オトナたちに捧げる、現代インターネットのススメ。

ハイスピードで変わりゆくインターネット業界で、ヒットを生み出し続ける「ユーザーとしての視点」

インターネットカルチャーに詳しいりょかちさんが、「今知っておくべきインターネット」に詳しい皆さんと対談する企画。今回のテーマは「女性のキャリアとインターネット」です。対談のお相手は「日本にベビーシッターの文化を根付かせる」を掲げる、キッズライン執行役員の山崎ひとみさん。

山崎さんは、新卒でサイバーエージェントに入社後、「アメーバピグ」「きいてよ!ミルチョ」「by.S」など、さまざまなヒットを手掛けるプロデューサーとして活躍されてきました。前半である今回は、mixiやアメーバピグなどのコミュニケーションプラットフォームが広まった頃の話から、ヒットを生み出す秘訣まで、ネットの世界で働く女性2人ならではの視点で語ります。

高速で変化するインターネットでヒットを打つために必要なのは、「打席に立つ」こと

りょかち(以下、りょ) 山崎さんは“アメーバピグ”の時代からずっとサービスづくりをやられている方ですよね。サービスの作り手から見て、時代ごとに変わってきたこととかってありますか。

山崎 当時はまだガラケーだったので、インターネットといえばPCという感じでしたね。アバターなんかが流行して、インターネットの中で別人格を作って、コミュニケーションをとったりとかゲームをしたりするみたいなことを、若い人たちが始めた頃かなあと思いますが、そういったものの多くはPCをメインに使われる想定で設計されていたんじゃないかな。

りょ mixiも最初はPCから見ていたっていう人の話を聞いたことがあります。

山崎 そうそう。WEBサービスの多くはガラケーも一応対応していたけれど、主にPCで展開されていた。今はスマホが全員の手の中にあって、みんなあんまりPCを使ってないし、WEBサービスもスマホから利用する、若い子はテレビも見ない。インターネットと一言で言っても、デバイスも世界観も違いますね。

りょ 本当にネット文化の変遷って速度が速いですよね……。そんな中で、どうしたらヒットするサービスって作れるんだろう。

山崎 うーん、まずはとにかく打席に立つことなんじゃないかなと(笑)。

りょ おお、なるほど。

山崎 打席って結局、「いくつになっても立ちます!!」というスタンスじゃないと回ってこない。それに、ある程度、それ以前にヒットを打ってないと回ってきません。よく聞くのは、20代に失敗を恐れて大振りできないでいて、結局フォームも固まらないまま勢いが小さくなっていくパターン。

私が20代でサイバーエージェントにいてよかったなと思っているところは、”たくさん失敗させてもらえたこと”。実はサイバーエージェント時代には、20個ぐらい事業を担当していて。なんとかなったのが3個ぐらいなんですよ(笑)。10年ぐらい同じ会社で働いて、ピグは大ヒットしましたが、調子よかったのは2年ぐらいです。

周りはうまくいっている時をすごくフィーチャーしてくれるけど、うまくいかない時期の方が長い。そんな中でも、チャンスを与え続けてくれて、失敗をたくさんさせてもらえたことが大きいですね。

りょ ”座席に立つこと”、それから”失敗すること”。大事だなあって社会人4年目になってわかってきました(笑)。

山崎ひとみさん

山崎ひとみさん

山崎 私は、「適正挫折数」みたいなのを気にしていて。

りょ 適正挫折数……?

山崎 今35歳になったんですけど、歳を重ねれば重ねるほど、苦労をしている人のほうが、信頼されるようになってくるなあって思うんです。

同年代でも、年齢のわりに失敗や苦労をしてなさそうな人は見分けられるようになってくる。だから、格好悪いことに抵抗なく、できるだけその歳に合わせて適切に挫折しようと思っていて(笑)。

りょ すごい。適正挫折数はどうやって設定するんですか?

山崎 うーん、ちょっと感覚的なんですけど、「そろそろ来るな」みたいな(笑)。

りょ (笑)

山崎 例えばアメーバピグは、ローンチして1年半くらいで、会員数500万人くらいまで達成して。もう、ほんとにヒットしたんですよ。

りょ とんでもないコンテンツですね。確かにみんなやってたもんなー。

山崎 そうしたら仕事の大きさが変わってくるんですよね。超有名人とのコラボがきたり、テレビの密着取材が週に1回レベルできたり。 だけど私は当時25歳くらいで、「気まぐれでサービスが当たっちゃった」という意識が強かった。なので、「このままいたら自分は腐る、調子に乗ってしまう」と思ったんですよね。

りょ そんな風に思えるのがすごい。

山崎 ピグをつくっていたころはすごく優秀なメンバーがいるチームで働いていて、私自身はプロデューサーをしていましたが、技術力はないし、ただ、若くて活きが良い「若いねーちゃん力」で頑張っていたものの、仕事の大きさに中身が追いついていかなくなっていった。

自分の評価って、株価のようなものだと思うんですよね。一つの成功をきっかけに世間の評判があがって株価が高騰することはあるけれど、高騰している間にネクストステップのための何かを仕込んでいないと下がってしまうし。世間の評判と真価が育つ時期にギャップがあると……、だから常に世間の評価と自分の真価のギャップを把握していないと本当の株価は上がっていかない。 

りょ 心が痛い……。

山崎 だからこそ、「適正挫折数」が必要になるというか。真価と世評のバランスを取りに行く瞬間が必要。それで、話が戻りますけど、挫折するためにはやっぱり”打席に立つこと”が大事ということかなと思うんですよね。

りょ あえて挫折しにいくの、すごい面白いですね。けど必要な時間だ。

ネットの世界は一瞬で浦島太郎 大事なのはユーザー視点

山崎 それから、自分の感覚が、主観が世間の感覚だと思っちゃう人が多いですけど、企画を考える人間として、できるだけ世間の感覚と自分の感覚のギャップをなくしておくということは意識してますね。

りょ それはいつから意識し始めたんですか?

山崎 本当に今財産になっているなと思うんですけど、サイバーエージェントの時に、藤田晋さんに徹底的に仕込まれて。

当時はグロースなんて言葉もなかったけど、藤田さんは、当時アメーバをグロースさせるために、新卒だったわたしたち何人かを、企画室っていう部署に入れて、週に1回ミーティングしてくださってたんです。そのときまったく売り上げを見たことがなくって。とにかくユーザーの視点に立てっていうことを、徹底的に仕込まれたんですよ。

ユーザー視点に立ったらそれはどうなの、とか、そのユーザー視点って何かっていうのをひたすら聞かれて話していた。今思えば、藤田さんから見たら、当時のわたしがターゲット層ど真ん中だったから、わたしの主観で企画を出すと当たるっていう思いがあったのかもしれない。ユーザーの視点に立つことを意識したのが、すごい財産になってるなと思います。

りょ むちゃくちゃいい経験。

りょかちさん

りょかちさん

山崎 ネット業界は歴史が浅いので、30年プレーヤーはいませんよね。ほとんどの人が10年プレーヤー。PCの時代と、スマホの時代と、スタートアップがでてきた時代と……と、その10年の間でも業界のルールが全然違って、みんな素人みたいなもの。それなのに経験で幅を利かせ始めたら、普通の業界よりも一瞬で浦島太郎というか……すぐ「老害」と呼ばれる存在になってしまう。私は「明日には老害になるかも」っていうすごい危機感がある(笑)。ちゃんと今のトレンドど真ん中を知っておかないと、という焦りはあります。

りょ 流行のキャッチアップをかなり意識してますか?

山崎 うん。若い人とも目線を合わせて話ができるようにしないとだめだと思ってますね。

りょ 私も27歳なので、そろそろ自分より年下の人の声を聞かないといけないな、と思っています。

山崎 Cチャンネルやby.Sの編集長だった時は、できるだけ素直な反応がでてしまう若いペルソナ、ユーザー層ど真ん中の人に協力してもらっていました。彼女をリトマス試験紙にして、アイデアをみせて「え、超ビミョウっすね」って言われたら「ダメダメ、これださない」みたいな。ペルソナを設定するだけじゃなくて、ど真ん中の子をすぐそばに置く。世間の感覚と自分の感覚のギャップを知っておく。サイバー時代は私がユーザーのど真ん中だったのですが、だんだんそれから変わってきたので、意識的にそのギャップを埋めないといけない。

りょ わかります。ペルソナの人がすぐそばにいる環境は大事ですよね。私も大学生をそばに置いて仕事をしていた時期があるけど、本当に良い意見をたくさんくれた印象があります。

時代を読んで動くために必要な“ミーハー力”と“体験すること”

りょ 山崎さんはいつも流行の中心にいますよね。

山崎 そうですね。アバター、ブログ、その後キュレーションメディアをやって。次に動画が来るから絶対に動画をやりたいと思って。

りょ そこのキャリア選択にはやっぱり意志があるんですか?

山崎 あります。次に消費者行動を一番変えるもののドメインを触っていたい、という意識はありますね。そして今はC to C。C to Cは世界を変えます。

りょ なるほど。スキルシェアというようなことですね。

山崎 インターネットが進化すると、新しい仕組みが生まれて、世界がどんどん変わっていくんですよ。FacebookとLINEが出てきた時、世界の人はやっとつながった。昔は連絡取れない人ってたくさんいたんですよ。今はつながろうと思えば、検索すれば絶対誰かつながれるでしょ。その瞬間に、私はインターネットのコミュニケーションの局面は終わったかも、とおもったんですよ。

りょ なるほど。

山崎 その次は、そのコミュニケーションプラットフォームの上に、どういう情報が載るかっていうところに革命が起こる、と思って。そうすると、メディアになる。

りょ すごい。

山崎 当時は4Gもなくてまだ通信環境が良くなかったからテキストと写真。だけど、その後環境が改善したから、動画が伸びたわけですよね。そのコンテンツは今どんどんリッチになっていってる。そしたら次は多分C to Cが、自分が持っているものを、全員が手元にもっているスマートフォンでやり取りし合う仕組みになっていくのかなって。

りょ 予言者だ……。

山崎 予言者じゃないです(笑)。ミーハーだから。ミーハーってすごい重要だと思います。

りょ ミーハー力(りょく)。本当に山崎さんは情報のキャッチアップがすごいですよね。

山崎 資本主義とインターネットの世界の中で、やっぱりみんなが熱狂しているものには絶対理由があるから。私は「なぜ多くの人がこれに熱狂したのか?」ということを、自分で体験的に知っておきたいという欲がすごいんですよ。

りょ 体験すること、大事。

山崎 優秀なマーケターほど優秀なユーザー。色んなものを使っていると思います。旅行のときはAirbnb使うし、移動はUberで、みたいな。「自分が使ってこうだった」を大切にしている。

りょ 一次情報を大事にされているんですね。ユーザーの話をちゃんと直接聞きたいとかも。

山崎 ああ、そうだ。一次情報にふれるのを重要視しているのかもしれないですね。

りょ 山崎さんのヒットを生み出す秘訣を沢山聞けた気がします。思ってたよりもずっと泥臭くてそれが素敵! やっぱり私山崎さん大好きです(笑)。

ハイスピードで変わりゆくインターネット業界で、ヒットを生み出し続ける「ユーザーとしての視点」

(文・りょかち 写真・和田咲子)

後半につづく

山崎ひとみさんが役員をつとめるキッズラインでは、ベビーシッター・家事代行の初回利用で、3000円分ポイントバックのキャンペーンを12月末まで実施中です。
ハイスピードで変わりゆくインターネット業界で、ヒットを生み出し続ける「ユーザーとしての視点」

キッズライン キャンペーン特設サイト

あわせて読みたい

プリクラからVRまで。kawaiiにまつわるテクノロジーは進化する

トレンドは、ナチュラルに“盛る” 進化していく「カワイイ」を生み出す技術

スタンプが男性にも使われたのがLINE普及のカギ りょかち×LINE企画者・稲垣あゆみさん対談

連載一覧はこちら

[ &M公式SNSアカウント ]

TwitterInstagramFacebook

「&M(アンド・エム)」はオトナの好奇心を満たすwebマガジン。編集部がカッコいいと思う人のインタビューやモノにまつわるストーリーをお届けしています。

PROFILE

りょかち

1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒。学生時代より、ライターとして各種ウェブメディアで執筆。「自撮ラー」を名乗り、話題になる。新卒で某IT企業に入社し、アプリやWEBサービスの企画開発に従事。現在では、若者やインターネット文化について幅広く執筆するほか、若年層に向けた企業のマーケティング支援も行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎)。

プリクラからVRまで。kawaiiにまつわるテクノロジーは進化する

一覧へ戻る

いい人がいいインターネットをつくる時代に、女性としてネット業界で働くということ

RECOMMENDおすすめの記事