20代ミュージシャンが語る“譲れない価値観”

NEOかわいいを掲げるオンナバンド・CHAI「私たち4人だから」を武器に世界へ挑む

20代で世界の頂点を目指すバンドがいる。「NEO – ニュー・エキサイト・オンナバンド」、CHAIだ。双子のマナ(ボーカル/キーボード)とカナ(ボーカル/ギター)、ユウキ(ベース/コーラス)、ユナ(ドラム/コーラス)から編成された4人組バンド。「NEOかわいい」や「コンプレックスは、アートなり」をコンセプトに掲げて活動している。型にはまらない楽曲たちはいい意味で“クセが強く”、常識破りで自由なそのあり方で、日本の音楽シーンに新しい風を吹き込んだ。

【動画】CHAI「私たち4人だから」を武器に世界へ挑む

 圧倒的個性を武器に、日本だけでなく海外でもめざましい活躍を見せている。2017年のデビューアルバム『PINK』はアメリカの音楽メディア「ピッチフォーク」の“The Best Rock Albums of 2018”、イギリスの大手新聞「ガーディアン」の“The Best New Music of 2019”に選出。2018年にはアメリカの人気インディーレーベル「BURGER Records」、イギリスの名門インディーレーベル「Heavenly Recordings」からそれぞれデビューを果たした。

「目指すはグラミー賞」

なぜそこまで世界の頂点を目指すのか。

彼女たちを形づくる“価値観”に迫った。

世の中に対するアンチをポジティブに変換する

―― 今、CHAIの音楽の中に込められている「NEOかわいい」や「コンプレックスはアートなり!」というテーマはどんな思いから生まれたんですか?

マナ 私たちは見ての通り、全然完璧じゃない。でも、完璧じゃない私たちだからこそつくれる音楽がある。コンプレックスばかり抱えて、一人ひとりはすごくネガティブ。それでもポジティブになれるのは、私たち4人だから。

ユウキ あと、上京して音楽をやっていこうと決めたとき、伝えることに芯があれば、強い武器になるんじゃないかと思ったの。売れている人のまねをしたり、はやりを取り入れたりすれば売れるかもしれない。でも、そんな万人受けする武器を持って売れたところでうれしくない。“私たち4人だから”を武器にすることが一番大事で。

それは具体的には何だろうって考えた結果、自分たちが生まれ持っているものだと思った。コンプレックスやネガティブさを隠すんじゃなくて音楽に出す。「完璧じゃない私たちの何が悪いんだ!」「そもそも普通って何なんだ!」って、世の中に対するアンチな気持ちをポジティブに変換したのが、私たちの形。

ユウキさん

ユウキ

―― ネガティブな人はずっとネガティブに生きてしまいがちなのに、それをポジティブに変換できるのはすごい。

カナ 一人ひとりは今でもめっちゃネガティブなの。でも、4人だからポジティブに変換できる。

あと、私たちには「音楽」という場所があるから。音楽をつくって、ステージに立って、アンチな気持ちを吐き出している。だから、強くいられるっていうのもあるかな。

―― ステージに立つにも、ネガティブだと「失敗したらどうしよう……」とか思いそう。

ユナ いつもめっちゃ緊張するよ。

ユウキ だからライブの本番直前には「私たちカワイイ! 天才だ! 今日も優勝!」って4人で盛り上げ合う(笑)。

4人そろったことで「人は変われる」と知った

―― そこまでお互いを信頼し合えることがすごい。他人同士だとなかなか難しいと思う……。

ユウキ めっちゃ難しいよね! CHAIしかいないもん、ここまで絆が深い人って。

カナ 私たちが信頼関係を築けてるのは、目標が統一されてるから。「グラミー賞を取るぞ!」って毎日考えて、真剣に音楽と向き合ってる。

それと、私たちの音楽は「普通ってなんだよ」っていうアンチの気持ちで生まれるから、とにかくひたすら愚痴を言いまくる。怒りの感情を共有しまくる。その怒りの感情をポジティブに変えて、曲ができる。

ユウキ その怒りの感覚が似てるのは大きいと思う。それでいて目標が一緒。そこが普通の友達とは違う。

―― 出会ったときから価値観は同じだったんですか?

カナ 根本的な価値観や感覚は最初から似てたけど、細かいところは違った。ただ、「良い!」と思うこと、「ダサい!」と思うことは同じだったよね。例えば、みんなで同じ音楽を聴いて「良い!」って言いながら、同じタイミングで泣く(笑)。感情が表に出るタイミングも同じ。

カナさん

カナ

マナ “最悪なダサさ”と“格好いいダサさ”。この感覚はずっと一緒だね。ほかの人には通じない感覚なんだけど(笑)。それ以外は徐々にそろえていった感じかな? 例えば、ユナは見た目が全然違ったよね。

ユナ そうだね! 今みたいな感じじゃなかった。友達にギャルがいて、服装も髪形も今とは全く違った。CHAIの3人に出会ってから見た目がガラッと変わって、そこから内面も変わっていった。

マナ 内面はユウキが一番変わったよね。

ユウキ めちゃめちゃ変わったね。正反対の性格になった。最初は興味本位でバンドメンバーとして入ったから負い目があって。いつも「分からない、ごめん!」って言って、そのたびに落ち込んでた。それをマナがすごい怒るの(笑)。

マナ 「分からないって言うな! その口癖やめなよ!」って言ってたね(笑)。

(左から)ユウキさん、ユナさん、マナさん、カナさん

(左から)ユウキ、ユナ、マナ、カナ

ユウキ そしたら、逆におしゃべりになったの。今では一番自分の考えを言うようになって、むしろ止まらない。なので、「人は変われます!」と身をもって感じてる。

―― 最初からそういうダメな部分を言い合えていたんですか?

マナ メンバーとしてずっと過ごしていくって考えたとき、本音で話せる子とだけ仲良くなりたいと思ってて。

ユナ それに喧嘩(けんか)じゃないからね。思ってることを伝えようとしてるだけで。

ユウキ みんな目標に向かって本気だったから遠慮してる場合じゃなかったのもあるよね。

“人間らしさ”を忘れずに、世界のてっぺんを目指す

―― そんなCHAIのみんなが今「これだけは譲れない」と思っている確固たる価値観は何ですか?

マナ しっかり3食食べて、睡眠を取る!かな?(笑)

一同 そうだね!

ユウキ 腹が減っては戦はできぬだよね。ちゃんと食べて、音楽つくって、ステージに立つ。毎回優勝するためにステージに立つから、食べないと勝てる戦も勝てない。

カナ ライブ中におなかすくとしんどいから! 手がしびれてくる。砂糖をくれ! コーラ飲ませろ!ってなる(笑)。

ユナ 睡眠も大事。ちゃんと寝ないでドラムたたいたとき、テンポ遅くなったことあるもん。今でもトラウマ(笑)。

―― 人間らしさを忘れないことが大事(笑)。

一同 それそれ! ちゃんと生きることが大切!

マナ 「グラミー賞を取る!」という目標に上り詰めるためにも重要な価値観。人間らしさを忘れたら全力で音楽をつくることも、パフォーマンスを発揮することもできなくなっちゃうから。

マナさん

マナ

―― なんでCHAIはそこまでグラミー賞を目指すんですか?

マナ やるからには世界のてっぺんを取りたい。そもそも音楽って世界共通で境界線がなく誰でも楽しめるはずなのに、日本の音楽には世界との境界線を感じてしまう。というのも、日本の音楽、J-POPが世界に通用していないから。日本人だけが楽しめるものになっている。

ユウキ 音楽に限らず、日本は日本だけで楽しむものばかりつくっている。それがすごくつまらないなって。だから、当然のように音楽をやるならグラミー賞だと。

――「 日本の音楽が世界に通用しない」と考える理由は、なんですか?

ユウキ 日本語に頼りすぎてるからかな。日本語が分かって初めて通用する音楽。音楽で勝負してない。聞く人も言葉に共感できるかどうかで「良い音楽」って判断してる。

ユナ 歌詞に関係なく心動かされる音楽は世界に通用するよね。魂が喜ぶ音楽を聴くと「音楽は言葉じゃないんだ!」って感じる。

ユウキ 初めてBasement Jaxx聞いたとき、音楽とは何かを問われたの。殴られた感覚。予想できない音楽にドキドキしたし、私たちが目指したい音楽は、この自由な表現だなって思った。

だから、私たちの音楽は、曲のメロディーやアレンジを一番大切にしてる。もちろん歌詞が大事じゃないとは思ってないけど、曲が中途半端だと、どんなに良い歌詞を書いたところで、音楽としての良さは出ないと思ってる。

ユナさん

ユナ

カナ J-POPのほとんどは曲の流れが決まっていて予想ができちゃう。でも、そういう曲が日本では評価される。あとは見た目が良いか(笑)。それって音楽で勝負してないじゃんって。

だから私たちはその壁を越えて、日本人だけど世界で通用する音楽で勝負しようと思った。そしたら、目指すところは世界のてっぺんであるグラミー賞一択だよねって。

「日本の音楽は終わってる」と言われた悔しさが原動力に

―― その目標を掲げているだけあって、2019年のツアーでは全米8都市、全英6都市を巡って世界中のフェスに出演していましたよね。海外で活動して、考え方や価値観に変化はありましたか?

マナ とにかく日本の音楽に危機感を覚えた。ピッチフォークフェスで受けたインタビューで「日本人は曲をつくらない人が多い」って言われて……すごくショックだった。海外の人って日本の音楽はアイドルしか知らないの。

カナ 「日本の音楽は終わってる」って言われたもんね。

ユウキ 海外からそう思われていることに日本人が気づいていないのがマズイと思った。期待されていないことが怖かった。同じアジアでもK-POPはアメリカのニュースで流れるのに、J-POPは一切流れない。

―― そんな風に思われてる中でライブをするってすごく怖いですよね……。

カナ そうだね、私たちのことを誰も知らないフェスとか怖かった。でも、誰も去っていかなかったんだよね。

ユウキ 「こんな日本人いるんだ!」とか「そんな目標を掲げて戦ってるんだ!」と反応してくれる人がいて。それを肌で感じたら自分たちの目指してることって間違ってなかったんだと思った。

マナ 悔しいこともいっぱいあるけど、誰にも負けたくない! 日本人だけどやってやる!って思った。

―― ちなみに、どんなときに悔しいと思ったんですか?

マナ 日本でも海外でもフェスに出るとCHAIより人気な人の方が多いから、いつも一番になれてないなって。私たちの方が曲も、ライブの構成も格好いいのに!って思ってるけど、お客さんの反応で負けていると感じることがたくさんある。

それがめちゃめちゃ悔しい。悔しくて泣くこともある。

ユナ でも悔しいからいいんだよね。悔しさをバネに、もっといい曲をつくろう、いいステージにしようって思えるから。次につなげるためにたくさん話し合う。いつまでもくよくよしない。おなか空いちゃうしね(笑)。

一同 そうそう!(笑)

(左から)マナさん、カナさん

(左から)マナ、カナ

“圧倒的個性”で世界に挑む

―― これからグラミー賞を目指していく上で、どんな軸を持って進んでいこうと考えていますか?

マナ 海外の人と同じ土俵で戦っていくには、日本人だからこその良さも大切だと思う。だから、日本で受けた感情を音楽で表現していきたい。私たちが日本で感じるコンプレックスを音楽にしていきたいと思ってる。

ユウキ 海外で戦うから海外に合わせることはしないように。あくまでも、私たちは“日本のCHAI”として、圧倒的個性で勝負していきたいね。

―― 日本が抱えるコンプレックスをぶちまけるわけですね。

一同 そうだね、全部ぶちまけたい!!

―― 音楽に限らず今後やっていきたいことはありますか?

一同 いっぱいある!

ユウキ 動物が大好きだから動物が幸せに暮らせるようなことは何かしらしたい。殺処分をゼロにしたいし、ペットショップも動物がかわいそう。お金と土地があればすぐになにかしてあげたいくらい。

ユナ あとはCHAIランドつくりたい! コンプレックスをコンセプトにした、ペットも一緒に来られる遊園地。

マナ 鼻からジェットコースター出てきたりとか(笑)。

カナ 海外はペットも一緒に入れるお店がたくさんあるのに、日本は全然ないからね。ペットも家族なのになんでだろうと思っていて。だから、動物も関係なく楽しめる場所をつくりたいの。

マナ 音楽でいうとCHAIが世界中で仲良くなったアーティストを呼んで『CHAIフェス』をやりたい。CHAIにしかできないフェスをしたいな。

―― やりたいことが一人ひとりバラバラになることはないんですか?

ユナ CHAIの4人でやりたいことを考えちゃう。

一同 CHAIに支えられてるからね(笑)。

(左から)ユウキさん、ユナさん、マナさん、カナさん

(左から)ユウキ、ユナ、マナ、カナ

(文・阿部裕華 編集/写真・林紗記 動画撮影・田中遼平)

プロフィール

双子のマナ(ボーカル/キーボード)、カナ(ボーカル/ギター)と、ユウキ(ベース/コーラス)、ユナ(ドラム/コーラス)の4人による“NEO – ニュー・エキサイト・オンナバンド”。“NEOかわいい”や“コンプレックスは、アートなり”といったコンセプトを掲げて2015年に活動を始動し、16年12月には初の全国流通盤「ほったらかシリーズ」を発表した。その後活動拠点を東京に移し、17年には「SXSW」に初出演。同年4月には2枚目のCD「ほめごろシリーズ」、10月にはバンドにとって初のフルアルバム「PINK」をリリースした。18年5月には5曲入りCD「わがまマニア」、11月にはTシャツ付きシングル「GREAT JOB / ウィンタイム」を発売し、アメリカやイギリスなどの海外ツアーも実施。19年2月には2枚目のフルアルバム「PUNK」をリリースし、ワールドツアーを成功させた。

リリース情報

NEOかわいいを掲げるオンナバンド・CHAI「私たち4人だから」を武器に世界へ挑む

2nd Album「PUNK」 大好評発売中

発売元   OTEMOYAN record

Download & Streaming ▶︎ https://lnk.to/CHAI_PUNK

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PROFILE

  • 宮崎敬太

    1977年神奈川県生まれ。音楽ライター。ウェブサイト「音楽ナタリー」「BARKS」「MySpace Japan」で編集と執筆を担当。2013年に巻紗葉名義でインタビュー集『街のものがたり 新世代ラッパーたちの証言 (ele-king books) 』を発表した。2015年12月よりフリーランスに。柴犬を愛している。

  • 阿部裕華

    1992年生まれ、神奈川県出身。 WEBメディアのライター/編集/ディレクター/マーケッターを約2年間経験。2018年12月からフリーランスとして活動開始。ビジネスからエンタメまで幅広いジャンルでインタビュー中心に記事を執筆中。アニメ/映画/音楽/コンテンツビジネス/クリエイターにお熱。

「死の本質」に触れた角舘健悟(Yogee New Waves) 世界の美しさも醜さも真正面からとらえた作品づくり

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