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あたたかく、軽く、ぬれに強い patagoniaの万能“モバイル”防寒具

この数年、アウトドアウェアを街中で着こなす男性が増えている。カジュアルでちょっとオシャレで着心地もいい。本コラムでは、ファッション性と機能性を兼ね備えたアウトドアブランドが展開する「これさえ持っていれば間違いない」というマストバイなウェア、グッズを紹介していく。

化繊中綿ジャケットは、天然素材である羽毛を詰め込んだダウンジャケットに比べると保温力はもちろん、収納性という点でも及ばないとされてきた。しかし技術の進歩により“弱点”は徐々に解消されつつあり、「ダウンに近い」とのふれこみで、毎年多くの化繊中綿系アイテムが新たにリリースされている。その中でも注目を集めているのが、patagonia(パタゴニア)が2017年冬に発売を開始した「メンズ・マイクロ・パフ・フーディ」だ。

立体裁断が採用されているため、非常に動きやすい。縫製は生産国の労働者に適正な賃金が支払われるフェアトレード・サーティファイド

立体裁断が採用されているため、非常に動きやすい。縫製は生産国の労働者に適正な賃金が支払われるフェアトレード・サーティファイド

ダウンなみに暖気を含んでくれる化繊中綿

パタゴニアでカテゴリマーケティングを担当する八木康裕さんは、熱心なトレイルランナーでもある

パタゴニアでカテゴリマーケティングを担当する八木康裕さんは、熱心なトレイルランナーでもある

パタゴニアは長年、化繊中綿を使ったアイテムの開発に注力してきた。その結果、2000年代には「パフジャケット」「ファイヤーボール・ジャケット」など名作の呼び声高いアウターを数多く生み出している。そんな中、2007年に開発がスタートし、10年の時を経て発売されたのが「メンズ・マイクロ・パフ・フーディ」だ。その特徴はぬれに強く、袖に腕を通した瞬間からあたたかい――つまり化繊中綿とダウンの長所を見事に両立しているのだ。

これまでの化繊中綿ジャケットには、あたたかさがウェア全体に行き渡っていくまでに時間がかかるという弱点があった。シート状の化学繊維を使用しているため、空気をためこむスペースが少なく、また空気の流れが生まれにくいからだ。しかし本アイテムは、まるでダウンジャケットのように着た瞬間からあたたかい。パタゴニアでカテゴリマーケティングを担当する八木康裕さんは、この着心地を生み出している化学繊維「プルマフィル」について次のように話す。

「これまで化繊中綿ジャケットに使用されてきたシート状の中綿と異なり、羽毛状の構造なので空気をためるスペースが多く、非常にあたたまりやすいのが特徴です。もともと非常に軽い素材なのですが、それほどたくさんの量を使わなくとも保温性を確保できることもあって、ウェアを軽量に仕上げることが出来ます。もちろん水に強いという化学繊維の特性は失われていません」(八木さん)

フワフワとした羽毛のような質感を持ったプルマフィル(画像はパタゴニア公式サイトより)

フワフワとした羽毛のような質感を持ったプルマフィル(画像はパタゴニア公式サイトより)

洗濯機で洗うことが出来る。「脱水をかけて軽く形を整えると、ほとんど乾いているような状態になります。数時間で完全に乾くはずです」と八木さん

洗濯機で洗うことが出来る。「脱水をかけて軽く形を整えると、ほとんど乾いているような状態になります。数時間で完全に乾くはずです」と八木さん

10年に及ぶ試行錯誤の末、革新的な化繊中綿を実用化

パタゴニアとプルマフィルの“出会い”は2007年のこと。しかしプルマフィルを初採用した「マイクロ・パフ・フーディ」が発売されたのは、その10年後にあたる2017年。開発に長い時間を要したのは防寒ウェア用の中綿として効率的に使う方法が見つからなかったためだ。

たとえばプルマフィルを、ダウンのように単純に詰め込むだけでは、洗濯や激しい動きによってフワフワとした状態が失われ、保温性が損なわれてしまうという問題があったという。この“短所”をパタゴニアは、どのように解決していったのだろうか?

「一般的なダウンジャケットのように、中綿を入れるスペースをステッチで完全に区切ってしまうと、熱をためる部分が小さくなってしまいます。そこで我々は、縦長に加工したプルマフィルを横向きのステッチを使って押さえこむことで、ずれや偏りを防止することにしました。ロフト(空気を含む中綿の膨らみ)を完全に固定しているわけではないので、熱をためる部分が大きく、またジャケット内部で空気の流れが生まれやすいため、濡れてしまった際も乾きやすいのが特徴です。この縫製技術はパタゴニア独自のもので特許も申請中です」(八木さん)

ライトダウンのように中綿を入れるスペースが細かく区切

ライトダウンのように中綿を入れるスペースが細かく区切られているように見えるが、胴の正面は上から胸〜上腕、腹、裾と左右それぞれ三つのパーツに分かれている

後ろ側は肩〜上腕と背中というシンプルな構成

後ろ側は肩〜上腕と背中というシンプルな構成

冬のフーディニ・ジャケット〜コンパクトであること

右のポケットを裏返して本体を詰め込んでいくと1分もかからずに収納できる

左のポケットを裏返して本体を詰め込んでいくと1分もかからずに収納できる

生地には耐水性と防風性を備え、非常に軽量な「パーテックス・クアンタム・リップストップ・ナイロン」を採用。軽量な生地と中綿の組み合わせで、ジャケットの重さはメンズのMサイズで約264グラム。羽織ってみればわかるが、ほぼ重さを感じない。さらにシート状中綿に比べて繊維が痛みにくいため、気兼ねなくコンパクトに収納することができる。とにかく持ち運びが容易であるため「いざという時のバックアップ用防寒具としても重宝する」と八木さんは言う。

春から夏にかけては急な冷え込みに備えて、フーディニ・ジャケットを持ち歩いている方が多いと思いますが、秋〜冬はマイクロ・パフ・フーディを持ち歩いてほしいです。僕も先日20日間ぐらいかけてスペインの長いトレイルを走ったのですが、防寒用アイテムとしてバックパックに入れておきました。持っているだけで心強いアイテムですよ」(八木さん)

左ポケットに本体を詰め込めば、1分程で収納可能。補強済みのカラビナ用ループ付き

左ポケットに本体を詰め込めば、1分程で収納可能。補強済みのカラビナ用ループ付き

内側にドロップイン型ポケットが2つ。体に近い場所にグローブを入れて体温で乾かすためのものだが、もちろん収納に使ってもOK

内側にドロップイン型ポケットが二つ。体に近い場所にグローブを入れて体温で乾かすためのものだが、もちろん収納に使ってもOK

あたたかい空気を閉じ込めてくれる伸縮性を備えた袖口と裾

あたたかい空気を閉じ込めてくれる伸縮性を備えた袖口と裾

「冬のフーディニ・ジャケット」とも言えるパーフェクトなモバイル防寒具

フロントジッパーには、あごへの当たりが快適なジッパーガレージ付き

フロントジッパーには、あごへの当たりが快適なジッパーガレージ付き

軽量で、あたたかく、大きめのバッフルは立体裁断のパネルを兼ねているため動きやすい。また気軽に洗濯機で洗うことも出来る。もちろん破れたとしても、ダウンジャケットの様に中綿が吹き出すことが無いため、ラフに扱える。寒くなったら羽織り、暑くなったら小さく畳んでバッグに。マイクロパフフーディは、まさに「冬のフーディニ・ジャケット」と言える汎用(はんよう)“モバイル”防寒具だ。パタゴニアの「この一着さえあれば、他になにもいらない」というキャッチコピーは決して大げさではない。この冬、街はもちろん、キャンプ、登山と様々なシーンで活躍してくれるだろう。

ジッパー式ハンドウォーマーポケットを左右に

ジッパー式ハンドウォーマーポケットを左右に

取材・文/吉田大
撮影/今井裕治

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PROFILE

吉田大

ライター・編集者。大学卒業後、児童書出版社勤務を経て、フリーランスに。ファッション、アート、音楽、ストリートカルチャーから、政治経済、社会問題、テクノロジー、グルメに至るまで、多岐にわたるジャンルにおいて、長年にわたり執筆活動を続けている。趣味は自転車と立ち食いそば店めぐり。お酒や煙草を嗜まないストレート・エッジな生活を送っている。

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