハンドポケットが付いている

アークテリクスの名作アトム LT ジャケットをタウン用にアップデート

保温性と通気性を両立することで「ちょうどよい暖かさ」を作り出してくれるアトム LT ジャケット(画像は公式サイトより)

保温性と通気性を両立することで「ちょうどよい暖かさ」を作り出してくれるアトム LT ジャケット(画像は公式サイトより)

2019年の秋冬に登場した「セトンジャケット」だが、発売前から一般ユーザーの注目を集めていた。アークテリクス本社スタッフが必ず一着は所有している化繊中綿ジャケット「アトム LT ジャケット」をタウンユースにアレンジしたアイテムだったからだ。

襟は流行のボンバースタイルを採用

襟は流行のボンバースタイルを採用

登山用に開発されたアトム LT ジャケットは、アークテリクスの「顔」と言っても過言ではない優れたアイテムだった。しかし立ち襟や大きなブランドロゴを採用したアウトドア・スポーツ向きのデザインであったため、活用するシーンは限られていたようだ。そこでアークテリクスは、この名作ジャケットの機能はそのままに、街でも着やすい「ボンバージャケット」スタイルのデザインへとアレンジすることを決断。こうして誕生したのが「アトム LT ジャケット」の弟分とも言える「セトン ジャケット」だ。

肩のパネルはラグラン風に。バックパックとの摩擦に起因する縫い目のほつれを防止するとともにフィット感を高めている

肩のパネルはラグラン風に。バックパックとの摩擦に起因する縫い目のほつれを防止するとともにフィット感を高めている

独自素材で通気性と保湿性を両立

「性能はアトム LT ジャケットと遜色ありません」とアークテリクスのコマーシャルマネジャー・高木賢さん

「性能はアトム LT ジャケットと遜色ありません」とアークテリクスのコマーシャルマネジャー・高木賢さん

このジャケットの特徴は、寒さを防ぎつつ、熱くなり過ぎないこと。相反する特徴を両立させているのが、アークテリクスが開発した高性能中綿「Coreloft™ Continuous(コアロフト コンティニュアス)60」アークテリクスのコマーシャルマネジャー・高木賢さんは、この素材について次のように語る。

通常のコアロフトはダウンのようにモサモサとした中綿ですが、長繊維で作っているコンティニュアスは隙間が多い。しっかりと保温してくれますが、通常のコアロフトよりも風を通してくれるので、体から出てくる熱を逃がしてくれます。インナー次第で、幅広い温度調整ができます」(高木さん)

1平方メートルあたり60グラムと非常に軽量なのもコアロフトの特徴

1平方メートルあたり60グラムと非常に軽量なのもコアロフトの特徴

熱がこもりやすい両脇から胴の横部分は、中綿を省き、通気性の高いVelolain高性能フリースを配置。一般的なアウトドアウェアでは、この部分に換気用のピットジッパーを用いることが多いが、このジャケットではジッパー開閉の手間もなくジャケット内のこもった熱を排出することができる。

Velolain高性能フリースの表側はジャージのような質感

Velolain高性能フリースの表側はジャージのような質感

柔らかく、ストレッチ性が高いVelolain高性能フリースを大胆に採用していることで、動きやすさも実現。この素材は毛玉ができにくいため、インナーと擦れやすい襟、袖口、裾、バックパックが当たるサイドパネルにはうってつけだ。ちなみに疎水性を重視しているアトム LT ジャケットのリブに採用されているVelolain高性能フリースは100%ポリエステルだが、「セトン ジャケット」は街で使うことを想定しているため、疎水性よりも保温性の確保を考えてウール35%が混紡されているのだとか。

Velolain高性能フリースの裏側は起毛している。この部分には中綿が入っていない

Velolain高性能フリースの裏側は起毛している。この部分には中綿が入っていない

アトム LT ジャケットでは袖口を一周していたリブは半分に

アトム LT ジャケットでは袖口を一周していたリブは半分に

繊維メーカーと共同開発した超軽量ナイロン「Tyono™ 20」を使用

「Tyono™ 20」は非常に柔らかいが意外なほど毛羽立ちにくいという

「Tyono™ 20」は非常に柔らかいが意外なほど毛羽立ちにくいという

表地には、超軽量ナイロンTyono™ 20を採用。非常に細い繊維を高密度で織って生地にしているため、両立が難しいとされる「柔らかさ」と「耐久性」を兼ね備えていることが特徴だ。実はこの素材、アークテリクスが繊維メーカーに開発を依頼したオリジナル素材だという。

「アークテリクスは繊維メーカーさんから頂いたスペック表を検討するだけでなく、社内で専用の機械を使ってテストした上で素材を採用してきました。厳しい品質管理の中で多くのメーカーさんが、手間のかかるオリジナルスペックでの素材作りにご協力くださるようになっているのだと思います。実はTyono™ 20だけでなく、リブに使われているVelolain高性能フリースも通気度を指定しています」(高木さん)

環境への配慮と機能の向上を両立するアークテリクス

表地には、環境汚染の原因となり、人体にも残留するPFC(過フッ素化合物類)不使用の耐久性撥水(はっすい)(DWR)加工が採用されている

表地には、環境汚染の原因となり、人体にも残留するPFC(過フッ素化合物類)不使用の耐久性撥水(はっすい)(DWR)加工が採用されている

シンプルな見た目とは裏腹に、意外なほど多くのこだわりが詰め込まれているが、実は環境面への配慮もしっかりとなされている。その一つが裏地に導入されている「ドープダイ」と呼ばれる特殊な染色法だ。

現在のところ、ドープダイを採用しているのは裏地のみだが、今後徐々に使用の幅を広げていく予定なのだとか

現在のところ、ドープダイを採用しているのは裏地のみだが、今後徐々に使用の幅を広げていく予定なのだとか

一般的に化学繊維は、無色の糸を織り上げて生地にした後、大量の水と化学薬品を使って染色するため環境への影響が大きい。また、こうした染色法は繊維の中心部まで色素が届かないため、生地の表面がダメージを受けると、染まっていない部分が露出し、白く変色しているように見える。しかしドープダイならば、この環境と品質についての問題を同時に解決してくれるという。

「原料の段階で色を付けてから糸にしているので、水や化学薬品の使用量と消費電力やCO₂排出量を削減することができます。またしっかりと中心まで染まっていますから退色もしにくい。さらに色の定着のために熱をかける必要がないため、生地の柔らかさもキープできます。機能性を高めながら環境へのインパクトを減らしてゆくのがアークテリクスのスタイルです」(高木さん)

保温と排熱を両立した高性能中綿ジャケットは数多い。しかし、コーディネートしやすいアイテムとなると選択肢はかなり限られてくる。クールなイメージはそのままに、アウトドアウェアならではの高機能と環境への配慮が見事に融合したボンバー・ジャケットで、スマートに冬を乗り切ってみてはいかがだろうか。

風よけの前立てもコンパクトに

風よけの前立てもコンパクトに

 

ARC’TERYX(アークテリクス)
セトン ジャケット
29,700 円(税込)

https://arcteryx.com/jp/jp/shop/mens/seton-jacket

 

取材・文/吉田大
撮影/今井裕治

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PROFILE

吉田大

ライター・編集者。大学卒業後、児童書出版社勤務を経て、フリーランスに。ファッション、アート、音楽、ストリートカルチャーから、政治経済、社会問題、テクノロジー、グルメに至るまで、多岐にわたるジャンルにおいて、長年にわたり執筆活動を続けている。趣味は自転車と立ち食いそば店めぐり。お酒や煙草を嗜まないストレート・エッジな生活を送っている。

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