インタビュー

多彩な役で“2019年の顔”となった俳優・中村倫也の素顔に迫る

昨年のNHK朝の連続テレビ小説への出演をきっかけに、次々と話題の映画やドラマに出演している俳優の中村倫也さん(32)。今年もTVドラマ「凪のお暇」や公開中の映画『屍人荘の殺人』などで、個性的な役を見事に演じて話題を集めている。“2019年の顔”として、数々の賞も受賞した。

『カメレオン俳優』『癒やし系』『イケメン』役ごとにイメージががらりと変わることから、さまざまに形容される中村さんの素顔はどんな人なのだろうか。インタビューすると、乗った電車でマナーに疑問を持ったり、掃除を大切にしたりと、生真面目そうな一面も。仕事、生活、対人関係で中村さんが大切にしていることを聞いた。

「生活」によって本来の自分を取り戻す

最近は雑誌でエッセーも執筆している中村さん。その中で、よく話題として出てくるのが、「日常生活」に関するものだ。俳優をする上で大事にしているのも「生活」で、エッセーにも、休みの日にまずやることは部屋の掃除と書かれている。その理由を、中村さんはこう語る。

「それぞれの作品で役を演じている期間中は、常にその役のことを考えているんです。仕事がシームレスに日常の中に入っている感じ。“俳優でいる時間”というのは、“自分じゃない状態でいる時間”なので、長く続いてしまうと、自分っていう一日のスパンとか、生活サイクルがないと疲れちゃうんです。それに、やっぱり考え事は奇麗な部屋のほうがはかどりますね」

幼い頃からの習慣だったのだろうか。

「そんなことはないですよ。片付けないので、『片付けたらお小遣いあげる』って言われて頑張って片付けていたタイプです。部屋を片付けたり、料理をしたりするようになったのは、一人暮らしを始めてからでしょうか。

ちゃんと生活していると、ちゃんと生きてるって感じがするんです(笑)。『生活』というものは、生きている上で、地に根を張ってるという感覚が”僕”の中にあるんです。こういう仕事をしてると、気を遣ってもらうことも多くなって、それに慣れないといけないときもあるんですけど、そこで感じるギャップを『生活』によってニュートラルな状態に取り戻してるのかもしれないです」

その後に続いた「じゃないと、役に出かけられないんで」という独特の表現も印象的だ。ただ、普段の中村さんは、役に入り込んで抜けなくなるということはないという。

「本当の意味で演じているのは、現場で用意ハイで始まってカットがかかるまで、その間だけじゃないですかね。でも、ひとつの役にとりかかっているときは、思考のほとんどは、そこに向かっている。そんな感じです」

多彩な役で“2019年の顔”となった俳優・中村倫也の素顔に迫る

仕事も、プライベートも、人と人との間にある「謎」を大切にする

作品に入る前には、その役になり切って街を歩いたりもするという。公開中の映画『屍人荘の殺人』では、自称・ホームズとかたる神紅大学ミステリー愛好会の会長の明智恭介を演じる。今回はどんなアプローチをしたのだろうか。

多彩な役で“2019年の顔”となった俳優・中村倫也の素顔に迫る

映画『屍人荘の殺人』全国東宝系にて公開中 ©2019『屍人荘の殺人』製作委員会  【もっと写真を見る】

「まず、葉村譲(神木隆之介)や剣崎比留子(浜辺美波)の関係性や、作品の中での明智の立ち位置を考えるのはプロとして当然で、そこにプラスアルファで何をするかが重要ですよね。

明智は自由度が高い役だったので、ふらふらっとカメラのフレームから外れてもいい。そんなことを考えていると準備段階から撮影に入るのが楽しみでした。でも、現場に入ったら、考えたことを一度すべて忘れるんです。その上で、現場で生まれる関係性や空気を感じとって、毎シーン新鮮な気持ちでやっていましたね」

今回のようにミステリー作品に出演する時だけでなく、他の役を演じるときや日常生活でも、「謎」であることを肯定的に考えてきたそうだ。

「人ってずっと謎じゃないですか?! 皆さんも生きていてそうだと思うんですけど、他人だけでなく、自分自身もどんだけ仲良くなった人でも、謎じゃないですか。そこを大事にしつつ台本なども読み解いていく――。共感性を高めていくみたいなことが作業としてあるのかなと思います。生活の端々でずっと考えていますね」

多彩な役で“2019年の顔”となった俳優・中村倫也の素顔に迫る

©2019『屍人荘の殺人』製作委員会  【もっと写真を見る】

俳優としての「需要」について、仕事がないときに死ぬほど考えていた

過去に掲載されたインタビューで、中村さんは「年々、役の輪郭みたいなものが適当になってきた」という趣旨のことを語っていた。その意味が「謎」だったので、意味を聞いてみた。それは、中村さんの役作りに対する考え方であり、主役級の役を演じるまでの仕事への向き合い方にも関わる言葉だった。

「昔は脇役が多かったんですけど、脇にいる以上、作品にとっての刺激物にならないといけないと思ってたんです。だからピンポイントでやりで突くための準備をしていました」

朝ドラに出る前の中村さんは、『闇金ウシジマくん Season3』でも、『ホリデイラブ』でも、視聴者の気持ちをやりで突くようなインパクトのある演技を見せていた。その演技が注目されるようになる。

「でも、もっと周りと混ざり合ったり、一緒に失敗したり成功したりするためには、自分の中の発想だけで演じてはダメだと考えるようになってきて。いまは、役を演じるために準備してきたことを、現場で一回全部とっぱらうようにしています。そして、その場で起こったことを受けたうえで、魅力を残せるようにしていきたいと思っています。もちろん今も狙いはちゃんと定めますけど、現場ではあいまいに挑むことも大切だと思ったんです」

多彩な役で“2019年の顔”となった俳優・中村倫也の素顔に迫る

中村さんは、脇役から主役級の役を演じられる俳優になるまでには、そのときどきに必要な課題があるという。

「俳優が認知され、呼ばれる存在になっていくには、段階があると思うんです。まずは脇として面白がってもらって期待してもらう。そして、目の前の仕事で期待以上のことを提案することで、面白がってもらってまた呼んでもらう。そんな風に、そのときどきによって合ったやり方があると思うんです。だから30歳過ぎてからは、ぼんやりしてもいいんじゃないかと。そんなことを、20代から漠然と考えていました」

今の活躍からは想像しにくいが、20代前半のころ、中村さんは仕事がない時期も経験している。その経験が、先述のような仕事に対する姿勢につながっているようだ。

「俳優としての『需要』については、仕事がないときに死ぬほど考えました。もちろん怖いですよ。仕事がないということは需要がないことに直結する。でも、そんな現実を受け止めて精査した上で、自分がどう生きたいか、そのためにどうすべきかは考えてきました」

多彩な役で“2019年の顔”となった俳優・中村倫也の素顔に迫る

僕で大喜利をして楽しんでもらいたい

「考え抜いた結果、かつての自分が思い描いていたような生き方はできていますか?」と尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「思ってたよりも早くいろんなところに自分というものが出歩いちゃってる感じですね。これから先は考えても追いつかないことも増えてくるはず。だって、まさか自分がイケメンとくくられたり、CMに出るなんて思ってもみなかったですよ。でも、そこに対しては、『うちはうち、よそはよそ』という感じで、僕は僕のスタンスでニュートラルにやっていきたいです。それに、僕にはいろいろたくらんでることもあるのでね」

ちなみに、そのたくらみについては「明かしたらたくらみにならない」とまだ教えてもらえなかった。そんな「謎」を残すところも中村倫也らしい。

「自分で明言しちゃうと謎が減るんでね。『これは本当なのかな?』って思われたい。デビューしてからもずっと『何を考えてるのかわからない』って言われ続けてきて、でも実はなんも考えてなかったりしてね(笑)」

多彩な役で“2019年の顔”となった俳優・中村倫也の素顔に迫る

筆者は、数年前に中村さんを取材したことがある。その頃の彼は「毎日テレビに出たい」と語っていた。正直、こんなおっとりしたしゃべり方の人からそんなアグレッシブな言葉が出ると思っていなくて驚いたものだ。その時のやり取りを中村さんは覚えていた。

「誰よりもやる気に満ちた青春時代を送ってきたのに、ずっとやる気がないと思われてましたね(笑)。でも、その『毎日テレビに出たい』という夢って、2018年には、月曜から土曜までは朝ドラの『半分、青い。』に、日曜日には『崖っぷちホテル』に出ていたので、一瞬ですけどかないましたね」

最後に、今は仕事に対してどんな気持ちで向かっているかと聞くと、「嫌われないようにしてることくらいかな」と、彼らしい言葉が返ってきた。

「特に好かれるために何かしているわけではないんですよ。最近は、『人たらし』だけじゃなくて、『イケメン俳優』とか『カメレオン俳優』とか、『ゆるふわ』、『癒やし系』……なんて言われることもあります。でも、『へーそうかー、そういう風に見てくれる人がいるんだ』って思えて楽しいんです。

そうやって僕で大喜利をして楽しんでもらいたいなって。20代だったら、『ほんとはそうじゃないのに!』って思ったかもしれないけど、今はもう『好きに楽しんでください』って。いろんな形容詞がつきまとった結果、『あの人はいったい何?』ってなるのも面白いですしね」

(取材・文=西森路代 撮影=野呂美帆)

映画『屍人荘の殺人』全国東宝系にて公開中

2017年国内主要ミステリー賞で4冠を達成した話題の小説『屍人荘の殺人』を、TVドラマ『99.9 -刑事専門弁護士-』シリーズなどを手掛けた木村ひさし監督が映画化。 中村倫也さんをはじめ、この映画でしか見られない、キャスト陣の個性豊かなキャラクターも見どころだ。

多彩な役で“2019年の顔”となった俳優・中村倫也の素顔に迫る

©2019『屍人荘の殺人』製作委員会 【もっと写真を見る】

出演:神木隆之介、浜辺美波、葉山奨之、矢本悠馬、佐久間由衣、山田杏奈、大関れいか、福本莉子、塚地武雅、ふせえり、池田鉄洋、古川雄輝、柄本時生、中村倫也
監督:木村ひさし 脚本:蒔田光治
原作:今村昌弘「屍人荘の殺人」(創元推理文庫刊)
製作:「屍人荘の殺人」製作委員会
製作プロダクション:東宝映画 ドラゴンフライエンタテインメント
配給:東宝 ©2019「屍人荘の殺人」製作委員会
2019/日本/カラー/ビスタ/5.1chデジタル/103分
公式HP:shijinsou.jp/

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中村倫也(なかむら・ともや)

1986年12月24日、東京生まれ。2005年、映画『七人の弔い』で俳優デビュー。2018年、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』朝井正人役の出演をきっかけに知名度が上がり、今年2019年には、TVドラマ「凪のお暇」で「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」の助演男優賞を受賞。映画では『美人が婚活してみたら』『長いお別れ』『台風家族』『屍人荘の殺人』の4作品に出演し、「エル シネマアワード2019」の今年目覚ましい活躍をした注目の男性に贈られる「エル・メン賞」を受賞。年末の『第70回 NHK紅白歌合戦』では、洋画で初の吹き替えを手掛た『アラジン』の歌声を披露する予定。

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